「砂塵」(1939)
作品概要
- 監督:ジョージ・マーシャル
- 脚本:フェリックス・ジャクソン、ガートルード・パーセル、ヘンリー・マイヤーズ
- 原作:マックス・ブランド
- 製作:ジョー・パスターナク
- 音楽:フランク・スキナー
- 撮影:ハル・モーア
- 編集:ミルトン・カラス
- 出演:ジェームズ・スチュワート、マレーネ・デートリヒ、ブライアン・ドンレヴィ、チャールズ・ウィニンガー、ミシャ・オウア 他
「西部開拓史」などのジョージ・マーシャル監督が1939年に送り出した西部劇。
ギャングが支配する治安の悪い街に新たに赴任してきた保安官代理の奮闘をコメディ交じりで描きます。
主演は「ウィンチェスター銃’73」などのジェームズ・スチュワート。
また「舞台恐怖症」などのマレーネ・デートリヒがキャバレーのボスである女性を演じています。
この作品は製作された少し前の「ミックスの再起」(1932)のリメイクになっているらしいです。さすがにそちらを鑑賞したことはないのですが。
アマプラでクラシック作品を眺めている中で、ジミーとマレーネ主演ということで惹かれてみてみました。
〜あらすじ〜
西武の町ボトムネック。
中心部にある酒場には多くの人が集まっていた。
キャバレーのボスとしてショーに出ているフレンチーはここのボスのような存在であったが、その裏には詐欺や暴力に手を染めた本当のボス、ケントがいる。
ある時不正なギャンブルでケントは農民から牧場と家を巻き上げてしまい、それを知った保安官が単身で酒場に乗り込むと、ケント一味は彼を殺害してしまう。
下手な正義感を持たないと、新しい保安官には酔っ払いのウォッシュが選ばれ、本人はやる気だがみんなにバカにされている。
ウォッシュは自分の保安官代理として、有名なデストリー保安官の息子であるトム・デストリー・ジュニアを任命するが、やってきた肝心のトムは銃すら携帯しない男だった。
感想/レビュー
キレのいい脚本
素晴らしくおもしろい。
上映時間は90分ほどでタイトですが、風合いの絶妙なコメディが入った、しかし正義と仁義の混じった脚本、そして魅力的な人物たちが楽しめます。
かなり昔の作品であるため、ここに出てくる型というのは後生にも影響があるのかなと感じました。
エンタメの定形的な、噂が先行しつつはじめは笑われてしまうヒーロー。いざというときに凄まじい技術を見せるカッコ良さ。
ワクワクする話です。
ダイナミックに映すカメラ
先に少し言及したいのですが、これはセット内でのカメラの動きが印象に残りました。
メインの舞台になっている酒場の中、入り口から歩いて入ってくるトムを追いかけるカメラはかなり長回しで横移動します。
街の通りを抜けるときも同じです。人が大勢押しかけたり、またみんなでダンスしたり。
そういった大きなうねりや動きを余すことなくダイナミックに撮影しています。
魅力的な登場人物と洒落た会話
主演のジェームズ・スチュワート。彼はジョン・ウェインのようなマッチョタイプではないですね。
高身長のスラッとしたシルエットがカッコいい好青年。
パラソルと鳥かごを持って馬車から降りる姿自体がコメディになりますが、彼がうまくこのトムを着こなしています。
決して軟弱物ではなく、いや強いからこそ、少しのからかいにも脅しにも柔らかく対処する。
ジミーにぴったりな役柄でマスターしていました。
銃を嫌い法と秩序を信じる姿は、はじめはウォッシュにも馬鹿にされてしまいますが、徹底した心の強さには観ているこちらも含めて引き込まれていきます。
トムが繰り出す友人を例にしたたとえ話。
どれもが粋で印象深い。
また今作では強烈なフレンチーを演じるマレーネ・デートリヒも良かったです。
英雄の再誕と女性の力
飾り立てられたフレンチーの心の奥を見透かし、それを化粧を落とせと諭すトム。
ウォッシュがやられてからの展開は銃を持たない男が再び立ち上がる熱さに満ちていました。
また、最終幕ではこれまで悪い男たちに翻弄され、愚かな男たちにあきれていた女性たちが徒党を組み悪の根城を破壊していく。
なんだか現代にも通じる描写でした。
シンプルに面白い!とお勧めできるスマートな作品。機会がある方はぜひ鑑賞を。
今回はここまで。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ではまた。
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