「7500」(2019)

  • 監督:パトリック・ヴォルラス
  • 脚本:パトリック・ヴォルラス
  • 製作:マクシミリアン・レオ、ジョナス・カッツェンスタイン
  • 撮影:セバスチャン・セイラー
  • 編集:ハンスヨルク・ヴァイスブリッヒ
  • 出演:ジョセフ・ゴードン・レヴィット、オミッド・メマール、カルロ・キッツリンガー 他

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「Everything Will Be Okay」(原題:Alles wird gut)でアカデミー賞短編賞にノミネートしたパトリック・ヴォルラス監督が長編デビューを果たす、密室内スリラー。

主演は映画出演も久しぶりのジョセフ・ゴードン・レヴィット。

今作はアマゾンスタジオでの製作となり、ドイツなど一部の国では映画祭にて上映、あとはほとんどの国で配信サービスにて公開された作品です。

日本でも2020年の6月から配信を開始していました。

今回はAmazonプライムビデオでいろいろ見ているうちに見つけての鑑賞。監督の短編は未鑑賞。

ちなみに、タイトルの7500は高度とかではなく、ハイジャック発生の緊急コードを指しています。なので7,500ではなくSeven Five Zero Zeroとなります。

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ベルリンからパリに向けて発つ旅客機。

副操縦士のトバイアスは機長といつものように機体の確認を行い、CAたちと確認を踏まえながらフライトを始める。

しかししばらくして、CAがコックピットへ連絡にきた隙をついて、数人の男が操縦席へと押し入ろうとした。

機長は刃物で刺され重傷を負うが、トバイアスはなんとか一人を閉め出し、もう一人は気絶させ拘束した。

トバイアスはすぐさま管制塔へハイジャックの発生を伝えるコード7500を告げる。

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たったひとつの舞台=コックピット内だけで展開し、役者もほぼ主演のジョセフ・ゴードン・レヴィットのみ。

閉鎖的空間と限られた資源の中で、これが長編デビューとなったパトリック・ヴォルラス監督は、非常に強烈なリアリティを追求したスリラーを生み出しました。

撮影用の舞台セットではない、実際の飛行機を購入しそのコックピット内で撮影したという点はそれだけで価値があります。

しかし、その素材を活かす方法もまたオーソドックスではなく、空気を作り上げることに貢献します。

役者の顔の観やすさや、空間的に整理された状態よりも、その場の狭さからくる動きにくさ、見えづらさを押し出した撮影。

またその撮影も、必要シーンごとに別撮りしていないというんです。

一時間を超える超長回しを行い、その後の編集でカットを生み出したとのこと。

そこから、ワンカットではないものの、連続性が生まれ、没入感へと昇華されています。

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また個人的に一番大きな役割を果たしていたと感じるのがその音響です。

実際に旅客機に乗っているようです。

音楽を廃し、とにかく環境音を、つまりトバイアスが耳にする音を観客にも共有する。

離陸、エンジン、空調。飛行機って音がするだけではなくて、身体で感じるんです。

タイヤが格納される瞬間とか、自分の下で実際に感じ取れますからね。

それが、ただイヤホンつけているだけでしっかりと感じられたのは素晴らしい音の設計だったと思います。

そしてもちろん、この音は外部の存在、驚異の演出にも活かされています。

響き続けるドアを叩く音。

外にカメラを出さずとも、迫る恐怖がトバイアスと共有されます。

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決して映画に限ったわけではないですが、手を出せない悔しさや苦しさ、悲しみも盛り込まれているのはすごく好きな点です。

ドアの向こうで起きる惨劇に、ただモニターを観ていることしかできないトバイアス。

これはそのまま、画面、スクリーンの中で奮闘する登場人物たちを見つめることしかできない観客と同じなんです。

切迫した環境を見事に作り上げたパトリック・ヴォルラス監督ですが、作品はまさに着陸には失敗した印象です。

それは付与されたドラマが正直邪魔になっていることです。

トバイアスと彼女のドラマにしても、事実の残酷さを増す以外には役割がなく、テロリスト側のドラマはさらに役目がありません。

緊迫した中盤までに比べ、以降はよくあるフライトスリラー映画のようです。

個人的には一切のドラマを廃し、実録映画のような空気で突っ走って欲しかった。

演出や撮影方法までこだわり抜いたからこそ、劇的にしなくてよかった気がします。

撮影、音響、ユニークな作り方など、パトリック・ヴォルラス監督が限られた材料の中でどこまで魅せられるかを証明した作品ではあります。

次作も期待の監督なのは間違いないでしょう。

今回の感想は以上になります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。

それではまた次の映画の感想で。

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