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「X エックス」”X”(2022)

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「X エックス」(2022)

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作品解説

  • 監督:タイ・ウェスト
  • 脚本:タイ・ウェスト
  • 製作:タイ・ウェスト、ジェイコブ・ジャフケ、ハリソン・クライス、ケヴィン・チューレン
  • 製作総指揮:キッド・カディ、デニス・カミングス、サム・レヴィンソン、アシュリー・レヴィンソン、カリーナ・マナシル、ピーター・ポーク
  • 音楽:タイラー・ベイツ、チェルシー・ウルフ
  • 撮影:エリオット・ロケット
  • 編集:タイ・ウェスト
  • 出演:ミア・ゴス、ブリタニー・スノウ、マーティン・ヘンダーソン、ジェナ・オルテガ、スコット・メスカディ 他

「サクラメント 死の楽園」などのタイ・ウェスト監督が、個性的な作品を送り出しているスタジオA24と組んで送る、70年代ホラーへの経緯に溢れたスプラッタ映画。

主演は「サスペリア」「ハイ・ライフ」などのミア・ゴス。

彼女が参加しているポルノ映画撮影クルーには、マーティン・ヘンダーソン、ジェナ・オルテガ。また「ピッチ・パーフェクト」シリーズのブリタニー・スノウが出演しています。

ポルノ映画撮影舞台と老人夫婦でスラッシャーというだけでも結構なキワモノなのに、今作は舞台設定を1979年においており、田舎を訪れる若者たちという設定からレトロなホラーの空気がすごく感じられます。

ちょっとニッチすぎな気もしますけど、その偏愛感がなんとなく好きです。

海外評での痛々しさと怖さなど良い評価を受けており、楽しみに待っていました。

タイトルの「X」については、作中での言及も少しありましたが、実際にはこの舞台となっていた時代のMPAA(米国映画協会)の作品レーティングです。

Xレーティングは当時は16歳以上向けという意味だったそうですね。「時計仕掛けのオレンジ」とか「真夜中のカウボーイ」あたりがそこに該当していました。

今作は実はすでに3部構成になることが決まっていて、この作品の撮影と同時に自作であり前日譚となる「パール」を作っているらしいです。

シリーズものを作るというのも、A24スタジオ初の試みとのことで今後も楽しみです。

さて、公開の週末に観に行ってきましたが、入りはそこそこって感じでした。A24の映画はそれ自体がファッション化していて、若いカップルとかが多かった印象があるのですが、設定次第では「ライトハウス」の時のように、そこまで来ないみたいです。

「X エックス」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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1979年。

ポルノ女優をしているマキシーンは恋人で製作者のウェインと、その他の出演者、スタッフの6人で田舎の農家に向かって出発した。

彼らはここで農場を舞台にしたポルノ映画を撮り、時代の流れに乗って一攫千金を狙っていたのだ。

しかし訪れた農家の老人はあまりこの若者たちの集団を歓迎しておらず、また妻の老婆はただならぬ目線を向けている。

マキシーンたちは夫婦には何をしているのか知らせずに、着々と撮影を進めていくのだが、その日の夜に静寂の中恐怖が始まることとなった。

老婆パールが秘めたる思いを持ちつつ、撮影クルーを襲撃し始めたのだ。

感想/レビュー

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タイ・ウェスト監督のホラー映画。

今作はかつてのスラッシャームービー軍への敬意と偏愛に溢れた作品になっており、そこかしこの遊び心が非常に楽しい作品でした。

久しぶりに終始楽しかった映画体験。

それはこの作品が決してうしたサンプリングだけに頼っているのではなくて、数々のオマージュを捧げつつも、やはりオリジナルな展開をしていくからだと思います。

様々なオマージュと示唆

OPがまずもって楽しいですね。

4:3に思える画角からクラシックな雰囲気が漂っていると思えば、カメラがズーミングして動くと、実は開いたドアの間を抜いているショットであったことが分かります。

そこからは何やらおぞましい事件の下地が設定され、ジャンプして24時間前。

「悪魔のいけにえ」をとにかくビンビンに感じる若者集団が、しっかりと途中でガソリンスタンドに寄ってから映画はキックオフです。

なんだか怪しい老人たち、そして”老い”というものが恐怖要素になっているのとかは、シャマランの「ヴィジット」感もあり。

言及される「サイコ」に似た感じで水中に捨てられた車が見えたり。そもそも最初の惨殺シーンがシャワーシーンからのめった刺し(カット割りとかも含めて似てる)であったり。

