「アンビュランス」(2022)
作品概要
- 監督:マイケル・ベイ
- 脚本:クリス・フェダック
- 原作:ラウリッツ・ムンク=ピーターセン『25ミニッツ』
- 製作:マイケル・ベイ、ブラッド・フラー、ジェームズ・ヴァンダービルト、ウィル・シェラック、イアン・ブライス
- 音楽:ローン・バルフ
- 撮影:ロベルト・デ・アンジェリス
- 編集:ダグ・ブラント、ピエトロ・スカリア、カルヴィン・ウィマー
- 出演:ジェイク・ギレンホール、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、エイザ・ゴンザレス、ギャレット・ディラハント 他
「アルマゲドン」や「トランスフォーマー」シリーズなど大規模な映画を手掛けるマイケル・ベイ監督が仕掛ける、銀行強盗の兄弟と彼らに人質に取られた救命士が救急車で逃走劇を繰り広げるクライムアクション。
主演は「ナイトクローラー」などのジェイク・ギレンホール、「キャンディマン」などのヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世。
また救命士の役には「パーフェクト・ケア」などのエイザ・ゴンザレスが出演。
今作はもとは2005年に作られたデンマークの「25ミニッツ」のリメイクとされて今いますが、実際のところ、監督曰く別の作品になっているそうです。
まあそちらを見ていないのではっきりとは言えないものの、今作を見る限りはたしかにこんな映画が2つもあるわけないと思います。
なにも期待していないものの、しかしキャストの魅力だったりベイ映画という王道なポップコーン映画もたまには摂取したいので、公開日に観に行ってきました。
さすがに平日の朝だったので空いてましたが、春休みということもあってか意外に学生が来ていました。
今作は版も上映していました。私は通常字幕での鑑賞でしたが。
〜あらすじ~
養子として引き取られ、血がつながらずとも固い絆で結ばれている兄弟のウィリアムとダニー。
ウィリアムは病気で手術の必要な妻と、生まれたばかりの幼い子どもを抱えており、大金が必要だった。
彼にはダニー以外に頼る相手はいないが、ダニーは強盗などの犯罪に手を染めており、家族のための大金を得る話として銀行強盗作戦への参加を持ち掛けてきた。
3200万ドルもの大金を狙う強盗は金の確保こそうまくいったものの、偶然居合わせた警官のせいで計画は狂い始め、特殊機動隊も現れての銃撃戦となる。
その中でウィリアムは警官を撃ってしまい、その救助にきた救急車をジャックしてなんとか銀行から脱出する。
しかしウィリアムとダニーが救急車とそこに乗り合わせた救命士キャム、瀕死の警官を人質に逃走したことはすぐに知れ渡り、大量の警官隊が出動しての追走劇が始まった。
絶対に家族のもとへ帰るという決意を胸に、ウィリアムとダニーは仲間の助けを借りながら救急車でロサンゼルスの街を奔走する。
感想/レビュー
依然とした作家性はノスタルジーすら生む
一部にアップデートを見せているものの、マイケル・ベイ監督の一貫した作家性は混沌と大量の火薬、叫ばなければ会話のできない人物が詰め込まれた映画を作り出しています。
アップデートの仕方についてもその過剰性を持つという徹底した監督らしさが炸裂しており、彼の絶大な力を感じたゼロ年代がそのまま流れてくるようです。
そこから相変わらずの変化のなさを感じて退屈してしまうか、またはノスタルジーすら感じさせる普遍性に1つの味わいを感じるかは分かれるところです。
感情移入させようと言う試みをホントにしているのかわからないレベルで、相変わらずの人物造形。
ジェイク・ギレンホール、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、エイザ・ゴンザレス3名それぞれがこの役柄の中におもしろい側面を見出そうとしているのはわかります。
しかしあまりに記号的でくどく、時折挿入される妙なユーモアに邪魔されていると思います。
ただきれいな語り口で見事な人物ドラマが展開されたら、それそれで監督らしくなくて嫌ですけど。
アンビバレントな感じもマイケル・ベイらしさ。割り切って楽しむことです。
気に入ったことをやりすぎる
撮影において、望遠も社内の狭い空間も織り交ぜ、いつもの逆行太陽ショットもかましてきますが、一番印象に残るのはドローンでの撮影の部分。
建物の外装に沿って急降下していったり、ある側面に付いてまた別の側面に。
アングルをカット内で変えていくようなグルグルと回転するドローン撮影。監督は相当この新しい技術が気に入ったのでしょう。
入れ込むにしても度が過ぎるほどに多用されています。
ここぞというところではなくやたらめったら使いまくる。良くも悪くもサービス精神過剰。
そんななかでカオスなアクションに拍車をかける編集。
最近というか10年代に入ってからは一連のアクションをある程度カットを割らずに見せていくスタイルが確立され、様々な映画が追従するようにその手法を用いてアクションを展開しています。
しかしマイケル・ベイにそんな潮流は関係ないとばかりに、ブツブツとカットを割り、各カットもスピーディかつカメラも動く。
大混乱ですが、こんな2000年代初期みたいな撮り方を今もスクリーンで見ると、懐かしさすらこみ上げてきました。
相変わらずカオスなアクション
そしてアクション。
逃走劇でありながらも地理的ゴールがわかりづらいというか存在しないというか。
延々と走り続ける感じでした。
躁病的な映画性は診ていると疲弊しますが、まるでジャンクフードのように好きな人は好きですよね。ごった返しのカロリーお化け。
この不健康さや不摂生さを貫くところが私も楽しいと思っています。
車両の投入数やヘリコプターをガンガン飛ばしたりだとか、必要以上に爆発したりモノが吹っ飛んだり。やはり爆発で押し切るところがマイケル・ベイ。
荒唐無稽な脚本にくどすぎる設定、演出。過剰で目の回る撮影に画面情報量過多のアクションシークエンス。
クスリでも決めてないと無理な狂ったエネルギー。
もう57歳になってもなお、昔と変わらない味わいを現在とか周囲関係なしに映像化していく男、マイケル・ベイ監督。
批評家に受けないのももちろん納得ですし、決してきれいでうまいアクション映画でもありません。
ただここまでくると認めざるを得ない作家性はありますし、物理で攻めていく気概はやはり好き。
良くも悪くもいつものマイケル・ベイを楽しむことができる映画でした。
気楽に映画が見たいと言うなら今公開されているラインナップでは良いチョイスです。
興味のある方は是非劇場の大きなスクリーンで。
というところで今回の感想はこのくらいです。
最後まで読んでいただきますどうもありがとうございました。
ではまた。
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