「もっと遠くへ行こう。」(2023)
作品解説
- 監督:ガース・デイビス
- 製作:ケリー・コハンスキー=ロバーツ、ガース・デイビス、エミール・シャーマン、イアン・カニング
- 製作総指揮:ドーン・オルムステッド、デビッド・レバイン、ロバート・ワラク、サマンサ・ラング、イアン・リード
- 原作:イアン・リード
- 脚本:イアン・リード、ガース・デイビス
- 撮影:エルデーイ・マーチャーシュ
- 美術:パトリス・バーメット
- 衣装:アリス・バビッジ
- 編集:ピーター・シベラス
- 音楽:パク・ジハ、オリバー・コーツ、アグネス・オベル
- 音楽監修:ジェマ・バーンズ
- 出演:シアーシャ・ローナン、ポール・メスカル、アーロン・ピエール 他
「LION ライオン 25年目のただいま」のガース・デイビス監督が手がけた近未来SFドラマ。夫が宇宙移民の候補に選ばれたことをきっかけに、夫婦の関係や個人のアイデンティティが揺らいでいく姿を描いています。
「ブルックリン」や「レディ・バード」などのシアーシャ・ローナンと「afterson/アフターサン」や「異人たち」のポール・メスカルが主演を務めています。
「もう終わりにしよう。」で知られるベストセラー作家イアン・リードの同名小説が原作となっており、リード自身も脚本・製作総指揮に参加しています。
作品は、Amazon Prime Videoで2024年1月5日から配信されています。
~あらすじ~
2065年、夫婦のヘンとジュニアは、人里離れた土地で農業を営んでいた。
ある日、突然現れた見知らぬ男テランスが、ジュニアが宇宙への移住要員候補に選ばれたことを告げる。
驚く夫婦の前に、テランスはジュニアだけが選ばれたと説明し、ジュニアが宇宙へ行く間、彼の代わりとしてヘンのもとに人物を置く提案。この提案を受け、ヘンとジュニアの静かな生活は一変する。
感想レビュー/考察
世間的には「LION ライオン 25年目のただいま」ってすごく評価が高いと思うんです。でも私は当時からあまり好きではなくて。
元が素晴らしい、驚くべき物語である点に対して個人的には映画的な解釈とか表現の仕方とかそこまで感じなかったので。俳優陣が良かったんですけど。
ガース・デイビス監督に対してはどちらかというとマイナスな印象を持っていました。
で、今作は原作がどうなのか分からないですがヘンテコな脚本で主演の二人が素晴らしいという点をもってなんとかしようとしても失敗している気取ったロマンス映画になっていると思います。
これって心理的なスリラーとか、夫婦という他人同士での人間関係の究極の形すらも疑問を投げかけるような哲学があるのかもしれません。
だとするとその路線で話が完成されている第2幕までで終わってもいい話なんじゃないのでしょうか。
要するに、
でも実はすでに夫はクローンに置き換えられていて、本物はすでに宇宙に行ってしまっていた。
クローンは自らをクローンとは知らないまま、妻も気づかずに自由意思で人間と接していた。実験は大成功!
って話です。
でもその点については正直あまり面白くないきがします。
むしろ夫婦が別離を迎えるまでの準備期間で、ここまで究極の関係性である”結婚”をしていながらも、実はやはりプライベートとか個人的な思惑とか、相手に言っていないことの多さを露呈していく部分の方がすごく興味深く感じました。
相手は自分のことを分かっていると思っているし伝えている気でもある。でもやはり好きなことも嫌いなことも抑えて口に出していないことも結構あるのです。
まあその辺のインタビューを通した露呈について、演者のシリアスさや抑制されたトーンなどがあってもお話としては割と普通。
自由で勝手で気が付かない夫と、抑圧されていて解放を考えている妻というあまり新鮮味もないものなんですけれど。
あと正直何回出てくるんだってくらいのセックスシーンもそこまで必要なのかよくわかりませんでした。
愛情を確かめ合うために?セックスを何度もしないと愛を確認できないくらいに夫婦間が危機にあることを示したかったのかもしれませんが、しつこいかなと思います。
物語としてなにかツイストとかエンタメとしての盛り上がりが欲しいからなのでしょうが、終盤の巨大企業の陰謀的なスリラー演出とかもうオチが分かっている中でのカブトムシ?とか手紙の下りとか微妙です。必要に迫られて入れた盛り上がりどころな気がします。
終わり方がその実はすでに夫はクローンでした!なので別に驚くわけでもなく、SFらしい哲学的な問いかけで宿題を渡されるでもなく。
シアーシャ・ローナンとポール・メスカルは良いですが、正直なところ最後まで見ると長ったらしいわりに退屈な作品だったと映ってしまいました。
短めですが感想は以上です。
ではまた。
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