「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」(2025)
作品解説
- 監督:ジュリアス・オナティム・ブレイク・ネルソ
- 製作:ケビン・ファイギ、ネイト・ムーア
- 製作総指揮:ルイス・デスポジート、アンソニー・マッキー、チャールズ・ニューワース
- 共同製作:ミッチ・ベル、キャナ・F・デビッドソン
- 脚本:ジュリアス・オナ、ピーター・グランツ、マシュー・オートン
- 撮影:クレイマー・モーゲンソー
- 美術:ラムジー・エイブリー
- 衣装:ガーシャ・フィリップス
- 編集:マシュー・シュミット、マドレーヌ・ギャビン
- 音楽:ローラ・カープマン
- 出演:アンソニー・マッキー、ハリソン・フォード、シラ・ハース、ダニー・ラミレス、ジャンカルロ・エスポジート、カール・ランブリー、ティム・ブレイク・ネルソン 他
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を代表するヒーロー、キャプテン・アメリカを主人公に描く「キャプテン・アメリカ」シリーズの第4作。
監督は「クローバーフィールド・パラドックス」や「ルース・エドガー」を手がけたジュリアス・オナ。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」のラストで盾を受け継ぎ、TVドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」での戦いを経て、新たなキャプテン・アメリカとして歩み始めたサムを、前作に続きアンソニー・マッキーが演じます。
本作では、アベンジャーズとたびたび対立してきたサディアス・ロスがアメリカ大統領に就任。2022年に他界したウィリアム・ハートに代わり、ハリソン・フォードが同役を務めています。
また、「インクレディブル・ハルク」に登場したティム・ブレイク・ネルソン演じるサミュエル・スターンズや、リブ・タイラー演じるエリザベス・ロスが再登場。
最近はMCUもディズニーがどうたらと言われていますが、ディズニーによるマーベルエンターテイメント買収自体は2009年に起きているので、パワーバランスが変わったか、体制が変わったか。
単純におもしろくなくなっているのは事実ですが、映画追いかけているので見に行ってきました。休日別にサービスデイでもないIMAXシアターですが、ほぼ満員。熱く語るオタクにカップルたち。客層もだいぶ変わってました。
「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」のマーベル公式サイトはこちら
~あらすじ~
初代キャプテン・アメリカ、スティーブ・ロジャースから深い信頼を寄せられ、ヒーロー引退の際に“正義の象徴”である盾を託されたサム・ウィルソン。
彼は新たなキャプテン・アメリカとしての道を歩み始めるが、そんな折、セレスティアルズと呼ばれる課題の神々の遺跡で、ヴィブラニウムを超える鉱石、アダマンチウムの争奪戦が勃発。
アメリカ大統領ロスは各国の緊張状態をみて、サムにアベンジャーズの再編を依頼した。
スティーブのように超人をまとめ上げる自信がないことや、一度はソコヴィア協定でアベンジャーズを引き裂いたロスに疑念を抱くサム。
しかしそんな中、ロスが主催する国際会議の場でテロ事件が発生。サムの友人であるイザイアが突如茫然としてロスを襲ったのだ。
誰かが何らかの洗脳を行っていると確信したサムは、事件の裏で糸を引く人物の捜査を始める。
感想レビュー/考察
外圧に押しつぶされる者のドラマ
作品のテーマと監督の選出にはロジックがあると見えました。
今回新たにキャプテン・アメリカシリーズの監督を任されたのは、ジュリアス・オナ監督。
私の中では「ルース・エドガー」で非常に印象に残る監督です。そちらで描いたのは、世界から認識される自分や期待される役割、偏見と差別に悩まされる優等生。
もしかすると危険人物なのかもしれなという疑念をスリリングな要素としながら、アメリカ社会における根強い差別であったり、外圧に苦しむ青年を描きました。
今作では主人公キャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソンと新たにアメリカ合衆国大統領になったロスに、同じような苦難が待ち受けます。
一応は。
サム・ウィルソンの悩みは、先代キャプテン・アメリカとの比較に苦しむこと。
ただそちらはドラマシリーズで終わったものと思っていたので、また繰り返すのは正直愚策と思いますが。
ドラマシリーズ未鑑賞の人向けに整理したと考えても、だとすればイザイアを濃く出す点などバランスが悪い。
またロス大統領については娘との関係性修復のために自分のあり方や、やり方を変えて、生まれ変わろうというドラマが設けられています。
2人を主軸に見ていけば、外圧や期待に押しつぶされそうになる人物たちの奮闘劇とも言えます。
超人血清のなさ、人間としての限界。黒人であること。偉大な先代。
ただサムは個人的にはやはり、それら全て解決済で、だからこそしっかりとキャプテン・アメリカを継いだと見ていますので、まるっと重複で退屈でした。
キャプテン・アメリカとは?
