「ゴジラ-1.0」(2023)
作品概要
- 監督:山崎貴
- 脚本:山崎貴
- 製作:山田兼司、岸田一晃、阿部豪、守屋圭一郎
- 製作総指揮:市川南、臼井央、阿部秀司
- 音楽:佐藤直紀、伊福部昭
- 撮影:柴崎幸三
- 編集:宮島竜治
- 出演者:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介 他
日本の特撮怪獣映画の傑作「ゴジラ」が誕生してから70年を迎える節目の作品。
日本で制作された実写ゴジラ映画としては30作目にあたります。
ヒット作「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠の0」「寄生獣」などを手がけてきた山崎貴が、監督・脚本・VFXを担当。
連続テレビ小説「らんまん」で夫婦役を演じた神木隆之介と浜辺美波が主演を務め、その他には山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介など、実力派の豪華な顔ぶれが共演しています。
正直日本映画ってあまり見ていなくて、怪獣ということでゴジラは観ていたかなくらい。でも今回は公開時期がTIFFらへんだったりその他忙しく未鑑賞のままでした。
24年になってからはモノクロに色を調整したバージョンも公開されている中で、初めてやっとこさ通常のカラー版を観てきました。
特にサービスデイとかでもないんですが、日比谷TOHOのIMAXでほぼ満員レベルで観てきました。
~あらすじ~
第二次世界大戦末期の日本、特攻隊の兵士・敷島浩一は零戦の故障を装い、大戸島に不時着。
そこで彼は恐竜のような伝説の生物「呉爾羅(ゴジラ)」に遭遇し、基地の仲間たちと共に襲撃を受ける。
敷島はゴジラに対抗するため零戦からの射撃を頼まれるも、恐怖に飲まれて何もできず、基地にいた整備士たちは皆殺しにされてしまう。
ここから敷島はトラウマと戦争の影響で苦悩し続けることに。
戦後、彼は東京で空襲で家族を失った女性・大石典子とその養女・明子と出会い、共同生活を始めた。
敷島は機雷の撤去作業に従事し、新たな仲間と出会いながら、戦争の傷と過去のトラウマと向き合っていた。
一方ゴジラもビキニ環礁での核実験で巨大化し、敷島は再びゴジラと向き合う運命に向かっていく。
感想/レビュー
ゴジラはなんども映画化されていて、正直毎年のように観ている気すらします。
ただ日本産の国産ゴジラは実は2016年の「シン・ゴジラ」以来ということで7年は空いているんですね。
まあこの辺は今モンスターバースを展開しているレジェンダリーとの権利関係らしく、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」や「ゴジラVSコング」など、あちらのゴジラが出てくる映画が公開されているときに、日本でもゴジラを製作、公開をすることは契約上できないらしいです。
そんなわけでアメリカ産のゴジラが他の怪獣たちとプロレスをしていたころに、奥深くで育ちついに姿を現したゴジラ。
これは初代のゴジラを強く意識した化け物になっています。
核、戦争。破壊と殺戮の権化。恐怖。
とにかく恐ろしく、人を絶望の淵に叩き込む、終末の獣としてのゴジラがそこにいました。
その恐ろしい象徴としてのゴジラであれば、「シン・ゴジラ」も同じものです。あのゴジラは日本人が潜在的に恐怖として抱え続けている大災害として存在していました。
しかし決定的に違うのは、「シン・ゴジラ」が”ゴジラVS日本(国)”であったなら、今作は”ゴジラVS日本人”といったところでしょう。
時代設定の中で、終戦直後ゆえに日本政府は機能できていない。軍は解体され、火力でのゴジラへの対抗策がない。
そしてGHQ、アメリカ軍も世界情勢の中で動いてくれない。
完全に民間にゆだねられた状況というのは、まさに日本人を象徴していると思いますし、現代の日本にも通じるテーマを見て取れました。
システムを頼れない状態で、人々は何をするのかにフォーカスしているので、より人間ドラマの展開に集中できる仕組みになっています。
この、人が自力でっていうのは、悲しいですが現代日本にも刺さりますね。
コロナ感染症の蔓延に対して後手に回り何もできず、PCR検査や発熱外来、あらゆる面で民間が頑張っていたことを覚えている方も多いでしょう。
政府の機能不全と自分たちでやるしかないという感覚がゴジラという怪獣映画のフォーマットで提示されているように感じました。
実際にゴジラと戦うというシーンにおいて、その驚異的なCGモデリングも楽しめます。
ゴジラ自身の造形だったり、昔の日本の街並み、破壊などもそうなんですが、やはり海です。水。
「ジョーズ」を思わせるような最初の機雷駆除船でのゴジラとの戦い。海の怪物から逃げるピノッキオのごとき恐ろしさもありながら、CGのレベルが高い。
水の表現は難しいらしいですが、臨場感も含めて圧倒的な映像レベルでした。
撮り方という点においても、序盤の島のシーンはワンカット風であったり、海でも交通整理されていたりと何をしているのかも見やすいです。
銀座の破壊シーンについても、また初代ゴジラへのオマージュである電車をゴジラが加えるシーンでも、映像的な迫力が光ります。
電車のシーンはこれもまた見せ方を、車内にいる人の視点に変えていたりとフレッシュでした。
ゴジラとの戦いに関してもあの深海魚の下りが、最後の倒し方にも組まれていたりしておもしろい。
演者の皆さんも良かった。
正直演出という点においては日本映画らしいと言えばらしい、セリフ説明的な描写が多く好きにはなれません。
敷島が逃げてきたことを、その葛藤をそのままセリフで言わせてしまうのは何というか、映像言語的な意味で映画らしくはない。ちょっとくさい演出も苦手。
でも神木隆之介さんの演技は、おびえて逃げる青年から、黒い雨を浴びて心も黒く染まり切った後の変化など素晴らしい。
また現代の俳優の中で稀有な、昭和の綺麗な女性感をそのまま出せている浜辺美波さんもすごい。ほんとに昔の映画に出てくるヒロインのルックを持っていました。
敷島に憎悪の目線を送り付けている、序盤の青木崇高さん演じる橘さん、そして安藤サクラさん演じる澄子。彼らの表情の変化もすごい。
本筋には、どこかに抱えた罪悪感を乗り越えていくストーリーが置かれています。
敷島は逃げ続けてきた男で、ゴジラというモノが乗り越えるべきけじめとして出現し立ち向かう。
逃げの着陸から始まって、決戦の離陸のショットが呼応する。
リデンプションのような中で、人命を軽視した戦争の指名からアップデートし、生き抜いていくことを示すのはいいものでしょう。
「シン・ゴジラ」は災害や原発をテーマに置いたため、立ち向かうとしても共存とかでしたが、今作は乗り越えるということで、敷島VSゴジラで相手を絶対に殺すという殺意のカタマリ感がありました。
完璧な映画とはいかずとも、これは十分にたのしめて素晴らしいゴジラ映画でした。
今回はここまで。
ではまた。
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