「レッド・スパロー」(2018)
作品概要
- 監督:フランシス・ローレンス
- 脚本:ジャスティン・ヘイス
- 原作:ジェイソン・マシューズ
- 製作:ピーター・チャーニン、スティーブン・ザイリアン、ジェンノ・トッピング
- 製作総指揮:メアリー・マクラグレン、デビッド・レディ、ギャレット・バッシュ
- 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
- 撮影:ジョー・ウィレムズ
- 編集:アラン・エドワード・ベル
- 出演:ジェニファー・ローレンス、マティアス・スーナールツ、ジョエル・エドガートン、シャーロット・ランプリング、ジェレミー・アイアンズ 他
「ハンガー・ゲーム」シリーズを(まあ2からですが)監督したフランシス・ローレンスが、再びそのシリーズ主演だったジェニファー・ローレンスと組んで送る、スパイスリラー映画。
原作はジェイソン・マシューズによる同名小説。
助演には「ラビング 愛という名前のふたり」(2016)のジョエル・エドガートン、「さざなみ」(2015)のシャーロット・ランプリング、そして「リリーのすべて」(2015)にも出演していたマティアス・スーナールツら。
海外で予告が上がったときから、ダークなテイストにセクシーさ全開のジェニファー・ローレンスが話題でしたね。
公開した週末に、新しくオープンしたTOHOシネマズ日比谷にて鑑賞しました。
ファーストデーだったこともあって、ほぼ満席に近い状態でした。
まあ場所柄か年齢層はあんまり若いって人はいなかったかな。
大学生以下は見なかったかも?
~あらすじ~
ロシアでバレリーナとして活躍し、国の誇りとして大切にされていたドミニカ。
しかし、公演中の事故で足に怪我をしてしまった彼女は、一転危機に陥ってしまう。
もはや踊ることのできない彼女は不要なものでしかなく、与えられたアパートも、病気の母の援助も、このままでは失ってしまうのだ。
そんななか彼女が唯一頼れるのは、国家に尽くす叔父であった。
叔父は政治的な仕事であると、ある男を誘惑するように言うのだが、そこでドミニカは殺人に巻き込まれる。
選択肢は2つ。国の秘密を知った口封じで処分されるか、国家のために尽くす”スパロー”になるか。
感想/レビュー
この作品はミステリーと言う面ではそこまですごいというわけでもないかと思いました。
「裏切りのサーカス」(2011)のような雰囲気で、誰がいつだれを裏切り、誰が味方で誰が敵か分からないような感覚はある程度あります。
しかし、最終的な着地点に関しては、やはりジェニファー・ローレンスがちょっと良い人感を出している面もあって予想のつかない事になるわけではありませんでした。
ジョエル・エドガートンと一緒ですし、まあどちらも根の良さそうな感じがするじゃないですかw
終始人間のむごい部分をさらし続ける
それよりも、今作はその徹頭徹尾貫いたスタイルと描写が見どころだと感じました。
一切の容赦なく、むごたらしく精神的にも肉体的にも不快かつ苦痛。
このシリアスで重苦しく汚い空気で満たされた上映時間を楽しむことが、とにかくこの作品ではおススメなのです。
個人的には、2017年の「アトミック・ブロンド」から楽しい部分を消し去ったものなのかなと思います。
アクションや音楽を捨てて、血なまぐささや痛みを残し、そこに心理的な抑圧と苦痛を加えた感じです。
R15にしてはなかなかハードコアで、銃、暴力、拷問、レイプに性倒錯から心理的虐待に復讐に裏切りに・・・人間の見たくないおぞましいところだけをずっと見せつけてくるような。
そんな世界に体当たりでぶつかって見せるジェニファー・ローレンスには感服ですね。
母の前だとすっとドミニカに戻るのに、訓練所や任務中はさまざまな表情を、しかもウソかホントか分からない感じで出すのです。
演技の中の演技でもありますから、おもしろいのですよ。
ジェニファーと取り囲む人物の中では、堂々たるシャーロット・ランプリングもすごかった。
なんだあの手練れ感w
そして何かとロシア人っぽいということでロシア人をやっている、本当はベルギー人のマティアス・スーナールツ。
彼も今回は一番の悪役と言うか、まとめてこの作品で描かれているロシアの体制そのものでしたね。
役者たちは、そういう意味でロシア側がすごいので、アメリカ側のジョエル・エドガートンはちょっと薄くて物足りない気もしました。
アメリカはアメリカらしい何か汚い部分とか出ているともっと面白かったかもしれません。
人物が決断するよりも早く次のシーンをカットバックする編集や、ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽、エレガンスを忘れず入れて対比的に裏側の惨さを強調する撮影や全体のテイストなど、ひとつのハードなスリラー映画として楽しめました。
命題とかは気にせずに、とりあえずこの悪夢的で逃げ場のない舞台で頑張る女性を観ましょう。
えぐい部分もモロに映したりはしないのでその手のが苦手な人でも大丈夫かと。
美しいジェニファーがみせる表情一つで、そのシーンのトーンが切り替わるその場面支配も含めて、監督のスタイルを楽しめる作品だと思います。
今回はあっさりめの感想です。それでは、また~
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