「ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック」(2023)
作品概要
- 監督:ジェフ・ロウ、カイラー・スピアーズ
- 製作:セス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ、ジェームズ・ウィーバー
- 製作総指揮:ラムゼイ・マクビーン、ジョシュ・フェイゲン
- 脚本:セス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ、ジェフ・ロウ、ダン・ヘルナンデス、ベンジー・サミット
- 音楽:トレント・レズナー、アティカス・ロス
- 音楽監修:ゲイブ・ヒルファー
- 出演:マイカ・アビー、シャモン・ブラウン・Jr、ブレイディ・ヌーン、ニコラス・カンティ、ジョン・シナ、ジャッキー・チェン、アイス・キューブ、ローズ・バーン、ポール・ラッド 他
ニューヨークを舞台にカメの忍者4人組の活躍を描き高い人気を誇る「ミュータント・タートルズ」を、アメコミタッチの新たなビジュアルで映画化した長編アニメーション。
監督はアカデミー長編アニメーション賞にノミネートされた「ミッチェル家とマシンの反乱」で共同監督を務めたジェフ・ロウ、またコメディアンで俳優のセス・ローゲンがプロデューサーとして参加しています。
声の吹き替えにはマイカ・アビー、シャモン・ブラウン・Jr、ブレイディ・ヌーン、ニコラス・カンティと実際に10代の俳優たちが起用されています。
この辺に今作の持っているティーン青春映画らしさがありますね。
その他ヴィランをアイス・キューブが演じていたりと、結構豪華な俳優たちがそろっています。
あまりタートルズに思い入れはないのですが、今回は予告編でのアニメ表現にひかれて鑑賞してきました。
「ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック」公式サイトはこちら
~あらすじ~
ミケランジェロ、ドナテロ、ラファエロ、レオナルドは、不思議な液体「ミュータンジェン」に触れたことで変異し、ミュータントとなったカメたち。
普段は目立たないように、地下や路地裏に身を潜めながらも、年頃の彼らは普通のティーンエイジャーと同じように生活している。
彼らは学校に通い、恋をし、人間と同じような日常を楽しみたいと願っているが、ネズミで育ての親のスプリンターは過去に人間たちから受けた仕打ちから、彼らを守ろうと人間との接触を禁じている。
ミケランジェロたちはスプリンターの目を盗んで外出し、記者志望の少女エイプリルに出会う。
そして彼女から、ヒーローとして活動すればきっと人間に受け入れてもらえると聞き、最近話題の犯罪者スーパーフライの一味を対峙することにする。
しかし、スーパーフライはタートルズと同じミュータント軍団で、人間社会を支配しようという野望を抱いていたことが明らかになる。
感想/レビュー
「ミュータント・タートルズ」への思い入れなどが特になく、昔子どもの頃にTVでアメリカのアニメがやっていたことだけは知っている程度の私として、今作はオリジンとしてすごく親しみやすく入りやすかったと思います。
往年のファンから見たらどうなのか?、そこは判断できないのですが、導入にはすごくいいんじゃないかと思います。
結構ストレートなストーリー展開をしますし、ティーンエージャーならではの”理想と現実の自分のギャップ”の描写とか、普遍的なんですよね。
そこに可愛いギャグも込められていて、各声優陣の声だったりも魅力。
総じて素直にお勧めできるアニメーションです。
タートルズバース
アニメという点でいえば、2018年の「スパイダーマン:スパイダーバース」がいかにすごい作品であったかを再認識します。
今作のCGの描画ですが、そのスパイダーバースのようにタッチが独特です。
あちらはまさにコミックのようなパターン入りの画であったり、グラフィック的なタッチを持っていましたが、今作も同様にその線や画という意味での独自性があります。
視覚的に楽しいんですよね。
すごく昔ですが、「スライクーパー」ってTVゲームがあって、あれを思い出しました。
デフォルメとはまた違うんですが、スタイリッシュさとグラフィティと、油絵だったりすらがまじりあった新感覚なアニメーションです。
サイケデリックな色彩もあれば、美しいCG画の要素もあり。
ポップな今回のティーンたちにマッチした活気あるアニメーションが楽しめました。
ティーンであり多感なタートルズが直面するのは、”普通でいること”。
これはなんとも王道であり、そして普遍的な課題です。
きっと大人になってもただ普通にいたいことって響いてきます。
序盤はまさに青春的ですね。個人的にですがすごく好き。タートルズとちょうど同じくらいのみんなが、友達で集まったり恋愛したり、屋外での映画上映を観たり。
その普通、特段特別ではないものを得るのが難しいタートルズ。
自分もただその輪の中に混じりたい。それだけの純粋さと単純さですが、すごく切ないです。
異なる存在としてのミュータントたち
しかし、スプリンター先生からの目線も理解はできます。
今作はこのNYCを舞台に、人種差別的な要素や多様性を根底に置きます。
少しの違いすらも人間は許さない、それがミュータントをただ存在するだけで恐れ攻撃する姿に重ねている。
一度で判断するなと思いそうなところですが、回想を見るだけでもその憎悪がきつい。
現実にも、少しでも人と異なったり、マイノリティである人たちへの大衆、マジョリティの態度は厳しい。
ミュータントという人と異なる存在であることと、仲間になりたいと願うティーンらしい想いをうまく掛け合わせた構図です。
そんなタートルズの前に、自分たちは孤独じゃないと思わせてくれるスーパーフライの一味が現れる。
彼らが少し揺れてしまうのもわかりますね。
しかしみんなはスーパーフライよりも前に、人間へのあこがれがありまた迫害よりも先にエイプリルと出会ったのが良かったのですね。
それがスーパーフライとの違いであり、ほかにはあまり違いはないってのは微妙かと。
あとアイス・キューブのスーパーフライはすごくいいんですけど、彼が一方的に迫害され親を殺されてしまったのにも関わらず、終始悪人としての描かれ方になってしまったのはちょっと惜しい気がします。
彼も寄り添われ救われてほしかったかな。
おそらく人種とか以外にもクィアな面も含めての多様性とのかけ合わせがされている作品。
ライカブルなキャラクターたちとフレッシュなアニメ表現から親しみやすいタートルズ誕生です。
人間界にて普通に過ごしてくという形が、往年のファンにとってどのような受け入れられ方をしていくのか分からないですが、自分としては良かった。
今後続編などあるのか分かりませんが、できれば高校生活やその後進学や就職とヒーロー活動なんて描けたらおもしろそうです。
今回の感想はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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