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「ターナー、光に愛を求めて」”Mr. Turner”(2014)

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映画レビュー
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「ターナー、光に愛を求めて」(2014)

  • 監督:マイク・リー
  • 脚本:マイク・リー
  • 製作:ジョージナ・ロウ
  • 製作総指揮:ガイル・イーガン、テッサ・ロス、ノーマン・メリー
  • 音楽:ゲイリー・ヤーション
  • 撮影:ディック・ポープ
  • 衣装:ジャクリーン・デュラン
  • プロダクションデザイン:スージー・デイビス、シャーロット・ワッツ
  • 出演:ティモシー・スポール、ドロシー・アトキンソン、マリオン・ベイリー 他

マイク・リー監督の新作は、イギリス美術史で有名なジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの伝記映画。

カンヌでは主演のティモシー・スポールとカメラのディック・ポープが受賞。オスカーでも、撮影、音楽、衣装とプロダクションデザインにノミネート。

私は美術史は詳しくなく、まぁ絵をかいたりなんだりは好きなくらいです。美術分野の眼で見ることはできませんでしたが、楽しめました。

劇場では年齢層かなり高め、さすがに若い人はいかないかも?

美しい夕陽が野原を照らす。そこには風車があり、道を二人の女性が歩いている。

広く取った画面が一人の男を映し出した。日の光に向かってスケッチをする男。

彼はジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー。ターナーが家路につくところから彼の後半生を追って行こう。

ターナーさん。この映画では彼の人生のほとんど後半部分を描いていました。

ですので、絵の世界で成功するサクセスストーリーでも、波乱の人生劇でもなく、彼の作風や死までの日々を映すものとなっています。

しかしそれでいて、ポンと置かれたターナーを理解しやすい作りです。彼の美術界での姿勢もよくわかりました。

そちらは言えばビジネス面の彼。画廊にては自身の作品の扱いを気にせず、仲間たちの中心ではない。しかし孤独というほどでもなく、付き合いはしっかりしています。

そのなかでも内面を、またその変化を感じられますね。

時代の中で彼の作風が変わり、それがどう当時の人に見られていたのか。

黄色を好んでいて、たっぷり紙に塗りたくっていたり、父の死後どんどんと抽象的な自然を描くようになったり。

彼の人としての形成はやはり個人的な領域にて感じやすいものでした。

無愛想ながらも援助をしたり、父との関係や後半での夫人との関係は、ターナーの暖かな部分を出しています。しかし一方では、元妻や子供関係での冷徹さも。

その説明は父との死別シーンで透けてきますね。ただそれで女性不信になっているわけではなく、血のつながりのあるもしくは枠組みで一緒の、女性がイヤなのかもしれません。

いずれにしても、私には真実はよくわからなかったです。

ただ、ターナーの他者との関係というのは、「ドアの枠や窓の枠、その中に相手を観ているターナー。」という画面構成で十分伝わりました。

何か自分の面と、相手の面がずれているような。

そして枠のせいで窮屈に感じる。彼の対人関係のちぢこまった感じが出ています。

あの借金男がとぼとぼと歩いていくシーン。玄関口の枠内に男が遠ざかって小さくなるのですが、すごくゆっくりとズームしていて、枠が消えていくんです。

ターナーが彼に同情し心を開いているようでした。

そうして対比するように、父や夫人等の本当に親しい人物のときは、枠なしで一緒だったり、または同一の面内でドアや廊下という枠を超えて触れ合うのです。

そうはいってもほとんどの場合は、枠の中に人を見て、自分とは切り離しているターナー。

その窮屈な画面とは対照的に、彼は自然風景と共にいるときとても広々と映し出されます。そしてその解放感とすこし寂しい画面にて、あの特徴的な音楽がかかるんですね。

ターナーの孤独さとその安らぎがあり、決して断定的でなく綺麗な音色です。

ターナー以外の要素として印象に残ったのは、主従関係でした。始まってすぐも女中?のような二人組、ターナーとメイド、宿屋の主人の語る奴隷たち、ボートの漕ぎ手。

特にターナーとメイドは、後の展開も考えると悲しいです。性的な欲求のはけ口程度の扱い。それでもメイドは幸せのようですが。

ターナーは最後に言い残したように、「太陽は神」としていたのでしょうか。

中盤でみる女性天文学者の言うように、光によってすべては色を持つ。色彩の源である光。写真に触れ光を遮断した白黒に動揺していましたね。

ラストに映る3人。ターナーは光に向かって立ち、夫人は光が透けるガラスを一生懸命に磨く。そしてメイドは薄暗い部屋の中泣いている。

あの終わりだけでも何と言いましょう・・・儚い気がするのです。

光はすべてに色をくれる。人生にも色をくれる。

ターナーは偏屈なりにそれを捉えようとし続けた人なのでしょう。まだはっきりとどうこう言えないような、でもすごく良かったと思える作品でした。

そんなところでおしまいにします。それでは、また~

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