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「ラッカは静かに虐殺されている」”City of Ghosts”(2017)

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rbss-movie-city-of-ghosts-2017 映画レビュー
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「ラッカは静かに虐殺されている」(2017)

  • 監督:マシュー・ハイネマン
  • 製作:マシュー・ハイネマン
  • 製作総指揮:アレックス・ギブニー
  • 音楽:ジャクソン・グリーンバーグ、H・スコット・サリナス
  • 撮影:マシュー・ハイネマン
  • 編集:マシュー・ハマチェック、マシュー・ハイネマン、パックス・ワッサーマン

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シリアのラッカにて、イスラム国(IS)の侵略を受ける市街の様子を発信する市民ジャーナリストグループRBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)を追ったドキュメンタリー。

監督は「カルテル・ランド」や「プライベート・ウォー」のマシュー・ハイネマン。

今作はサンダンスにて上映され非常に高い評価を受け、アマゾンスタジオが買い取り劇場公開。日本でも2018年に公開されていました。

当時は見逃しましたが、現在(2020/4/9)Amazonプライムビデオにて配信されていたので初鑑賞してみました。

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圧政を続けるアサド政権に対し、シリア内部では反政権勢力が興り、政権側との衝突が激化していた。

そして混乱のなか、シリアのラッカに、黒づくめの武装勢力が入り込む。

自らを”イスラム国”と名乗る彼らはアサド政権からの国民の解放を叫ぶが、次第に拷問や虐殺を繰り返すようになった。

一市民として、その様子をスマホのカメラなどで撮影し、シリアの外へ発信する団体”RBSS”(ラッカは静かに虐殺されている)はここから活動を開始。

しかし、イスラム国はRBSSを反イスラムの反逆者とし、創設メンバーらの殺害に乗り出す。

これはRBSSとして活動する者のイスラム国との戦い、そして故郷の今を世界に伝えようとする戦いの記録。

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マシュー・ハイネマン監督は、政治的に複雑で、かつ多国に渡る宗教やテロリズム、そして10年代において長い期間続く問題を、非常に丁寧にしかし簡潔に整理し伝えています。

含まれる問題や要素は、テロリズムで言えば武装勢力だけでなく、ホームグロウンテロリストを含み、メディア戦争、移民とその排斥など多岐に渡ります。

普通に観ているだけで、シリア情勢やテロリズムの時代、欧州の激変と移民問題までがとても分かりやすく伝えられており、それだけで、”今、何が起きているのか”を発信するRBSSの役割を見事に果たす作品です。

しかし同時に、RBSSの創設メンバーを主人公として、けっして彼らから離れることのない密接な関わり、立ち位置が、この作品と描かれる問題を身近に、そして感情的に触れるものともしているのです。

ともすれば教科書的になったり、やや距離をおいたニュースになりそうなところ、とても個人的に感じるのです。

これは現代のシリアのドキュメンタリーであり、RBSSとISISの戦いの記録でありながら、同時にラッカを故郷とする人々の人生でもあるのです。

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自分の人生を普通に送っていた彼らに起きたISという事件。

故郷を地獄へ変えられ、去ることを余儀なくされた。

自分から海外に移住したわけでもキャリア形成でも、出張でもない。

故郷にいられなくなったのです。

友人と連絡をとり、家族を想う。ドイツの夜道、雪で遊ぶ彼らは本当に仲のいい友人たちで、生を楽しんでいる。

ただ、本当は故郷で楽しく過ごしたかったでしょう。

そんな彼らを常にセンターとするから、自分の友人を失うように、メンバーの死がつらい。

軍人でも政治家でも民兵でもない、一市民ですから。

しかし、一市民であることがここでは重要です。

AKライフルやミサイルを買えなくても、今まさに手にしているスマホのカメラが、テロリズム、暴力への反抗の武器なのです。

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恐ろしいメディア戦争は、ISISを強くしました。

彼らは処刑や襲撃、暴力をゲームやスリラー映画のように編集しエンタメに変えました。

残虐な行為を覆い隠し、誘因性を強めたのです。

それに対抗するのは、同じ行為の別バージョンと言っていい、市民による撮影です。

切り出される同じ事象をこの2つのソースで見たとき、真実が見えるはずです。

自分の父が、まるで映画のワンシーンのように編集された(非常に巧く構成されスリリングなのが腹立たしい)ビデオ映像で殺されるのは想像を絶する経験です。

それでも内外で戦いを続ける。

勇気あるこの市民記者たちを描きながら、この作品は強く、私たちが何を求められているのか示します。

移民の排斥はもってのほか。

しかし、彼らを保護するだけでは足りない。ましてやRBSSを称えるだけではいけません。

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OPに戻ってくる形をとる今作で、観客の頭に残るのは、NYCの立派な会場にてカメラを向けられる姿。

「表情が硬い。笑顔で。」というカメラマンに、虚ろな目で笑うことができない。

RBSSを追い再びNYCのスピーチに帰るとき、その理由が分かります。

笑えるわけがなく、称賛や授与は実際検討外れ。本当にすべきは支援や排斥活動の停止。

我々が何をすべきか真に考えなければいけません。

重苦しい中でも、個人的にはやや希望も感じます。

それは小さな一市民だとしても、メディアを使えばテロリズムに対抗できること。

ひいては理不尽、暴力、圧政に抗うことができるのです。

RBSSは自分にその力を知らせてくれた存在として感謝もしたい。

とても分かりやすく、個人的で、恐怖への立ち向かい方を真摯に示すドキュメンタリー。

必見だと思います。この記事執筆時点ではAmazonプライムビデオにて鑑賞できますので、コロナ自粛の中でひとつ候補にしていただきたい作品です。

ちょっと長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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