「コララインとボタンの魔女」(2009)
- 監督:ヘンリー・セリック
- 脚本:ヘンリー・セリック
- 原作:ニール・ゲイマン
- 製作:クレア・ジェニングス、ビル・メカニック、メアリー・サンデル、ヘンリー・セリック
- 音楽:ブリュノ・クーレ、ダニー・エルフマン
- 撮影:ピート・コザチク
- 編集:クリストファー・マリー、ロナルド・サンダース
- 出演:ダコタ・ファニング、テリー・ハッチャー、イアン・マクシェーン、ジョン・ホッジマン、ロバート・ベイリー・Jr 他
「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のヘンリー・セリック監督がニール・ゲイマンの児童文学をストップモーションアニメで映画化。
アニメーションは「クボ 二本の弦の秘密」などのスタジオライカが手掛けています。
主人公のコララインの声を演じているのは、ダコタ・ファニング。
アニー賞に複数ノミネートし、ゴールデングローブ、アカデミーでもアニメーション賞にノミネート。批評面での高い評価を得ました。
当時は映画館には観に行っておらず、ブルーレイで鑑賞。眼がボタンになっているビジュアルは強烈で覚えていますが。
森の中にあるピンクパレスアパートに引っ越してきたコララインだったが、両親は仕事仕事で全然かまってくれず、古臭い家も退屈でうんざりしていた。
ある日コララインは、壁紙でふさがれた小さなドアを見つける。古びたカギで開くことができるがそこにはただ壁があるだけの奇妙なドア。
しかし、ある夜コララインが眠りにつくとその扉から別の世界につながっていた。
その世界は現実と似ているが、どこもキラキラしていて楽しげで、両親も優しく耳を傾けてくれる。
ただし、その世界の住人はみんな、目がボタンになっていた。
ライカスタジオアニメーションの中ではホラー要素が結構強め。子供向けの作品ではありますが、いろいろとトラウマな場面もありますね。
OPの処置もフェティシズムもありながらちょっと不気味。あとボタンの魔女のビジュアルは子ども怖がるでしょう。
キャラクターや舞台の造形や繊細な動きは間違いなく必見のレベルですが、全体的なビジュアルとしてはどこかおどろおどろしい感じがあります。
不気味な雰囲気も含めてこの作品の魅力かと。
雨や霧、雪などの自然のもののアニメ表現も良く、人物の動きも、自意識での動きと他からの強制での動きと素晴らしい仕上がり。
中でも個人的には、世界が可変というか、一気に変化するシーンの出来栄えに度肝を抜かれました。世界の空白へと歩くシーンや、色を失う世界、そして部屋が蜘蛛の巣へと変化するシーン。
どれもあっという間に状況が一変するわけで、その自然さもストップモーションでやっているというのが信じられない完成度です。
それに、やはりCGとか合成ではなく、コララインなどそこに置かれる人物と同じメディアが変化を起こしているのは、実感の強さが違います。
そんな素晴らしいアニメーションだけでも大満足ですが、ちょっぴり怖い、ダークなおとぎ話としてもとても好きです。
どうしても求めてしまう、理想とか自分にとって素晴らしい世界、生活っていうと、子どもの話だけではない気がします。
注目は集まらないし、どこか孤独で退屈で。コララインの不満は共感できます。またよく考えると大人たちの状況に関してもかわいそうな感じがありますね。
しかしその不完全で歪な現実を愛すこと。これが大切。
結局楽しくて理想的で気分が良いというのは、”自分にとって”なのです。別世界のパパは魔女の意のままに操られています。あの世界はコララインにとって都合がよく気持ちのいいものですが、それは誰か別の人の犠牲を強いるのかもしれません。
自分だけのことではなく他の誰かを救うため、リスクあるゲームに踏み込んでからコララインは強くなった気がします。
現実を受け入れていき、他者を推しはかるその成長の物語として、ちょっと怖い旅になる作品。アニメーション技術の高さには本当に驚かされた映画でした。
感想は短いですがこのくらいになります。最後まで読んでいただきありがとうございます。
ではまた。
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