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「ブロンソン」”Bronson”(2008)

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映画レビュー
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「ブロンソン」(2008)

  • 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
  • 脚本:ブロック・ノーマン・ブロック、ニコラス・ウィンディング・レフン
  • 製作:ルパート・プレストン、ダニエル・ハンスフォード
  • 製作総指揮:スザンヌ・アリザート、サイモン・フォーセット、ニック・ラヴ、ポール・マーティン、ロブ・モーガン、アラン・ニブロ、ケイト・オグボーン、ジェームズ・リチャードソン、ソー・シーグルヨンソン
  • 撮影:ラリー・スミス
  • 編集:マシュー・ニューマン
  • 出演:トム・ハーディ、ポール・ダニエルズ 他

「ドライヴ」のニコラス・ウィンディング・レフン監督が、「ダークナイト ライジング」などのトム・ハーディと組んで送る伝記映画。

イギリスに実在の囚人マイケル・ピーターソン/チャールズ・ブロンソンを描く作品になっています。

こちらは日本公開はされなかったのですが、後にDVDがリリースされました。私は北米版Blu-rayで鑑賞しましたが。

レフン監督の独特なスタイルもあってか、賛否はわかれるところのようですね。みなさんはどうでしょう?

自分の中ではカルト化しているような作品ですが。

イギリスで最も暴力的な服役囚。

マイケル・ピーターソンは郵便局を襲い7年の刑に服すが、刑務所内でも脈絡のない暴力をまき散らし続ける。その結果、刑務所を転々と回されて26年もの月日を過ごすことに。

そして生まれたのは彼の分身としての名、チャールズ・ブロンソン。

ハーディ演じるピーターソンが自身の人生について語るスタイルで、舞台での語りと人生が入り混じった流れです。

ナルシシズムと自分の神格化が時に滑稽に映される本作では、この舞台含めてピーターソンの妄想的演出も多々あります。

独房から出たときの拍手喝采など、彼のセレブリティ願望の表れですね。

自己完結した世界にこれまた現実とは違う意味での自分を持っていて、それを通して世界とコミュニケーションするゆえの狂気。

ブロンソンは彼だけが集中的に照らし出される空間にいることが多いです。彼以外は闇になるような画面構成。

もはや内面や自身しかそこには存在しないかのようです。ナルシシズムの極みの空間とでもいえばいいでしょうかね。印象的です。

全てはハーディのワンマンショーです。そしてそれが素晴らしい。実際にピーターソンと会ったハーディですが、ここでの演技は比類ないと思います。

鍛え上げられた体は、暴力がわき出る塊。意図のわからない真顔に急な笑顔すら不気味です。そして汚い言葉を吐きながら、ただ意味不明に暴れる。

ここまで強烈な人間の存在は信じられませんが、それを証明するハーディの演技には拍手です。

ハーディのショーである上、レフン監督のスタイルもしっかり見受けられます。

画面の色遣いはやはり特徴ですね。色調の統一やそれに重なる音楽。監獄がどことなく綺麗にも見え、ファンタジーの世界を見るような感覚でした。

現実乖離した映像と画面構成。ひとによってはドギツイだけかもしれませんが、私にはとても美しく練られた画面に思えますよ。

オープニングの真っ赤な檻の中、全裸で鍛え暴力の解放を待つシーン、そこからの曲に合わせての乱闘などかなり好きなところ。

分からないゆえに恐ろしい暴力そのものが、ブロンソンという名を持って今現在も存在しているんです。名を馳せたいのか、気に入らない奴は誰でもつぶすのか。暴力、人を殴ること、血が出ること。それらを自分の作品にしようとしていたのでしょうか?

ただ絶対に止まらない。

ひたすらに鍛え、気に入らなければどこであろうが、誰であろうが何人であろうが、結果がどうなろうが、相手を殴る。

看守の監禁での電話シーンや、美術室?での立てこもり。

何かしら要求を聞かれるのですが、ブロンソンは自分でも何を求めているのかわかっていないようですよね。”What do I want?”って自分に聞いているようにも思えましたし。

ハーディがすべてをさらけ出し(本当に)、狂っているのかも分からなくなる男を見事に演じきった本作。

ただ思ったのは、この男と関わらなくて良かった。そして刑務所から出さない方が良いw

ということでかなり奇妙な伝記映画。実在のブロンソン、そしてここに映画、芸術上のブロンソンが生まれていますね。

芸術とはすべて、思い上がったナルシシズムの、自己表現の塊なのかもしれません。フォーマットさえよければ評価されますが、変わったメディアを選ぶとただの狂人なのか。

興味がある方、ハーディの演技目当てでも見てみると良いかも。

ハマれば最高にキレてるカリスマティックな映画です。

それでは、また~

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