「アップグレード」(2018)

  • 監督:リー・ワネル
  • 脚本:リー・ワネル
  • 音楽:ジェド・パルマ―
  • 撮影:ステファン・ダスチオ
  • 編集:アンディ・カニ―
  • 出演:ローガン・マーシャル・グリーン、ベティ・ガブリエル、ハリソン・ギルバートソン、ベネディクト・ハーディ 他

メルボルン出身、「ソウ」シリーズなどで知られる俳優リー・ワネルの長編監督第2作目となるSFバイオレンススリラー。

主演を務めるのは、「スパイダーマン:ホームカミング」などのローガン・マーシャル・グリーン。共演はベティ・ガブリエル、ハリソン・ギルバートソンなど。

北米では2018年の6月公開と、結構前の作品です。当時から海外の映画ファンの好評が聞こえてきていて、年間ベストの中にもチラホラ。

日本公開が全然聞こえてこないので、待ちきれず海外版ブルーレイを輸入して鑑賞しました。

10月11日日本公開が決定しました

近未来にて、すべてがデジタル化する社会の中アナログにこだわっていた車の修理工グレイ。

彼はある日、仕事の雇い主である若手天才起業家エロンの元を、妻のアシャとともに訪れる。

 

そこでエロンは、STEM(ステム)と呼ばれるナノテクノロジーソフトウェアを披露し、「まだテスト段階だが、これがあれば不可能はない」というのだったが、グレイは人間にこそできるものもあるはずだとまともに受け取っていなかった。

その帰り道、完全自動運転の車が暴走を二人は事故を起こす。

すると、男たちが二人を車から引きずりだし、アシャを射殺、グレイも撃たれ、首から下が動かなくなってしまった。

失意の中、グレイは犯人を捕まえるべく、エロンにSTEMのテストに協力すると申し出る。

かなり小規模な感じの映画ではありますが、数年前にアレックス・ガーランド監督の「エクス・マキナ」に出会った時のような嬉しさのあるSF作品でした。

おそらく設定やプロットはどこかで見たことのあるようなものでしょうけれども、スタイルが特徴かなと思います。

一歩間違えればかなり陳腐なルックになりそうなところですが、印象的なショット、カラーリング、美術やアクションそしてカメラワークが全体のテイストを引き締めているように感じます。

アクションでのカメラの独特な動きは印象強いかと思います。主人公の縦軸だけに固定されて世界が動くあの感覚は奇妙ですがなぜかクセになる。コリオグラフィーも独特ですしね。

それに、ダレないストーリーのテンポや主演のローガン・マーシャル・グリーンの良さもあると思いますね。

この作品、序盤に関しては完全に「ヴェノム」なんですよ。本家以上にヴェノム。

体に宿った独立意思を持つものと、それがいないと動けない男。お互いに共存関係にあるこのグレイとSTEMのやり取りが面白い。

そして、ローガン・マーシャル・グリーンが本当にいい動きです。

自分の意志と関係なく動く体に対して、首から上だけでめっちゃリアクションしていますし、あととにかく具合悪そうw

STEMの能力の高さに、それを利用することで個人的な復讐を成し遂げようとするのですが、最初に見つけた男の家での戦闘が今作を決定づけますね。

激しいバイオレンスがあるということ。あの止めは私もびっくりしましたよ。

段々とですが、その身に宿った力に魅了され復讐を進めながらも、同時にSTEMの容赦のなさ、ためらいや心のなさに恐怖を覚えていくように設計されています。

そして迎えていく終末。

プロットは結構使われているものというのは先ほども言いましたけれど、それでも今作は綺麗にへんな気どりもなくまとまっていると感じますね。

神話的な、機械が人間になろうという、生きていないものが生を感じたいというための長き道のり。

近未来において、何か言うだけでなんでもできてしまう世界。それは今の延長としてしっかり見えるわけですが、そこにこそ危惧すべき点がありますね。

どんどんと進歩しアップグレードしていくソフトウェアに対して、ついに人間の体というハードウェアが追い付かない。そして非常に優秀なソフトは、ハードすらも自由にコントロールしていくのです。

私たちはマシンを使っていると思っていますが、マシンに使われている。グレイがもはやグレイをコントールする主ではなくなったように。

私たちも常にスマホをいじり音声認識で命令し過ごしていますが、実は、そういった機械に生かされているといってもいいでしょう。

オープニングで制作会社が文字で出なくて読み上げられる演出が後から効いてきます。

これからの技術革新は、何のアップグレードなのでしょうかね。

機械のアップグレードが、人間のダウングレードになることも十分に考えられ、その時、グレイが意地悪に言っていた「人間だからできることを大事にしたいんだ」という言葉を思い返しても遅いのでしょう。

SNSにVR、痛みも苦しみ避けていった先に、自分専用仮想現実があり、そこから戻りたくなくなる。

バッドエンドともいやしかし、現代の人間がその技術で目指すところでいえばハッピーエンドともとれるグレイの行きつく先。皮肉なものです。

プロットはよくあるタイプ。

でもリー・ワネル監督のビジュアルスタイルや脚本、ローガン・マーシャル・グリーンの演技により一味違う楽しめるSFになっています。

創意工夫でフレッシュさを出す、それってとても素敵。

今の時点では日本公開は決まっていませんが、これは刺さる人には刺さるタイプの作品だと思うので一般公開を願います。(10/11に日本公開)

感想はこのくらいです。それではまた~

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