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「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」”The Room Next Door”(2024)

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「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」(2024)

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作品解説

  • 監督:ペドロ・アルモドバル
  • 製作:アグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシア
  • 原作:シーグリッド・ヌーネス
  • 脚本:ペドロ・アルモドバル
  • 撮影:エドゥ・グラウ
  • 美術:インバル・ワインバーグ
  • 衣装:ビナ・ダイヘレル
  • 編集:テレサ・フォント
  • 音楽:アルベルト・イグレシアス
  • 出演:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロ、アレッサンドロ・ニヴォラ 他

スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが初めて手がけた長編英語作品であり、2024年の第81回ベネチア国際映画祭で最高賞となる金獅子賞を受賞したヒューマンドラマ。

名優ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアが共演し、病に侵され安楽死を望む女性と、最期の日々に寄り添う親友との深い絆を描きます。

「フィクサー」でアカデミー助演女優賞を受賞し、アルモドバル監督の短編英語劇「ヒューマン・ボイス」にも主演したスウィントンがマーサ役を、「アリスのままで」でアカデミー主演女優賞に輝いたムーアが親友イングリッドを演じています。

たしか昨年の東京国際映画祭で上映されていたと思いますが、その時は鑑賞リストから外していました。当然監督や出演者を見ても、一般公開がスルーされることはないと思いましたので。

公開週末に早速観に行ってきましたが、ファーストデーだったので結構混んでいました。ちなみに結構静かな作品ではあるので、寝てる人もいました。

「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」のワーナー公式サイトはこちら

~あらすじ~

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重い病を抱えるマーサは、長らく疎遠だった親友イングリッドと再会し、空白の時間を埋めるように病室で語り合う日々を送っていた。

治療を受けることを拒み、自らの意志で安楽死を選んだマーサは、人の気配を感じながら最期の時を迎えたいと願い、“その日”が来たときには隣の部屋にいてほしいとイングリッドに頼む。

悩みながらもマーサの思いを受け入れたイングリッドは、彼女が借りた森の中の小さな家で共に過ごすことを決意する。

マーサは「ドアを開けて眠るけれど、もしドアが閉まっていたら、私はもうこの世にはいない」と告げ、2人は限られた時間の中で最後の日々を紡ぎ始める。

感想レビュー/考察

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美しい色彩を持った画面は、死を通して生を見つめる

ペドロ・アルモドバル監督のスタイルがふんだんに感じられる作品。

豪華な俳優2人のW主演も相まってルックのリッチさは格別だと思いました。

静かでゆったりとしていて、色彩が豊か。カラーの部分は本当に印象的です。

ブルーのドレスや真っ赤なリップにティルダ・スウィントンのホワイトの髪。ソファベンチや森の木々のグリーン。

対比的に使われ、コントラストが強い色彩配置をしながらも、全体にはうるさくない画面を保っていて美しい。

この彩り豊かな画面からは、作品のテーマが死であることに対してそぐわない雰囲気を感じるかもしれません。

しかしむしろ、作品は死を見つめるからこそ生きることを見つめることになっていて、だからこそ生きる世界の鮮やかさを表現しているのではないかと感じました。

この点はティルダ・スウィントンがマーサを演じる上でのアプローチについてインタビューされた際に、作品テーマについての回答でも明言していました。

「この映画は死についての映画ではないと言わせてください。人生、あるいは生きるということについての映画であり、死があってこそ、生きるとはどういうことなのかが描かれた映画であり、そこに人生の手綱を最後まで自分で握ることができるという示唆が描かれています。」
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芸術が私たちの人生を形作る

主題は安楽死です。

これは自ら死ぬことを選ぶという行為を通し、最期を迎える人がそこまでをどう生きるかを描いているということになります。

マーサは多くの芸術を愛しています。本を読み、映画を見て。作中でも彼女は疲れたと言いつつも芸術に触れ続ける。

それらが人生に影響し、人を作り上げる要素であるということでしょう。芸術への愛情が、人の生に大きな役目を、意味を持つ。

「ザ・デッド/「ダブリン市民」より」というジョン・ヒューストン監督による1987年の作品が出てきます。ジェイムズ・ジョイスによる短編が原作で、原作自体も今作の中で何度かでていたと思います。

この物語は昔亡くなった友人を思い出した老婦人が、誰もが行き着く死の世界を想うといった内容。今作のテーマにも合っています。

その意味では今作自体が芸術へのラブレター感も。

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生きることに悲観的になってはいけない

死を眼前に生きることを意識することになるのは、マーサと秘密の約束をした主人公のイングリッドです。

サスペンス映画のように、犯罪映画のようにシークレットミッションを進めていき、覚悟を決める。

この映画の冒頭では久しく会っておらず、マーサとやや疎遠だったイングリッドは改めて大切な人との別れに対しての感情の整理をしていくことになります。

そしてそれは、誰しもに訪れる死を意識し、そこまでの生き方や誰と過ごすのかを考えていくことになりました。

そんな生を強く押し出す作品ですが、反対に生きることに悲観的なのはジョン・タトゥーロが演じた ダミアンです。

彼は今の地球環境が不可逆的な問題を抱え、世界は破滅に向かっていると言います。このような世界になら、子供は生まれてこないほうが良いとまで言うのです。

でも世界が残酷という彼の立場を、監督は支持していないと思います。

映し出されるカラフルな世界には優しさや希望を感じますし、自然の緑や降りかかる雪の結晶にまで色を感じで美しく描かれていますからね。

感情を揺さぶるには落ち着いて達観しすぎた

と、ルックやテイスト、そして空気感はとてもいいものになっていると感じた今作ですが、ドラマとしてなぜだか感情的にはなれなかったのが本音です。

ゆったりとしてすこしカタルシスに振りすぎたから、変に距離を感じてしまったのか。それともなぜか変に感じるセリフに違和感を拭えなかったのか。

死というものが入る中で何か達観した態度などをこめたマーサに対して、イングリッド側の焦燥の部分が飲まれてしまっているのが、感情をあまり揺り動かされなかった要因でしょうか。

マーサのペースすぎるのかもしれません。

上質で豊かな撮影と衣装、演者の力はそろっていますし、美しい作品であることは間違いないので、一見の価値はある作品でした。

今回の感想はここまで。ではまた。

 

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