「FALL/フォール」(2022)
作品概要
- 監督:スコット・マン
- 脚本:ジョナサン・フランク、スコット・マン
- 製作:ジェームズ・ハリス、マーク・レイン、スコット・マン、クリスチャン・マーキュリー、デヴィッド・ハリング
- 製作総指揮:ロマン・ヴィアリ、ジョン・ロング、ダン・アスマ
- 音楽:ティム・デスピック
- 撮影:マグレガー
- 編集:ロブ・ホール
- 出演:グレース・フルトン、ヴァージニア・ガードナー、ジェフリー・ディーン・モーガン、メイソン・グッディング 他
地上600mのテレビ塔の頂上にとりのこされてしまった二人の女性のサバイバル映画。監督はスコット・マン。
主演は「シャザム!」などのグレース・フルトン、また「最高に素晴らしいこと」などのヴァージニア・ガードナー。
その他「ウォーキング・デッド」や「ウォッチメン」などのジェフリー・ディーン・モーガンが主人公の父役を演じています。
北米で昨年の夏ごろに公開され、ネット上では評判を聞いていた作品。日本公開はアやや遅れてしまいましたが、劇場で観れるようになったので鑑賞してきました。
公開した次の週末で朝一の回だったのですが、割と人は入っていました。
規模や箱が小さいこともあるのでしょうけど、結構混んでいるみたいですね。
~あらすじ~
ロッククライミングの事故で夫を失ったベッキー。
喪失は彼女を打ちのめし、酒におぼれた自堕落な生活を1年余り送っている。
父はそんなベッキーを心配し、次へと進むように励ますが彼女の心の傷は深かった。
そんな時、以前ロッククライミングに共に挑戦していたハンターが、クライミングチャレンジに誘ってくる。
それはアメリカの建造物で番目に高いとされている600mのテレビ塔への登頂。
動画配信で人気を集めているハンターにとっては恰好のネタであり、またベッキーが何かに挑戦し恐怖を克服すれば、夫との別れを受け入れられると感じていた。
気の遠くなる高さの塔を着実に上り、ついに頂上に来た2人だったが、帰るためのはしごが崩落してしまい、地上600mの鉄塔の上に取り残されてしまった。
感想/レビュー
ワンシチュエーションの脱出ホラー。
映画ジャンルの中ではこれまでにもこういった取り残され系の映画は多くあります、海の上に海底、洞窟から雪山など・・・
その中でもこの鉄塔の上はかなりスペース的にも限られた設定を持っています。
選択肢をある程度絞り込むことで、少ない要素を観客と共有しながら、サバイバルを楽しむことができます。
心理と設定の組み合わせ
塔と人物のドラマもある程度うまくリンクしていたと思います。
ベッキーもハンターも、ダンの喪失に囚われている。何かに執着し抜け出せないまま、一人は逃避の旅に出て、一人はふさぎ込んだ。
このテレビ塔でのシチュエーションがそのまま二人の状況にも重なっています。
大きな事件しかも高い場所というものが人生を占めてしまう。そこからなんとか抜け出そう、脱出しようとする。
ダンの死を振り払ろうとするベッキーとハンターにとって、この塔そのものが大きなメタファーになっています。
高い塔の上、恐怖でしがみついてはしまうけれど、しかししがみついていては生は訪れないのです。
手に汗握る体験
というわけで意味もなくではなく、しっかりとドラマと並行させた設定で送るサバイバルスリラーですが、肝心のスリリングさも素晴らしかったです。
高所恐怖症の人は鑑賞にあたっては注意が必要だと思いました。
もちろんCGを使っての部分もあるわけですが、今回の撮影では実際に30mほどの塔を建てたらしいです。その塔自体も山の上に作ったらしいので、背景に見える広大な土地なんかは実際のものになっています。
たまに引きのショットで二人が高いところにぶら下がっているのを示しますが、こうしたプラクティカルな試みが効果的。
音響や撮影による臨場感、ある程度の高さを持ったセット撮影によって観客を完全にこの塔の上に放り込んでしまいます。
鑑賞中についつい手汗が止まらなくなり、そしてベッキーたちが体勢を変えるだけで、すこし身を乗り出すだけでヒヤヒヤする。
このスリリングさを、逃げ場のない映画館で見るということだけでも良いものでした。
死とトラウマをその身に
縋りつくことはできず、手を放していかなければ。ベッキーにとってのトラウマ的象徴が、ハゲタカです。
ダンがOPで死亡してしまうとき、その原因になったのは鳥の巣でした。鳥の巣にアンカーを打ち込もうとしてしまい、飛び出してきた鳥に驚き落ちてしまった。
鳥はダンの死を呼び起こすものになっています。
テレビ塔のふもとでは、まだ死んではいないが弱った野良犬を、ハゲタカがつついています。
死にぞこないの状態で死につつかれている犬は、まさに生きているけど人生を生きていないベッキーそのもの。
このテレビ塔で倒すべき敵というと、鳥でしょうね。だからこそ、ベッキーは死とイコールである鳥を叩き潰し食らうことで自らのものとするわけです。
斬新なスリラーというわけではないですが、タイトな時間の中でドラマ性も味付けした良質なスリラーでした。
さくっと楽しむという意味では一人でも友人とでも観に行きやすいタイプの映画です。
今回の感想は短めですがここまで。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
ではまた。
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