「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」(2022)
作品概要
- 監督:児玉徹郎
- 脚本:鳥山明
- 原作:鳥山明「ドラゴンボール」
- キャラクターデザイン:鳥山明
- 音楽:佐藤直紀
- CGディレクター:鄭載薫
- 色彩設計:永井留美子
- 美術監督:須江信人
- 作画監督:久保田誓
- 出演:野沢雅子、古川登志夫、入野自由、神谷浩史、宮野真守、堀川りょう、ボルケーノ太田 他
人気漫画「ドラゴンボール」を原作として続いているアニメシリーズ「ドラゴンボール超」。
TVシリーズのヒットから2018年には劇場版「ドラゴンボール超ブロリー」を繰り出し今なお愛されるシリーズに待望の新作劇場版作品が登場です。
かつて孫悟空に倒されたレッドリボン軍が復活を企む中、今回はピッコロと彼の弟子であり孫悟空の息子、孫悟飯が活躍します。
監督は「プリキュア」のEDアニメなどを手掛けた児玉徹郎。
声優陣はお馴染みの面々が揃いながら、今回初登場する人造人間役に、神谷浩史と宮野真守、またドクターヘドは入野自由など。
今作は前作であるブロリーなどと異なり、全編フルCGアニメという新しい映像表現に挑戦した作品です。
アニメのようなトーンながらも、3Dで構築されたキャラクターや世界を楽しむことができます。
数年前に超にさらに新作の話があるとされ、脚本には原作者である鳥山明氏が担当と聞き、そこでは今回は意外なキャラクターが活躍するとの話もありました。
実際の予告を見ると、今作は悟飯とピッコロに多くの注目が集まるものになっていました。
公開日に観に行ってきましたが、男子率こそ高いですが、ちびっこから高校、大学生までほんとに今のドラゴンボールは若い世代のものになっているのが分かりました。
~あらすじ~
サイヤ人の生き残りブロリーとの激闘からしばらくし、平和な地球には新たな悪が誕生していた。
かつて孫悟空が少年期に壊滅させたレッドリボン軍。
その後は人造人間、人造生命体セルを繰り出しながらもやはり悟空たちに敗北を喫していたこの組織が再び暗躍していたのだ。
レッド総帥の息子マゼンタは、ドクター・ゲロの孫ドクター・ヘドを招き、新たな人造人間の開発と悟空たちの抹殺を計画。
はじめに襲撃を受けたピッコロはうまく回避した後に秘密基地への潜入に成功し、さらに恐ろしい人口生命体の存在を知る。
遠い世界で修行中の悟空とベジータには連絡が付かない中、ピッコロは自らの潜在能力の解放と、さらに秘めたる力を持っている孫悟飯の覚醒に賭けることにした。
感想/レビュー
思い切った踏み込みを見せている今作は、映像面では3Dモデリングによるアニメーションの挑戦を、そして脚本としてはまさにセル編に近しい世代交代のような悟飯主軸となる話運びを見せています。
リフレッシュの意味で良い着目
これまでドラゴンボール超の中で孫悟空とベジータの成長や到達点を極めており、前作でもドラゴンボールの強い要素である”サイヤ人”を突き詰めていく内容でありました。
その点今回は受け継がれていく力や、豊富なキャラクターから新しい一面を切り出したと言えます。
もちろんインフレを進めていく悟空とベジータに対して、ほかの主力であったいわゆるZ戦士たちを強化することは今後にもつながるのでしょうけれど、なかなかフィーチャーされなかったキャラにこうして次のステップが示されるのは新鮮です。
単純にフレッシュです。
着目する点としては正解だったと思います。
随所にはセル編を彷彿、いやオマージュしたり呼応するような内容、シーンがありますし、フレッシュさを感じるには過去を知る必要があるので、(いないと思いますが)これからドラゴンボールを見始めるのは無理です。
その点を理解して、愛あるファンに向けての新しいチャプターになっています。
映像的にはゲーム調
今回の3Dモデリングですが、まずその意義については自分はあまり分からなかったです。
一部の階層についてはこれまでのようなアニメを使用していますが、基本はGCモデルです。
もちろんそこからくる立体的な演出というのは随所に見られそれはある意味でアニメではあまり意識しないワンカットという考え方を呼び起こします。
