「メアリーの総て」(2017)
- 監督:ハイファ・アル=マンスール
- 脚本:エマ・ジェンセン、ハイファ・アル=マンスール
- 製作:エイミー・ベアー、アラン・モロニー、ルース・コーディ
- 製作総指揮:ジョハンナ・ホーガン、ピーター・ワトソン、マシュー・ベイカー、イザベル・デイビス、チャールズ・オーティ、フィル・ハント、コンプトン・ロス、エマ・ジェンセン、ジョアニー・バースタイン、レベッカ・ミラー、マーク・アミン
- 音楽:アメリア・ワーナー
- 撮影:ダヴィド・ウンガロ
- 編集 アレックス・マッキー
- 出演:エル・ファニング、メイジー・ウィリアムズ、ダグラス・ブース、ベン・ハーディ、ベル・パウリー 他
18歳で世界的な怪奇小説「フランケンシュタイン」を生み出したメアリー・シェリーの人生を描く伝記ドラマ映画。
監督は「少女は自転車に乗って」などで知られるハイファ・アル=マンスール監督。
そしてメアリー・シェリーを演じるのは、「ネオン・デーモン」や「ガルヴェストン」などのエル・ファニング。
その他ダグラス・ブースやベン・ハーディ、メイジー・ウィリアムズらが出演。
作品はトロント国際映画祭でのプレミアから2018年に入ってアメリカ国内で公開、日本でも同年末に劇場公開されていましたが、私は当時スルーしてしまい、今回は観る機会があったので初めての鑑賞です。
19世紀の初頭、本屋を営む父のもと自身も読書に励むメアリーは、父に隠れて怪奇小説を読むなど、ゴシックの世界に魅了されていた。
しかし幾度となく継母と衝突する彼女は、距離を置くためにヨーロッパへと送られる。
そこでメアリーは小説家パーシーと出会い、二人はマタタクマニ惹かれあい、駆け落ちするのだが、その後の生活はメアリーの夢見たものとは程遠かった。
ハイファ・アル=マンスール監督はひとつのメロドラマとして、エル・ファニングの可能性を広げながら、実直にメアリー・シェリーの若き時代を描きます。
しかしそれは創造主となるメアリーの話というよりも、女性映画であろうとする想いが強いためか、命が吹き込まれることのないものでした。
舞台としての衣装や美術、色彩のやや暗く彩度を落とした空気などの作り込みは、時代劇として楽しめるかと思います。
主演のエル・ファニングも彼女自身の成長がメアリーの解放への欲求などにうまく重なっていたように感じますし。
ただ徹底して描かれていくのは、時代に押し込まれた女性の物語であり、男性の無責任さや幼稚性の許容です。
もちろん出版についてのメアリーの訴えは真っ当で、フェミニズムの象徴的シーンとして強く印象に残ります。
しかしそうした描写が露骨、直接的過ぎるためか、メアリー・シェリーの先進性が映画を通して語られているよりもむしろ、映画がメアリー・シェリーを利用して主張に及んでいると感じるのです。
作品に求めるところが何か。
これについては個人的にはメアリーが創造することを描いて欲しかった。
自身の人生や絶望、人間の醜悪さや完全・不完全性をひとつひとつ文字へと、物語へと昇華させ、伝説的な怪物と創造主の話を生み出すその流れが観たかったのです。
ただ今作はメロドラマを大きく取り上げて、メアリーの苦悩や絶望、人間への諦めのようなものは描くんですが、小説との繋がりは薄い。
死を繋ぎあわせ息を吹き込むという小説に比べ、どうも活力にかける作品でした。
衣装や舞台美術、役者、撮影の美しさはありますが、心臓を失っている印象です。
今回は個人的にはあまりピンと来ないものでしたが、エル・ファニングのファンならチェックしても良いかと思います。
感想は以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ではまた。
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