その他にも作中の死に関しての示唆がふんだんでした。

看板に書かれていた金髪美女とワニとか、ウェインのセリフ「目ん玉が飛び出るぜ!」、ジャクソンはベトナムで農民に銃で撃たれることを話していますね。

構成上いろいろと種がまかれていて、無軌道な進み方をしていないのが見やすかったり楽しかったり。

お手本のような緊張の構成

途中のスリラーシーン。

マキシーンが湖で泳いでいるところ。もう教科書に載っていいレベルで見事でした。

ちらちらと見える陸の老婆のシルエットに、手前のマキシーンを案じていると、ふと水にはおおきなワニ。

カットバックを繰り返しながら、前後と俯瞰でマキシーンとワニの位置がどんどんと詰まっていき・・・。

映像と音だけでこれができる、映画のスリラーの純化された喜びがあります。

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ミア・ゴスの存在感

ホラー映画におけるミューズはアニャ・テイラー=ジョイが目立っていますが、私個人的にはミア・ゴスもかなり頑張っていると思っています。

「サスペリア」に登場するときもそうですが、彼女はそのホラー要素に必要な属性になりきって存在感を示すというか。

どういった方向性で・・・というのではなくてそのホラーの種類に適応して輝く力があると感じています。

そういった意味で今作でのミア・ゴスは、直近の「EMMA.」と比較してとにかく擦れていて政敵解放感に溢れた女性。

大体のホラー映画では、セックスすると死ぬのが定番です。しかし今回は少なくともそのシーンがない男女すらぶっ殺されるため逆を行く。

そして、もろに主観セックスシーンすらあるミア・ゴスはラストガールとして立ち回るのです。

切なさとメタ構造から独特の視点があるヴィラン

それぞれがこの若き時代の残り時間を使って、なんとか抜け出そうとする。

クソみたいな人生はまっぴら。自分のしたくないことはしないで良い生が欲しいのです。

そこでカウンターとなるのが今作の殺人鬼にして”絶倫クソババア”と勝ってに呼ばせていただいているパールです。

彼女は異常なまでに若者たちに執着し、その性(生)をのぞき込みます。

そこに込められているのは、自分にはなかった人生です。早くに決まり、戦争があり、農場で何もないままに時間だけが過ぎていった生。

鏡が突き付けてくる現実に、打ちひしがれたようなシーンは切なさをたたえています。

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そしてパールの暴走が始まる。もう辛抱たまらないこの婆さん。グイグイといってはザクザクといきます。

黄色のライトが血しぶきで赤く染まって、画面がレッドライトに照らされる演出は粋でした。

またもうネタバレしてしまう?のですが、パールを演じているのもミア・ゴスなんですよね。

これは自作となるパールでも彼女が主演でこの老婆の若いころを演じることに繋がっていますが、同じ演者ゆえの不思議な人物間のつながりも見えています。

人間らしさを持つことが恐ろしさを作る

単純な怪物とか精神異常者、レザーフェイスやブギーマンのような超人的な存在ではなくて、こうして私たちの延長線上にありえる存在がヴィランであるのは、個人的にはとても良かったと思います。

マキシーンがパールと繋がってしまいそうなのと同様に、これを観ている観客も例外ではない。

人間性を持っているからパールは恐ろしいのです。人間性というもので彼女を感じ取ってしまうから。

非常にいやらしいキャラ造形で素晴らしい悪役でした。

今作の続編としてそのパールの若い時代の映画も楽しみです。また3作とするならば、マキシーンの原題(年を取った姿)の続編もあるのでしょうか?

往年のホラーへの目くばせもたくさんながら、今後が楽しみなホラーでした。

私的には、これまでロクな目にあってなかったミア・ゴスが、最後は爽快にエンディングを迎えたところが良かった。報われた。

というところで今回の感想は以上。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ではまた。

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