また開けた世界を眺めるような視点などもあり、そういった点では新鮮です。
とはいえ私としてはどこかゲームのような感覚が否めません。3Dモデリングされていて空間を意識するからでしょうか。
ゲーム的なのはその映像だけではないのです。
実は特に最終決戦の部分に思えるのですが、ゲームの大ボスミッションぽいなと。巨大な敵に対して縦横無尽に飛びながらチームで戦うという点がです。
今回は衣装チェンジというような要素もあり、また新たな変身の要素に関しても特にピッコロなんかはMOD入れたりカラーチェンジさせたような感じがします。
いい意味でも悪い意味でもキャラデザインはアバター生成されたキャラクターのようでした。
その感覚こそが現代的なタッチであるのかもしれませんが、残念ですが、自分にはあまり合わなかったかなと思います。
新たな悟飯の変身も観ることができますが、そちらについても海外での同人っぽさとかすら感じます。
ここは完全に好みですが。
好みでいえば今作のギャグテイストもくどく感じます。
本来止めるべきところで止まらずに一歩踏み出してしまっているようなしつこさがありました。
論理的な示しがなく盛り上がれない
さて、肝心なところで私がひっかかってしまいあまり今作にノレなかったのが脚本です。
いかんせんロジック不足というか。
まずもって神龍に頼めばあのように気軽にパワーアップができるという処理で良いのか?(ドラゴンボールにおいて神龍に頼んで根本から解決しようとしたことってほぼなかったと思うので)というのも気になります。
この時代にヤラセとは言え、”無理に誰かを怒らせる”行為を描いてしまうのも違和感があります。いや、ヤラセだからこそ微妙かも。
どっきり系YouTubeの流れかと勘繰ってしまいました。
悟飯の超パワーアップも、何がどうなってるのかよくわかりません。
「復活のF」においては、神の力を得た状態での超サイヤ人化→ブルーという説明がありました。
今回の悟飯は混血のサイヤ人と地球人のハーフにおける、どんな変身という位置づけでしょうか。
戦いの構成的には違和感がなく進んでいたので、ちょっとその分気になってしまいました。
ピッコロが主役というべき感じとか、悟飯、そしてパンとの師弟関係。またヘドとガンマ1号、2号の関係性に見える切なさなどドラマ部分に良い面もあります。
やはり最近のサイヤ人の極まりに対しては本当にフレッシュな話になっています。
それぞれの声優陣も盛り上げてくれていますし、やはり野沢さんのシャウトと、悟飯による魔観光殺法は痺れますね。
この世代にもう少し横のつながりが欲しかった
ただもったいなく感じたのは、孫悟空の時代から継承した位置にあるキャラクターの横のつながりが薄い点です。
レッド総帥の息子マゼンタ。
孫悟空の息子、孫悟飯。
ピッコロ大魔王の息子であったピッコロ。
さらにドクターゲロの孫ドクターヘド。そして彼を親として生まれた息子たちガンマ1号、2号。
こうしてみると、下の世代が集結しています。
親の因果によってぶつかることになったという点で非常におもしろい宿命であり、さらに悟飯には戦いを好まないという面まであるのです。
ここでもし、親の因果があれど、子どもたちは戦いを望まないなどあれば、興味深かったかなと思います。
まあただの妄想でしかないのですが。
CGで固定化されているだけに、見やすくありながら実は自由さは欠けてしまうアニメで、もちろんグラフィック上細やかさは段違い。
まだまだ進化の余地も感じる映像体験と、やはり往年のファンにはグッとくるような演出は安心して楽しめる作品です。
総合的には煮え切らない感じもありますし、一貫性のテーマが見えにくかった印象の映画でした。
正直観に来ていた子どもたちが楽しそうだったのでそれで十分かと思います。
ドラゴンボールファンの方はまあ言わなくても行ってると思いますが、ぜひ劇場の大きなスクリーンで鑑賞を。
というわけで今回の感想はここまでです。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。
ではまた。
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