「マスタング」(2019)

  • 監督:ロール・デ・クラモント・トネール
  • 脚本:ロール・デ・クラモント・トネール、モナ・ファストヴォルド、ブロック・ノーマン
  • 製作:アライン・ゴールドマン、セドリック・アイランド
  • 製作総指揮:ロバート・レッドフォード、タンギー・ディケイサー、モリー・ハラン
  • 音楽:ジェッド・クゼル
  • 撮影:ルーベン・インペンス
  • 編集:ジェラルディン・マンジュノー
  • 出演:マティアス・スーナールツ、ジェイソン・ミッチェル、ブルース・ダーン、コニー・ブリットン、ギデオン・アドロン、ジョシュ・スチュワート 他

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野生の馬の飼育と訓練を通して受刑者の更生を図る、実在のプログラムを元にしたドラマ映画。

主演は「レッド・スパロー」などのマティアス・スーナールツ。そのほかジェイソン・ミッチェルや名優ブルース・ダーンも出ています。

監督は女優であり、今作が初の長編監督となるロール・デ・クラモント・トネール。

サンダンス映画祭では委員会とNHKが共同のNHK賞を受賞しました。

作品は予告だけみたことがあったのですが、日本公開は現時点で未定なので、ちょっと先に海外にて鑑賞。

これまで助演や脇役で存在感を示していたマティアス・スーナールツが主演というのも、鑑賞意欲を掻き立てられました。

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重罪を犯し、刑務所で過ごすローマン・コールマン。

セラピーを受けている彼だが、問題はその怒りのコントロールであり、アンガーマネジメントもうまくいっていない。

あるとき刑務所内での作業中、馬小屋の中から激しく扉を蹴る音を聞き、ローマンはそこに荒々しい一頭のマスタングを見つけた。

馬は刑務所の更生プログラムのために連れてこられたうちの一頭で、受刑者たちは馬を世話することで社会性や思いやりを学ぶのだという。

ローマンはこの荒れたマスタングを世話したいと思い、プログラムに参加する。

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埃っぽくて荒涼としていて色彩にも欠けるのですが、とても美しく心にしみる作品でした。

見た目の華やかさではなく、人と馬による突き詰めて純粋な、そして率直に残酷な物語は、それ自体が威厳に溢れ美しいからだと思います。

台詞も少なく(というか馬は喋りませんから)、マティアス・スーナールツも自分で言うように人とうまくやっていけない男です。

マティアスのリードは確かなものだったと思います。彼自身が野生動物のようで、息が荒く黙っていて急に吠える。

しかしそこに繊細さが宿っていて、すこしづつ観客もローマンを理解していけます。

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なにより、彼自身が自分のコントロールも、そして自分自身を理解していようといませんでした。

馬の瞳から見えるのは自分の姿です。

自分の過去や行動、冒頭の個別のセラピーが話し合いでもなんでもなかったのに、のちに自らグループセッションにて、行動までの時間とその結果の時間を話します。

人と付き合うことと馬の訓練が重なっていきます。

それぞれリスペクトすべきスペースがあり、主張すべき時はする。

相手を考えるとはつまり、今の自分の言葉や態度が相手にとってどうなのか考えること。つまり自分を見つめることでした。

その過程はやはりわかってはいましたが、グッときますね。特に崩れかけたローマンに、そっとマーカスが寄り添ってくるところ。あそこで”バディ”って呼ぶその転換の自然さと重み。

ただこの作品は全体的には淡々としています。編集もぶつ切りで早い展開を見せますが、起きることすべてが残酷でもありますね。

友の死や馬の売却。面会室で記念写真を撮るシーンとかもはや酷すぎてちょっと笑えてしまうくらいです。

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始まってすぐのセラピーで、ローマンは「話を聞いているのか、それとも自由は重要だということか。」に、ただ「聞いている。」と答えています。

彼は自分自身を解き放とうとはしていませんでした。物理的にも、そして精神的にも。真っ直ぐには自分を見れなかったから、馬を通して自分を見たローマン。

私は救うこと、関わることで自分が救済される話が好きです。

力任せには達成できないものが、鏡のような瞳を持つ馬を通して為される。馬はローマンの魂を象徴するのかと思います。

澄み切った中で淡々と進む話。

人間と馬のドラマとか、かなり使い古された話ではありますね。

それでも誇張も、そして言ってしまえば情けもない純化された物語は、だからこそとても美しく感じます。

今のところ日本公開日は決まっていない?ようですね。配信でもいいから日本でも観れるようになってくれるといい作品。

今回はこのくらいで。最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた次の記事で。

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