「パリ、嘘つきな恋」(2018)

  • 監督:フランク・デュボスク
  • 脚本:フランク・デュボスク
  • 製作:シドニー・デュマ
  • 音楽:シルヴァン・ゴールドバーグ
  • 撮影:ルドビク・コルボー・ジャスティン
  • 編集:サミュエル・ダニシ
  • 出演:フランク・デュボスク、アレクサンドラ・ラミー、キャロライン・アングラード、エルザ・ジルベルスタイン、ジェラール・ダルモン 他

Tout le Monde debout

何気ない嘘から展開するラブロマンスを、フランスの人気コメディアンであるフランク・デュボスクが、自ら監督・脚本・主演を務めて描く作品。

本国にてヒットを飛ばした本作は、「グレートデイズ! 夢に挑んだ父と子」のアレクサンドラ・ラミーを迎えて、身体障がいという題材とロマンスを混ぜ込んだもの。

私はあまり認知していたわけでもない作品でしたが、公開週の感想やレビューを見る感じでは結構好評を受けていました。

公開から2週目となるファーストデイに鑑賞。割引の日というのもあるのか、劇場は満員でしたね。しかし小さな規模でフランス映画、客層は年齢層高め。あと、女性が多かったですね。

パリのシューズメーカーにて支社長を務めるジョスランは、美しい女性と一夜限りの関係を求める軽薄プレイボーイ。

あるとき、彼の母が亡くなり、暮らしていた家で遺品の整理をすることに。その際ジョスランは母の使っていた車椅子に座っていたのだが、それを見たジュリーという女性はジョスランを障がい者と勘違い。

ジョスランもジュリーの気を引くために嘘をついて車いす生活の振りをする。

ジョスランはジュリーの家での会食に招かれるのだが、そこでジュリーの姉フロランスを紹介される。彼女は事故で車いす生活になりながらも、バイオリニスト、そしてテニスプレーヤーとして活躍する人だ。

ジョスランはそんなフロランスに惹かれていくも、今更告白できない嘘と板挟みになっていく。

何気なく見た作品なのですが、とても爽やかで、それでいて人間ドラマとして奥底にアプローチする映画だったと思います。

いい意味で期待以上のものに出会えたというか。

最終的な私の印象としては、ラブロマンスというよりも人間讃歌に近い素敵なドラマです。

プロット自体はとってもシンプルで、かなり繰り返し語られてきたものではあります。

嘘をついて始まる恋愛劇で、それがバレるのかバレないのか、そしていつ告白するのか。

さらに好きになるほど罪悪感が増していくなど、一定のスリルが盛り込まれているタイプのロマンティック・コメディ。

ただこの作品は”障がい”を入れ込みます。

ともすれば、障がい者に対して嘘ついて近づくなんて酷すぎる!という設定に対する嫌悪感が出そうなところですが、全体のトーンの明るさやユーモアを利用して軽くしています。

しかし同時に、決して設定から逃げていません。

それは後にもある仕掛けでも驚かされましたが、そもそ「障がい者だから嘘をつくなんて最低」と言うことでしょうか?

いずれにしても人間関係にて嘘はいけないのに、なぜか障がい者に対してだとセンシティブに反応する、その姿勢こそ気付かずに持っていた差別的な姿勢だと思いました。

中盤にあるジュリーがジョスランをひっぱたくシーン。あれはコメディ交じりなんですが、核心をついていると思います。

車いすに座った人を叩くこと。でもその叩かれた人が立ち上がること。光景を見る私たちの軽薄な心の移ろい。

そういったことは全て、表層を見ていたことに理由があります。

ジョスランは常に女性の胸や尻を見まくる男でした。彼にとってはルックが全て。自分自身に関しても、加齢とか含め見た目を気にする発言がありますね。

それはきっとですが、真っ直ぐ自分を、そして人を見ることを怖がっていたからかなと思います。そういう点は自分にも感じられますので、親しみやすく感じました。

ただそうやって映画自体も嘘から始まるロマコメという表層的な部分を見ていると、今作は素敵な”裏切り”を用意しています。

それはこの嘘をある意味必然に、双方向的に働かせつつ、ジョスランだけでなくフロランスにも必要とさせる仕組み。

それに、フロランスはただ騙され傷つく瞬間を待つヒロインではなかったのです。彼女のあり方は、ここでもう一つ、私に見えていなかったものを見せてくれました。

悪天候ばかりの二人のデート。

ただ最後に、本当に相手を想うからこその行動を起こして、でもだからこそ関係はおしまい。

ジョスランは秘書の誕生日をお祝いできるようになり、人をその人格や個性でみるようになります。そしてなにより、自分自身としっかり向き合うようになったと思います。

原題は「Tout le Monde debout 」、”みんなが立っている”という意味です。なかなか皮肉なタイトルだとも思いましたが、実はすっごく的確に思えます。

誰しも、自分や他人としっかり向き合えていないのなら、車いす状態です。フロランスは違いました。彼女は自分の足で立って強く生きていたのです。

だから最後、挫折して動けなくなったジョスランを彼女が運ぶ姿がなんとも爽快です。ジョスランはフロランスのおかげで、立ち上がり人生を前に進めるようになったのですから。

フランク・デュボスク監督はサラリとしたユーモアの中に、仕掛けを持って気づきを入れこみ、障がいという要素の本質的な意味を教えてくれます。

楽しく笑いながらも結構真面目な作品。プールのシーンなどオシャレ過ぎてたまらないところもあり、けっこうおススメの作品でした。

今回はこのくらいでおしまいです。最後まで読んでいただきありがとうございます。それではまた。

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