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「サンセット大通り」”Sunset Blvd.”(1950)

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映画レビュー
Sunset Blvd. (1950) aka Sunset Boulevard Directed by Billy Wilder Shown center: Gloria Swanson
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「サンセット大通り」(1950)

  • 監督:ビリー・ワイルダー
  • 脚本:ビリー・ワイルダー、チャールズ・ブラケット、D・M・マーシュマン・Jr
  • 製作:チャールズ・ブラケット
  • 音楽:フランツ・ワックスマン
  • 撮影:ジョン・サイツ
  • 編集:アーサー・P・シュミット
  • 出演:ウィリアム・ホールデン、グロリア・スワンソン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム 他

「失われた週末」(1945)も紹介しました、ビリー・ワイルダー監督作。評価は公開時から高く、今でも偉大な映画のリストには名前がよく上がっていますね。

アカデミーでは、美術、作曲、脚本の3部門を受賞。この年はこちらと同じくある意味ハリウッドの裏側劇であった「イヴの総て」と激しくやりあった感じですね。私は「イヴの総て」も大好きで、どちらも甲乙つけがたいものです。

あちらも恐ろしい女が出ていますが、怪物感ではこっちの勝ちでしょう。

サンセット大通りにある邸宅で、一人の男の死体がプールに浮かんでいた。

その男はB級映画の脚本を2本ほど書いたことのあるような、売れない脚本家だった。

どうしてこうなったのか。

話は過去へとさかのぼる。

サイレント映画の大スターが、その過去と栄光にとらわれている。リアルに映し出すのは、このスワンソンが本当にサイレント期のスターであること、セシル・B・デミルがその人として出ていること、バスター・キートンなども出演していること。

こういった本当の歴史をもった本物の出演はこの映画の真実味を増しています。

執事のマックスであるエリッヒは、かつて監督としてスワンソンと共に映画を撮っており、残念ながらボツったものが、劇中でノーマが見ている映画だそうです。

過去の栄光への妄信は、ある種ホラー映画的演出をもってなんともうまく出てきますね。

ワイルダー監督にしては珍しく、パンクという偶然の要素によって邸宅へ来たジョーですが、あの屋敷の描写の素晴らしいこと。

音楽、陰気な室内。それに初めての出会いのキャビアとシャンパン以降、たばこは出ても食事がない。生気を感じないんですよね。

これが良い。完全にお化け屋敷です。

ジョーは半ば計画的とも思える形でこの屋敷にとらわれてしまいます。

軽はずみだった自己紹介「脚本家です。」によって運命が変わり、金銭的な苦難もあり、この裕福な女に弱いところを突かれる。

勝手に荷物を運ばれて離れに住むことになるうえ、その次は雨漏りが原因でノーマと同じ屋敷に住むことに。個人的な世界を失っていく過程も見事で、また時々ジョーがその死んだ世界と、生きた世界(若さのあるハリウッド)を行き来するから良いんです。

あの親友、そしてその彼女であるベティ。パーティのシーンではその服装からしてジョーは現在のハリウッドから浮いた存在でした。

その中で、親友はベティの背を撫でながら、「ここに名前を書いてね。」と言っています。まるでのちにその彼女をジョーのものにしてもいいと暗示するようです。

次に親友とベティに会う時のジョーは、より個人を失っていました。脚本家であるからこそノーマとの関係が始まったのに、その店のシーンでは「もう書くのはやめたんだ。」と言い放つ。

ジョーは完全に自分をノーマの所有下に置かれてしまったのです。2人にハリウッドでの仕事を誘われると、まるで逃がさん!と言わんばかりにマックスが出てきてジョーを車へ連れ戻してしまいますし。

ベティとジョーもそうですが、ジョーとノーマもまた同情や罪悪感という点でつながっています。

ベティは眼前でジョーの脚本を貶したことでどことなく彼への申し訳なさを感じ、ジョーは彼の持ち込んだ剃刀のせいで、ノーマが自殺未遂をしてしまったことに罪悪感を感じる。後者は若干陰謀感があるのも見事。

そして彼らはずるずると関係を深めていく。

過去の栄光にすがり、その虚構を支える。

囚われて幽霊屋敷に住んでいるこの女は、自身の支えとなる男が、自分の本当に戻りたい若さの世界へ戻ることを許さない。

最後の彼女の憑りつかれ狂った迫真の演技は、恐ろしく印象深いですね。ラストだけ、主人公の視点からはずれて展開しているのも、彼女が結局は自分のことしか考えていなかったようで巧いところ。

ワイルダー監督の練りに練って論理づけられた脚本が光っている今作。

その行動や道具に、次の展開への必然が盛り込まれていて見事です。ベティの脚本酷評、たばこを捨てに、買いに行くジョー、鼻の成形から流れていく美しいキスシーン。

隙のない運びに唸る、それでいてハリウッドという栄光の影の部分を存分に映し出してくれる作品です。

そんなところでおしまいに。それでは、また。

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