「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)」(2014)

  • 監督:コーネル・ムンドルッツォ
  • 脚本:コーネル・ムンドルッツォ、カタ・ウェーベル、ビクトリア・ペトラニー
  • 音楽:アシャー・ゴールドシュミット
  • 撮影:マルツェル・レーブ
  • 編集:ダービド・ヤンチョー
  • 美術:マールトン・アーグ
  • 衣装:ザビーネ・グライニグ
  • 動物コーディネーター:テレサ・アン・ミラー
  • 出演:ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ジョーテール、ボディ 他

こちらハンガリーからの250匹わんちゃん。カンヌである視点、パルムドッグを受賞した作品です。

海外の友人におススメされて、日本公開を待っていたのですが、ようやっと公開されたので週末に観てまいりました。なにやら他作品の影響でとても混んでいて、行列に並びつつ上映までに発券できるか焦りました。

時間の迫っている作品は優先してもらいたいですが、線引きが難しいので無理でしょう。

と、そんなことはどうでもよく、今作はもう犬ですよ。犬の演技。どうやって引き出したの?どうやってこんな表情が出せるの?アカデミー賞もらってもいいワンちゃんの名演が本当に素晴らしい。

ハンガリーのブダペスト、ここでは雑種の犬に対して重い税金が課される新法案が施行され、多くの雑種犬が捨てられ捕獲され、処分されていた。

13歳のリリは飼い犬のハーゲンと幸せに過ごしていたが、ある日母の元をしばらく離れ、父と暮らすことになる。

しかし父のアパートでは犬は飼えず、心無い住民により通報される。税金は払わない父と、ハーゲンを施設に引き渡さないリリが対立。父は道端にハーゲンを置き去りにしてしまい、リリとは引き離されてしまう。

リリはハーゲンを探しつつ、上手くいかない日常に苦悩。一方のハーゲンには、野良の雑種犬への悲惨な現実が待ち受けていた。

「ホワイト・ゴッド」で犬というと、サミュエル・フラー監督の「ホワイト・ドッグ」(1982)を思わせます。

DOGは反対でGODになりますし、今回もフラー監督のものほど直接ではないだけで、人種差別を問題として寓話化していると思います。

それは後々としますが、今回実質主人公であるハーゲンを演じているのが、ボディBodyというわんちゃん。

愛くるしい見た目で序盤はリリと一緒に過ごしていますが、その時と後半での変化、随所での表情など本当に素晴らしい。戸惑いや、音に反応する姿、またかなり残酷な描写や虐待、薬投与などいったいどうしたらこうまで演技できるのか。

その他の犬たちもそうですが、ここまで引き出せるのは、コーディネーターのテレサ・アン・ミラーによる部分が大きいのかと。そして全クルーが犬たちとしっかり信頼関係を構築して撮影に臨んだのでしょうね。

ハーゲンが出会うもの、雑種の犬たちと彼らを捕獲しようとする人間。また利用しようとする人間。人種問題等でいえば、移民局や移民を搾取する会社や組織なのかもしれません。

許可されなければ生きることすらできない残酷さですが、実際に移民に対する問題としてはこれと同等かそれ以上なのかもしれません。

ハーゲンが捕らえられ、闘犬にされていく過程には、古くからの奴隷を殺し合わせ賭け事をするビジネスが思い起こされます。

この間まで飼い主と歩いていたのに、もう飼い主はいない。純血であるダルメシアンが飼い主と並んでいる隣で、ハーゲンはさびしく信号を待つ。

ダルメシアンと同じく横断歩道を歩きながらも、この二匹の犬は違う扱いと運命が待っています。

そもそも信号をしっかり待つぐらい賢く、社会ルールに従っているのです。それでも社会は理不尽に扱ってくるんですね。悲惨です。

そうして人間への、自分を取り巻く社会への信頼を失い、革命を起こすハーゲン。

さながらスパルタカスのように、そして犬の惑星:創世記といってもいい大逆襲が始まりました。あの抑圧と虐待ゆえに、ハーゲンらの猛攻がかっこよくカタルシス。

走り方一つでも、リリの車を追いかけていた時とは大きく違っています。

行きつく先にはすべての発端である元飼い主がいるわけですが、しっかりとリリのトランペットを活かした着地でした。あの後どうなるのか、それは不明ですが、しかしラストショットのシンメトリックかつ荘厳な画面には圧倒される神々しさが宿っていたと感じます。

もちろん各所にプロットホールがあるのですが、今回はボディ演じるハーゲンや犬たちの圧倒的な演技にかき消されています。本当に素晴らしい。言葉なくして語り、表情で心を感じる。

決してアンディ・サーキスがいるわけではないんですよwもうホントすごい。

犬の演技だけでも見る価値ありの、おすすめ作でした。そんなところでおしまいです。それではまた~

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