「クボ 二本の弦の秘密」(2016)

  • 監督:トラビス・ナイト
  • 脚本:マーク・ハイムズ、クリス・バトラー
  • 製作:トラビス・ナイト、アリアンヌ・サトナー
  • 製作総指揮:
  • 音楽:ダリオ・マリアネッリ
  • 撮影:フランク・パッシンガム
  • 編集:クリストファー・マリー
  • プロダクションデザイン:ダニエル・R・ケイシー、ネルソン・ローリー
  • 出演:アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラ、レイフ・ファインズ、ジョージ・タケイ 他

アニメーションスタジオLAIKAによるストップモーションアニメーション作品。こちらは非常に評価が高く、2017のアカデミー賞では最優秀アニメーション作品にノミネート。

また、英国アカデミー賞のBAFTAでは最優秀アニメ賞を獲得。

昨年の夏にアメリカで大々的に宣伝をしているのは観ていたのですが、公開前に帰国したので観ること叶わず。しかしゴールデンウィークに北米版ブルーレイで観ました。

出演しているのは、TVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズで活躍しているアート・パーキンス。またシャーリーズ・セロンにマシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラなども出演と、豪華な俳優陣になっています。

少年クボは母と二人だけで、町から離れた断崖の洞穴に暮らしている。まだ赤ん坊だった彼を連れ、母は父(クボの祖父)である月の王から逃げ、ここに隠れ棲んだのだ。月の王はクボの父を殺し、クボから片眼を奪った。そして今なお、月夜になるとクボを探しているのだ。

クボは母から受け継いだ魔法の三味線を使い、日のあるうちは町で引き語りをしている人気者だ。

しかしある日、つい日が暮れるまで町にいたクボの前に、母の姉妹が現れ、月の王のもとへと連れ去ろうとする。

素晴らしいアニメーション体験として、昨今あるどのアニメよりも奇抜な体験ができると思います。今作はいわゆるストップモーションで撮影されたアニメーションで、「ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」と同じくクレイアニメのような暖かさと実在の質感を持っていますが、同時に3Dプリンターを使い非常に細やかな表情などを作り上げた、CGアニメ的変化も楽しめます。映像的な素晴らしさを観るという点でもレベルの高さは驚異的です。

色彩、造形やそして実物撮影としてはかなり大規模なセット美術など、目の前に繰り出される人物は少なくとも、その作り込みは素晴らしいですね。

おそらく観る人の印象に強烈に残るのは、やはり折り紙の楽しさでしょう。変幻自在に、これまた素晴らしいスコアとの一体感をもった三味線の音に合わせ繰り出される折り紙芸は必見。

実際のところ、そういったものを映し出す、いわば画としてのかっこよさも多くあります。ディテールの細やかなキャラクターの配置です。

美しい映像のアニメーションでありつつ、かなりアクションとしてもよく動く本作は、決め画の部分でも評価したいですね。

OPすぐの海を叩きわるショットに、巨大ながしゃどくろなどモンスターというよりは妖怪という楽しさのあるものとの戦い。特に沈み行く船の上で、月明かりに照らされながら戦うおサルと姉妹のバトルはそれこそ古典の挿し絵のようです。

古典と言えば、この作品が持っている日本の描写感覚もかな気に入りました。

高貴な位の女性が恋に落ちたことで、その社会から追放される。何か特別な力をもった子供が、お供を従えて宝物探しの旅に出る。妖魔を倒し、神の世界と人間の世界の選択を迫られる。

ここには国語の古典や昔話、おとぎ話における日本の英雄伝などが色濃く受け継がれ融合しています。かなり研究をし、日本おける神話を再現していると思いますね。

そして根底にある部分もしっかり目を向けていますが、ディテールにもこだわりが見えます。食事のシーンは特におもしろかったですね。

奇妙なお供を従えるクボの冒険は、そもそもの出自からして残酷な割にはユーモアがたっぷりで、シャーリーズ・セロンお猿とマシュー・マコノヒー虫の夫婦漫才もあってすごく楽しいです。

今作は孤児になる少年の物語。父を失い、そして母も。非常に残酷な設定を持ち、また怖いシーンは結構怖いのです。お子さんはちょっと注意。

そして主題は有限と無限の対立になります。

祖父月の王が提案するのは、永遠。そこではクボにとって悲劇だった喪失というものがありません。今回の旅でクボは一度失ったものをもう一度失うという悲惨な経験をするのですから、永遠に惹かれてもおかしくないのです。

しかしクボは愛のない無限ではなく、むしろ愛をもって永遠を得る有限までたどり着きます。

ここはまんま古典の竹取物語のようですね。

どんなに強力な武具よりももっと力強いものを得るクボ。

紡がれてきた物語を力にしますね。

人はいつか逝く。しかしその物資的な肉体が消え去っても、その人と過ごした人やその人を愛した人がいる限り生き続ける。そして、その想い出がまた別の人に語られたとき、その語られた人の中にまた生きていく。

そうして得る永遠には、力強い愛があるのです。クボはまさに亡き人との繋がりをもって三味線を鳴らす。

人の一生は物語。

語られることでそれは変われるというのも提示され、またこの映画自体が、クボの語りによるものであることも、最後にハッとする仕掛けでした。

「瞬きするな。」

そこから観客に語られたクボの話には、クボだけでなく、お母さんに、始まったときには既に死んでいるお父さんだっています。

母がクボに聞かせたハンゾウの勇姿、おサルが語った二人の愛、それをまたクボが観客に聞かせることで、彼らは永遠に。

そしてクボのこの冒険も、今作を観た多くの人によって受け継がれ語られるはず。

トラビス・ナイト監督の生み出した和風アニメ。映像のレベルの高さに美しい世界も素晴らしいながら、そこにある日本古典や神話の根が強く感じられる作品です。

私としては桃太郎やらと同じく、日本昔話の一つとして語られて欲しいくらいの作品。とにかくこの美しく暖かなアニメーションを大きなスクリーンで観たいので、是非劇場公開を望みます。

(追記:11月に劇場公開が決定しました!やったね。)

今回はこんなところでおしまいです。それではまた~

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