「僕たちのラストステージ」(2018)
- 監督:ジョン・S・ベアード
- 脚本:ジェフ・ポープ
- 製作:フェイ・ウォード
- 製作総指揮:ケイト・ファスロ、ジョー・オッペンハイマー、ザヴィエル・マーチャンド、クリスティン・ランガン、エウヘニオ・ペレス
- 音楽:ロルフ・ケント
- 撮影:ローリー・ローズ
- 編集:ウナ・ニ・ドンガイル、ビリー・スネドン
- 出演:スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー、シャーリー・ヘンダーソン、ニナ・アリアンダ、ダニー・ヒューストン 他
「フィルス」のジョン・S・ベアード監督が、実在のコメディアン、ローレル&ハーディを描く伝記映画。
お笑いコンビをそれぞれ、スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリーが演じます。
またそれぞれのパートナーである女性たちは、シャーリー・ヘンダーソン、ニナ・アリアンダが演じています。
サイレント期からトーキーへの以降まで大人気だったコンビということですが、私は二人を今作まで知りませんでした。
単純に予告が良かったことや評価が高かったことで観に行った訳です。
地元に新しくできたミニシアターで、GWだったので混んでいました。ちょっと年齢層は高め。
1930年代、お笑いコンビのスタン・ローレルとオリバー・ハーディは、その人気の絶頂にいた。
二人は色々なスタジオから引っ張りだこで、たくさんの映画に出演し時の人だった。
しかし時は流れ、1950年代にもなると、二人の人気は低迷しており、スタンは再起をかけてイギリスツアーを計画、その成果次第では映画の製作の話も進めていた。
しかし、相棒のオリバーの病気やずっとスタンの中に残っていたあるしこりが、二人の関係を壊していく。
有名なお笑いコンビのスクリーン復活へのお話。
それはこの2010年代に、素晴らしいスティーヴ・クーガンとジョン・C・ライリーの演技と監督の手腕によって見事にスクリーンに戻ってきたことと重なります。
この時代を築いたコメディアンへの敬意を持ちながら、彼らのギャグを大切にし、素敵な友情まで含めて大きな画面に呼び戻してくれる。
監督や制作に関わるみんなの、ローレル&ハーディへの愛がとても感じられ、ノスタルジックな暖かさに終始笑い、そして最後には涙しました。
この時代への引き込みに関しては、冒頭の超ロングカットがすごかったですね。
世間話をしながらスタジオを歩き、周りではいろいろな人が動き回る。そしてセット内まで入っていき、舞台裏から撮影開始まで進む没入感はすごい。
一気に1939年代に飲み込まれます。
そして何にしても人物が生き生きとしています。
スタンもオリーも、奥さんたちルシルとイーダも。人物の造形が非常に良いです。
人間関係はコンビのコントと重なり語られていきます。
ホテルでの荷物のドタバタや階段を落ちていくスーツケースなどコメディが現実と融合するのも楽しいですが、ベッドに並ぶ二人などのシーンは、心温まる舞台演劇にすら思えます。
原題はスタン&オリー。コンビ名であるローレル&ハーディではありません。
なぜならこれは、お笑いコンビの話ではないからです。これはスタンとオリバーという二人の男の友情の話。
替えがたいパートナーのお話です。
今作はオープニングで、二人の離婚話から始まります。パートナーとの別れですが、愚痴を言い合うお互いがいる。
この二人を映し出す、舞台シーンは常に観客側からの視点でしたが、ラストステージは舞台上、スタンとオリバー側から語られますね。
表から観る二人(コント)はすれ違う。それは現実でもそうでしたが、やはり裏(セットの裏)では、お互いに大切に思っていたわけです。
それがここでも、ローレル&ハーディというギャグコンビと、スタン&オリーという二人の男性という人間関係がクロスしていて巧いです。
たった一度の行為、ビジネスなら仕方ないことです。
ですがそれは、ローレルには良くてもスタンには耐え難かった。長い間抱えるほど、オリーを大事なパートナーと思っていたんです。
伝説のコメディアンをスクリーンに蘇らせただけでなく、彼らのコントを通し友情を語る。
現実と演出が重なる瞬間は魔法のようで、3組のカップルが愛しい。
ノスタルジックな柔らかさと笑い、すごく繊細で素敵な作品でした。
感想はこのくらいになります。最後まで読んでいただきありがとうございます。
それではまた次の記事で。
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