「シンクロナイズドモンスター」(2016)
- 監督:ナチョ・ビガロンド
- 脚本:ナチョ・ビガロンド
- 製作:ニコラス・シャルティエ、ゼヴ・フォアマン、ドミニク・ラスタム、ナイカリ・イピニャ、ラッセル・レヴィン
- 製作総指揮:アン・ハサウェイ、ショーン・ウィリアムソン、ジョナサン・デクター、ナチョ・ビガロンド、ギャレット・バッシュ、ジャスティン・バーシュ、イ・ジェウ、チェ・ピョンホ、クリス・リットン
- 音楽: ベアー・マクレアリー
- 撮影:エリック・クレス
- 編集:ルーク・ドゥーラン、ベン・ボードゥイン
- 出演:アン・ハサウェイ、ジェイソン・サダイキス、ダン・スティーヴンス、オースティン・ストウェル 他
失業中のアルコール中毒の女性と、韓国に現れた謎の巨大怪獣が、不思議なシンクロをしているファンタジックな関係と、周囲の人間を描くコメディドラマ。
監督はナチョ・ビガロンド。
主演は「インターステラー」などのアン・ハサウェイ。
また「ブックスマート」などのジェイソン・サダイキス、最近だと「SWALLOW/スワロウ」のオースティン・ストウェル、そして「美女と野獣」などのダン・スティーヴンスが出演しています。
もともと怪獣映画とコメディをかけわせた試みの作品として聞いていて、劇場予告を観たあたりまでは観に行こうかなと考えていましたが、結局スルーしましたね。
今回はAmazonプライムビデオでの配信を始めて鑑賞してみました。
日本版予告ではダメウーマン×怪獣ということでポップな感じのポスターや映像が多かった印象ですが、実際のところ結構扱う題材はシリアスというか、重めなものになっていました。
マンハッタンにクラスグロリアは、1年前に失業、以来仕事探しもせずに酒を飲んでパーティに明け暮れていた。
しかしある日、その自堕落な生活と態度に愛想をつかした彼氏に、アパートを追い出されてしまう。
困ったグロリアは地元に帰ることにし、そこで小学校時代の同級生オスカーと再会した。
オスカーは父から譲り受けたバーを経営しており、何もかもすることがないというグロリアにウェイトレスとして働くことを持ちかける。
グロリアは仕事のリハビリの気持ちで引き受けるが、逆にオスカーと彼の友人たちと朝まで乃美明かすようになってしまう。
ある日、朝まで飲んだグロリアは公園で目を覚ます。
そして帰宅するとニュースで”韓国に怪獣が現れ街を破壊した”と報道されていた。
彼女を驚かせたのは怪獣の存在だけではない。
何よりも、その怪獣の動きが公園での自分と完全にシンクロしていたことだった。
ナチョ・ビガロンド監督は、本来であればシリアスなドラマとして描かれ扱われる題材である、アルコール中毒、依存そして他者支配を、怪獣という奇妙な仕組みで取り上げています。
ただ、破壊者としての圧倒的な存在感とはた迷惑さはまさに怪獣というべきもので、理にかなった映し出しに思えました。
怪獣を置いておくとしても、グロリアの描かれ方と話の展開は、酔っぱらいの余波をもとに進みます。
彼女のバックグラウンドはあまり丁寧には説明されずに作品はスタートしていきます。
しかし彼氏ティムの怒り具合で、彼女の荒れ具合と迷惑さは伝わってきますし、言い訳しか口にしない点もまたダメ人間具合を助長します。
そしてオスカーの元で働く際に、非常に巧みに展開。
ウェイトレスとして仕事を始めるという展開と同時に、泥酔した彼女がオスカーに本当に起きたことや地元に戻った理由を漏らしているわけです。
記憶飛ぶほど飲むのはだからダメなのに。
そして絶妙に後の展開である、オスカーの支配も入れ込まれます。
覚えていない。仕事を本当にOKしたのか。そして後の合鍵の件も。
ただこうした事態はアル中の余波。
それはそのまま、関係のない人を巻き込み甚大な被害を及ぼす怪獣とシンクロするわけです。
酔うと怪物になる人。あれですね。
当人は覚えてないですが、ゴジラ襲来よろしく周りの人間は災害に巻き込まれる。
それが怪獣映画とリンクするのはおもしろい着想です。
馬鹿馬鹿しいですが、自分の不始末や、依存が知らぬところで多大な被害を出していることは納得の行く仕組みに思えます。
そもそも遡ると、グロリアが失業した一番の理由も、その無責任な行動にありました。
ネット記事で冗談混じりに書いた記事が炎上したとのこと。
反省もなく笑って過ごしたグロリアですが、事態をおさめるために奔走した関係者のことを思うと気の毒です。
ティムのいうようにまさにコントロール不能、どうにもできない巨大怪獣なわけですね。
その投影は終盤までは奇跡的にもおもえるバランスで成立し続けていましたが、個人的には最後で分散してしまったと思います。
実際に怪獣を使ってのクライマックスには理屈も感じられないですし、過去の回想からそもそもの始まりが明らかになってもそのSFは意味を成さないと思います。
最終的にはある意味暴力的解決になってしまっているのと、グロリア自身における贖罪も薄く感じました。
未処理事項が多かったという感じですね。
グロリアのティムへ対するこれまでの迷惑さはどのように許されるに至るか。
怪獣が消えるとすればここではないでしょうか。
そういう意味ではダン・スティーヴンスらにももっと与えられる描写があったと思うのですが、すごく機能的なところに落ち着いています。
また個人的に一番気になる点は怪獣出現場所が韓国であることです。
これは遠い国で自分と関わりのない場所で大災害を起こすという距離なのかも知れませんが、西洋の歴史や現在を持ってももっとちゃんと描いてほしかったです。
アメリカはじめとして西洋国家は他国に上陸しては破壊や迷惑な足跡を残す怪獣とも言えますから。
メタファーが込められているとは思いますが、放置されてしまいました。
総じてアン・ハサウェイというマーケティング要素もありリーチは広がっていると思う作品。着想がおもしろく、終盤まできれいにバランスをとりながら進む作品でした。
今回の感想は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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