「アンヌ+THE MOVIE」”Anne+”(2021)

 「アンヌ+THE MOVIE」(2021)

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作品概要

  • 監督:ファレリー・ビッシェルー
  • 脚本:ファレリー・ビッシェルー、ハンナ・ファン・フリート、マウト・ヴィーメイエル
  • 製作:スーザン・デ・スワーン、ラシェル・ファン・ボンメル
  • 音楽:テス・バン・デル・ヴェルデ
  • 撮影:コア・ブーイ
  • 編集:オーグスティン・シュニッツラー
  • 出演:ハンナ・ファン・フリート、ヨーマン・ファッタル、トーン・ド・フリース、ジェイド・オリバーグ、イェッセ・メンサー、フイブ・クラウシトラ 他

オランダのテレビシリーズ「ANNE+」を長編映画化した作品。

オランダのアムステルダムに暮らす作家志望のアンヌと彼女の恋人サラとの関係、また友人たちとの交流を描いていきます。

主人公を演じるのはドラマシリーズと同じくハンナ・ファン・フリート、またそのほかのキャストもドラマシリーズから引き継いでいるようですね。

ハンナ・ファン・フリートはオランダの映画やTVではクィアの役で代表的な俳優で、また舞台俳優としても活躍、さらにオランダの映画際ゴールデンカーフ(金の子牛)でベスト女優賞ノミネートをしているとのこと。

まったくこのドラマのことも知らず、というかオランダ映画のことも全然詳しくなかったのですが、NETFLIXのおすすめで出てきたので今回初めて鑑賞してみました。

個人的にLGBTQ、もっと広くクィアの視点で製作されている作品には触れたいと思っていたのも理由です。

「アンヌ+THE MOVIE」のNETFLIX公式ページはこちら

~あらすじ~

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オランダのアムステルダム。

大学を出て作家として作品執筆に励むアンヌは、恋人のサラ、友人たちとの楽しい毎日を過ごしていた。

サラはカナダのモントリオールでの仕事を得て、異国へと旅立つが、アンヌは彼女を追いかけて数か月後にモントリオールに移り住む計画だ。

それまでに今手掛けている作品を書き上げようとしているが、アンヌの小説は編集者に難色を示され書き直さなければならなくなった。

そしてモントリオールでサラが新しい相手とのデートを始めたときから、ポリアモリー(自由恋愛)を認めていたとはいえ、アンヌはサラとの関係に疑問を持ち始めるの。

そしてサラに対しての意地悪ともいえるが、自身も惹かれたドラッグクイーンでありノンバイナリーのルーとのデートを始めた。

感想/レビュー

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ちょっと調べ物が足りなくて申し訳ないのですが、この作品は2018年にシーズン1、そして2020年にシーズン2を放送していた同盟ドラマシリーズの映画版とのことですが、事実上は続編という位置づけなのでしょうか。

なのでドラマシリーズの選り抜きとかダイジェストとかではなく、新章という扱いで良いのかなと思います。確実なことは言えませんが。

すくなくともドラマシリーズを見ていなくても十分に楽しむことはできるということは言えるでしょう。

生きている人物の触感

このドラマが生きているのが私はとても好きです。

クィアコミュニティを中心にしたドラマであることは抜いておいても、若い世代が仕事や恋愛、自認とか人生の選択に葛藤していく様に、その主人公アンヌだけではなくて周りの人々含めて息づいているというこの作品世界に魅了されました。

そこにしっかりと生きている人間がいると思わせてくれるのは、とても大事な要素だと思います。

全員の存在を信じられるし、寄り添えるからこそドラマチック。

そこでさらに今作は、クィアの視点やそれだけにとどまらない可能性と変化に富んだ世界を与えてくれました。

もはや説明も証明も衝突も必要のないクィアのコミュニティとしてのアンヌと友人たち。

クィアというレッテルすら不要になっているほどの自然さ。

ただそこに仲のいい友人たちが集まり、仕事や近況のことを話しながら飲みに行って楽しく過ごす。

このあまりの自然さと自由さには観ているだけで心地よさがあります。

どう形容すればいいのか分からないのですが、みんながそれぞれ好きになるんですよね。

だからこそこの作品が展開する破局や厳しい決断について結構キツく刺さってきます。

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出演者たちの魅力と完全な受容

俳優陣のアンサンブルというか、ケミストリーも素敵だったと思います。

アンヌ演じるハンナ・ファン・フリートの悩める姿もふとした笑顔も、ぎこちないコミュニケーションも。ふと見せるいい意味でも悪い意味でもの幼さも。

それを包み込んでいくノンバイナリーのルーを演じるトーン・ド・フリースのあまりのかっこよさも。

ルーについては自分自身映画でもあまり見ていないタイプの人物でした。

ふさぎ気味のアンヌにちょうど新しい視点を与えていくことと、彼女自身が表に出せず少し嫌悪してしまう自分の想いについての解釈を与えてくれますね。

これは自分に対しても同様です。

幸せなカットがある序盤においても、赤裸々なレズビアンのセックスシーンがありますが、ルーとのペニスバンドも出てくるセックスシーンの描写もひとつのラブシーン。

サラに見えるポリアモリーもまたただそこにもう一つ人の恋愛観があるというだけです。

性的な思考や性描写、恋愛観もここでは多様。

誰しもが自分自身でいて、批判もないからこそ、この完全な受容の姿勢が心地よいのかなと思います。どうにも引っかかる人とかもいないんです。

でも、ルーが自分の子どもができたときのことを話すシーンでは、まだこのオランダでもかかっているテンションや未来に臨む希望をのぞかせていて、だからこそちょっと日本の進まなさというのにモヤモヤしたり。

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それは置いておいて、この心地よいクィアのコミュニティを横たえつつも、フォーカスは普遍的な部分でありました。

これから人生を歩んでいく若い女性。彼女が自身のしたいこと、したくないこと、あり方や今現在の関係性から自分に気づいていくという物語。

まさしく王道に成長物語なんですよね。

自分を見つけ続けていくこと

カラフルなライティングの中で、大きな変化はレッドライトの刺激と危険性があり。

やってみたドラッグクイーンで自分の大胆さを知って、また一つ色を加えた。

レズビアンであること、クィアであること、そうした自認って固定されないもの。人間は成長しながら新しい一面を得ていくし、失っていく。

LGBTQ+という考え方ですら一過性なのです。

ドラマシリーズの各話のタイトルは「人の名前+人の名前」(例えばAnne+Sarah)で構成されています。

そして最終話と同じく、この作品のタイトルは「Anne+」。

ここには性自認としてのLGBTQ+もかけられています。

違和感を覚えてまた新しい自分を見つける。

はっきりと自分がどうであると決められない。まだまだクエスチョニングで変化していくアンヌ。

そしてこの先、+の後にまた別の人が付くこともあるでしょう。

誰が一緒でも全てが自分に刺激と変化をくれて開放してくれる。

正直執筆の難航とかその着地、内省からの復帰の速さなどクライマックスはうまく行き過ぎではありますが、主題としてそこを伸ばして描く必要もないためあまり気になりませんでした。

クィアコミュニティを描写する作品としての良さは分かりません。でも固定されず見つかり続けていく自分というのはより多くの人に届き繋がる物語だと思います。

割と拾い物で素敵な作品に出会うことができました。ネトフリ会員の方は興味があれば是非。

機会があればドラマシリーズも観てみようかと思います。

というところで感想は以上になります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。

ではまた。

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