もちろん、より明文化して彼を”目標にできる人”と置いた処理もありますが、ここは正直嫌いです。
これは何をもってキャプテン・アメリカを認識しているかに関わると思っています。
私はスティーブの精神があってこそキャプテン・アメリカが生まれたと思っています。超人血清による超人的な力ではなくて、彼の高潔な精神。それを継いでいるからサムもキャプテン・アメリカなんじゃなかったっけ?
サムは自体が大きくなっていき、生身の人間である自分では力不足ではないか心配していますが、それがスティーブとの差ではないと思うんです。超人的だから希望で、生身でも頑張っているから目標。
その区分けは分かりますが、そもそもキャプテン・アメリカが示すのはただ超人パワーで物事を解決してくれるという希望ではないんじゃないかな。
彼を見習って、正しいことをするために尽力し、「キャップならどうするだろうか?」と、人々の高潔さを呼び覚ます点じゃないかと。
なのでなんというか2つの要素を同時に葛藤に置き換えているせいで論点がズレている気がしました。
さすがに悪い人間が身勝手な理由で変わったと言っても・・・
また、ロスの方は、人間として生まれ変わろうとするのは分かりますが、それにしては過去作に比べても普通に悪人過ぎないでしょうか。
ハリソン・フォードはしっかりと信じられる造形にもっていっているので、観ごたえはあります。それでも、自分は変わったというには過去の罪はそのまますぎるので、なんとも言えない。
本作のネタバレになりますが、黒幕は「インクレディブル・ハルク」でアボミネーションの誕生を手伝わされた挙句、頭部にけがをさせられそこにハルクの血が混入したサミュエル・スターンズ博士です。
誰だっけそれ?と言われるのも無理のない、まさかの17年ぶりの登場といまさらの伏線回収。
彼を投獄し、自己利益のために利用し最後は廃棄しようとしていたという、ロスは畜生すぎてなんだか応援できない。しかも、生まれ変わるのが娘に認められて会いたいという自分勝手なものなので全然乗れません。
あれこれとやるもののまとまりがない
主たるところに違和感があるうえで、ポリティカルスリラー感は「ウィンター・ソルジャー」より全然弱いですし、あれこれと多岐に手を出しすぎたり、多くのキャラクターを入れすぎて機能的でしかない脚本にはあきれました。
しかも、中盤ですぐスターンズ博士とサムが出会うんですが、はっきりとロスに利用されて閉じ込められ続けてきた、しかしロスに気づかれないうちに徐々に悪夢を植え付けている。と言わせる。
なのにもかかわらず、そのすぐ後にもロスから同じ話を聞く。自分がスターンズを閉じ込めたこと、病気の研究をさせて薬をもらっていたこと。
最初のスターンズの話で観客は何が起きているのか分かっているはずです。なので同じことをもう一回繰り返すだけのシーンを入れるというのは、観客に対する信用のなさなのか、単純に冗長か。ちょっと残念で呆れました。
自分で引いたリアリティラインに苦しむ
そしてサムが自分は超人血清を打っていない生身の人間であることを強調するからこそ、むしろ人間レベルを超えている(テクノロジーを駆使したとしても)アクションには因果を感じなくなってしまうので、観ていて興味が失せます。心配する必要がないので。
リアリティラインの話するならもっと現実寄りにしないと。転んでひざをすりむく世界で、人が建物の上から落ちてもうめくだけで無傷とか支離滅裂になります。
全体に脚本は散漫ですし、やりたいことが多すぎることややはり過去の遺産を引っ張り出してきているだけ。
勇敢さも、新しさも感じない世界でした。
スーパーヒーロー疲れとかもあるんだとは思いますけれど、CGの質の件も含めて本気でしっかり作りこまないと、アメコミ映画がかつて”オタクが自分たちの好きなキャラクターや小ネタが出てて気持ち良くなるだけのキワモノ”だったころに戻ると思います。
今回は全然ハマらなかったのですが、MCUを追いかけている、映画を追いかけている人は避けて通れない作品ではありますので、観てみると良いかな。
何か映画見ようとしているなら、「野生の島のロズ」か「トワイライト・ウォーリアーズ」あたりを観るのをおすすめします。
今回の感想はここまで。ではまた。
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