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「アウトロー」”Jack Reacher”(2012)

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映画レビュー
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「アウトロー」(2012)

  • 監督:クリストファー・マッカリー
  • 脚本:クリストファー・マッカリー
  • 原作:リー・チャイルド “One Shot”「アウトロー」
  • 製作:トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー、ゲイリー・レヴィンソン、ドン・グレンジャー、ケヴィン・J・メシック、デヴィッド・エリソン、デイナ・ゴールドバーグ
  • 製作総指揮:ジェイク・マイヤーズ、ポール・シュウェイク
  • 音楽:ジョー・クレイマー
  • 撮影:キャレブ・デシャネル
  • 編集:ケヴィン・スティット
  • プロダクションデザイン:ジェームズ・ビゼル
  • 衣装:スーザン・マセソン
  • 出演:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、ジェイ・コートニー、リチャード・ジェンキンス、デイヴィッド・オイェロウォ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ロバート・デュヴァル 他

リー・チャイルドによる人気小説シリーズ、ジャック・リーチャー。

その小説第9作目をトム・クルーズ主演で映画化。監督には脚本家として活躍、今ではトムといいコンビを組んで「M:I5ローグ・ネイション」(2015)を撮り、自作MI6の監督にも決まっているクリストファー・マッカリー。

助演には「ゴーン・ガール」(2014)で高い評価を受けたロザムンド・パイク。

その他手堅い人たちが集まってる印象で、ドイツの名監督ヴェルナー・ヘルツォークが出てますし、あのロバート・デュヴァルも出演。

公開時に観たのですが、トム・クルーズってことで人はいましたね。ただ友人含め、地味な映画という感想がほとんどでした。

ペンシルバニア州のピッツバーグで、白昼に無差別狙撃事件が起きる。

警察は狙撃現場に残された複数の証拠からすぐに犯人を割り出し、元陸軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕された。

しかし、バーは何もしゃべらず、”ジャック・リーチャーを呼べ”と書き残し黙秘する。

ジャック・リーチャー。従軍記録以外には公的な資料が何もなく、まるでゴーストのような流れ者。

彼はバーに会いに来たところで、彼を弁護するヘレンと出会う。

うーん。これは地味な、しかしレトロな時代の空気、その時代の映画の感覚を保存したような傑作です。

ミッション・インポッシブルシリーズを作ったトム・クルーズが今作で用意したのは、映画時代に反抗するような作品。派手さはなく、見せ場は何ポイントかに抑え、じっくりと撮影する。

一昔前のクライムアクション映画、「ダーティ・ハリー」(1971)や「フレンチコネクション」(1971)に近いような空気感というか。

2010年代に作られたアクション映画としては地味なのですが、それ故に印象的な部分がより強く感じられると思います。

全編派手ではなく、要所で強い印象を残すタイプといいますか。

格闘術に関しては、どうやらノーラン版バットマンで使われていたものと同じらしいですが、今作ではカメラの動きもカットも抑えており観やすいです。そして何より、観てて痛々しい!

関節にこぶしを振り下ろすような動きで、無骨ながら人体に確実にダメージを与える様がよく出ています。

リーチャーが淡々と敵を戦闘不能にしていくのは、カタルシスも感じられますね。

主人公描写として特徴的なのは、リーチャーの絶対的なリーチャーが完成されすぎていて笑える部分すら出ています。

とにかく先を見通していて強いので、不安はない。

笑えるといえばチンピラの家の浴室でのひと悶着とか、完全にコメディです。

アクションの良さに加えて、その目的が、リーチャーの強さの紹介、コメディ、カタルシスに溢れるフィストファイトですから、構成も色分けもうまいものです。

そして、アクションとしてかなり印象に残っているのが、中盤のカーチェイスですね。

撮影の安定した固定カメラやじっくりみせるスタイルもレトロですが、車という大きな鉄の箱の描写が素晴らしい。重さと馬力という言葉通りの馬のような猛々しさ。

吹かされるエンジン音のみで、艶のあるボディと夜の街、そして様々な角度から入るライトが本当にかっこいい。

ぜひともこのカーチェイスシーンは見てほしいところです。

監督は派手な音楽やカット割り、画面揺れなどを排する時代への反抗から、現代に蘇る一昔前のアクションの味を出し切っていると感じます。

ジャック・リーチャー。小説では2mくらいの巨漢で、体が彼の強さ、止められない存在を体現しているのに対し、今回は体ではなくトム・クルーズというカリスマ性を持って強さを証明しています。

そんなに若くはないし、体大きくない。傍からすれば、あんな奴に何ができるんだ?といわれそうなトムが、淡々と真面目な顔して相手をボコボコにしていく。

ただ、私はリーチャーの造形が好きです。

彼自身には何のよりどころも仲間も、ともすれば帰るとこすらない。社会のはぐれものにして、まるですべてを超越する正義という概念のように振る舞う。

最後に敵を撃ち殺すのも、彼がアウトローだからです。彼は自分にできることを知っており、自分を止められないことを知っています。

そして、かならず悪には制裁を与えていく。

やり直せたはずの少女を想い、「お前だけは簡単には殺さない。」とばかりに格闘を選ぶ男。

私は心のどこかで求めてしまうんでしょうね。彼のような存在を。

不安を抱え、恐れて生きる人間にとって、彼のような者は代弁者であると思います。

男が女を怒鳴りつけ、手を上げる。誰も見てみぬふりをする中で、すっと立ち上がれるようになりたいのです。

マッカリー&トムのコンビとして、M:I5と同じくらい好きな本作。

レトロな雰囲気は撮影や構成により完成され、メタ的な笑いすら入れつつ、普遍的に人が求めているような正義の代弁者を見せる。

古臭いし、地味でつまらないかもしれませんが、こういう要所を抑えた味のある映画は私は好きなのです。

というところで感想は終わります。

続編はちょっと現代寄りに変わって残念ではありましたが、今作は本当に好きなものですよ。それでは、また次の記事で~

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