「ヒックとドラゴン」(2010)
- 監督:ディーン・デュボア、クリス・サンダース
- 脚本:ディーン・デュボア、クリス・サンダース、ウィル・デイヴィス
- 原作:クレシッダ・コーウェル
- 製作:ボニー・アーノルド
- 製作総指揮:クリスティン・ベルソン、ティム・ジョンソン
- 音楽:ジョン・パウエル
- 編集:ダレン・T・ホームズ
- 出演:ジェイ・バルチェル、アメリカ・フェレーラ、ジェラルド・バトラー 他
ドリームワークスによる長編アニメーション映画で、公開直後の成績は振るいませんでしたが、口コミで人気が広まり、5週目に1位に返り咲いた映画。
アカデミー賞にはアニメと作曲でノミネート。同年に「トイストーリー3」が無ければ・・・!
日本での知名度はどのくらいでしょう?友達に貸してあげると傑作と言ってくれますが、前から知ってた人はいなかったです。
私にとってはアニメ映画のベストを争う作品で、「アイアン・ジャイアント」(1999)や「ファンタジア」(1940)などと並んで好きな1本。
サントラやアートブックも買うほど好きです。
北のバーク島。そこに住むバイキングたちは長年ドラゴンと戦っていた。
少年ヒックはいつか偉大なバイキングになろうとするが失敗ばかり。
村のリーダーで父のストイックも手を焼いていた。
ある夜のドラゴン襲撃時に、最も危険なドラゴン、ナイト・フューリーをヒックは自作の機械で捕獲に成功。
森の中に墜落したフューリーを見つけ、殺して力を認めてもらおうとするヒック。
しかし、ヒックにはどうしても殺すことができなかった・・・
まずアニメーションとしてですが、生き生きとしたドラゴンたちの挙動は動くことで命を持っています。
質感やバイキングたちの髪、ひげなども素晴らしい。
もともと電気などのない世界ですから、陽や月、炎などもより美しく。
海、森の木々とそして何より空といった自然が堪能できます。
特に空をドラゴンに乗って飛行するのは、その上下感覚を失うカメラワークと背景の美しさにとても神秘的に思えます。
やはりヒックとアスティの空中デート”Romantic Flight”はその音楽含め心現れる名シーンの一つでしょう。
名シーンは数多くありますが、それを支えるジョン・パウエルによる魅力的な音楽はもちろん、そのシーンにおける自然な流れに私はとても感動しました。
有名なテスト飛行”Test Drive”ではその飛行スピードに加え、余裕がなくなってメモを捨てる→そしてヒックがドラゴンライダーとして才能を見せるという流れが良いです。
さらに”Forbidden Friendship”を代表するドラゴンと人間という2つの種が近づくシーンの数々。
盾が岩に挟まる、心臓の音を聞くため兜を取るなど自然な敵意の解除が見事です。
またヒックとトゥースの触れ合いでは、地面の線を踏まないように移動したらそのままドラゴンの前に行ってしまう。
とてもその関わり合いや近づきに自然な流れが用意されていて本当に感動です。
さて、話は人間とドラゴンの共存になります。
長らく対立し、ドラゴン=敵であるバイキングにとってはヒックとトゥースの関係はご法度であり革命です。
恐ろしい、でももしかしてそれは違うのかも?
敵と思っていたのはお互い。でも憎まなければ、恐れなければパートナーになれる。
でも父ストイックはまさにマチズモの典型(声がレオニダス王ですし笑)。
バイキングはドラゴンを殺す。それを考え、そのために強くなれ。
父と子の食い違いと愛が見ものです。
ドラゴンと人間。その関係を良いものにするために直面した巨悪。
正直昨今のCGでなんでもできると知ってるとしても、今回の敵には驚きです。まさに災悪が翼をもって飛ぶのです。
その戦いはもう神話的な威厳と美しささえありました。
私は戦いのロジックにも、前半のドラゴン訓練やら端々の言葉が組み込まれているのには感心でした。
音楽の盛り上がりと映像、カッコよさそして人物の感情。すべてが集約し涙が出そうな場面でした。
人間とドラゴン。傷つけることをやめ本当の意味で同じ世界に生きていく。
他者、未知のものに優しさをもって邂逅する大切さを伝えてくれます。
それは普遍的な課題ですね。
しかしどうしても向かっていかなければなりません。
はぐれもので出来損ないと思っていたヒックと飛べなくなったトゥースにより巻き起こる革命。
なれない自分に無理にならなくても、こうして世界を変えていけるんですね。
素晴らしいアニメーション、音楽、お話に愛せるキャラクターたち。
私の中でベストと言っていいアニメ映画のレビューでした。
2の公開、諦めずに待ってますよ~頼みます。
それではまた。
コメント