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「劇場版モノノ怪 唐傘」”Mononoke Movie: Paper Umbrella”(2024)

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「劇場版モノノ怪 唐傘」(2024)

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作品解説

  • 監督:中村健治
  • プロデューサー:佐藤公章、須藤雄樹
  • 企画プロデュース:山本幸治
  • キャラクターデザイン:永田狐子
  • アニメーションキャラデザイン:高橋裕一
  • 総作画監督:高橋裕一
  • 美術設定:上遠野洋一
  • 美術監督:倉本章、斎藤陽子
  • 色彩設計:辻田邦夫
  • ビジュアルディレクター:泉津井陽一
  • 3D監督:白井賢一
  • 編集:西山茂
  • 音響監督:長崎行男
  • 音楽:岩崎琢
  • 出演:神谷浩史、黒沢ともよ、悠木碧、小山茉美 他

2006年にフジテレビの「ノイタミナ」枠で放送されたオムニバスアニメ「怪 ayakashi」の一編「化猫」を基に、2007年にテレビアニメシリーズとして放送され大きな話題を呼んだ「モノノ怪」の劇場版作品。

江戸時代をモチーフにした独特の世界観を背景に、主人公の薬売りが様々な怪異に立ち向かう姿を描いた和製ホラーアニメ。

主人公・薬売りの声を人気声優の神谷浩史が担当し、3人の女中役には黒沢ともよ、悠木碧、小山茉美が声の出演をしています。テレビ版に引き続き、中村健治が監督を務めています。

すっごく前のアニメを今10年以上たってから劇場映画化。しかしファンは長くファンでいるようですね。連休中に観てきたのですが回数が少ないこともあるとは思うものの、満員でした。

~あらすじ~

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天子様の世継ぎを生むために各地から美女・才女を集めた大奥。男子禁制の場であり独自の権力と構造をもつこの地に、新たな女中が二人やってくる。

才色兼備なアサ、そして大奥に憧れ少し抜けているカメ。正反対の二人ではあるが、この大奥で一緒に頑張ろうと絆を深めていく。

二人は初日から大奥内であがめられている御水様の儀式を受けることになる。それは持っている大事なものを御水様に差し出し、大奥に貢献する覚悟を決めること。

大奥では2か月前に延期になった、天子様のご子息の祝いである大餅曳を執り行う準備が進められており、代表である歌山は一層女中たちを厳しくまとめ上げている。さらに外からはこの大餅曳の行方を監視するために二人のお目付け役も来ている。

そんな大奥の外で内部の様子を探るものがいた。様々な薬を売っているという男は、御水様の儀式を感じ取ると、「形を成した」と言いはじめる。

感想レビュー/考察

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独立して予習いらずで楽しめる

TVアニメの「モノノ怪」が2007年。なんだかすごく昔、中学くらいだったかな、アニメを見た記憶があるようなないような。

でもマンが持っていたのは覚えています。それは「化け猫」ってお話だったし、結構切なくて惨い部分もある話で印象に残っています。

クラウドファンディングを行ったところ1,000万円目標で募ったら5,900万円も集まるほどに、根強い人気が長く続いているこの作品ですが、ある意味で初見みたいな私でも全然楽しめました。

もともとがオムニバス形式で、ずっとすべての設定や人物が続いているわけでもないため、一つの章として見やすいのでしょう。
予習とか世界観の理解とかはあまりなくても良いと思います。

目が楽しいアニメーション

その世界観ですが、ビジュアルがとても独特ですね。
浮世絵のようなテイストが筆運びを持っていて、さらに彩色はとってもカラフルです。しかし鮮やかだとは思いますが、全体にはほんのり彩度落とし目になっているので、サイケな印象ではない。
そして画面全体には和紙の持つ繊維のようなエフェクトがかかっていて、だからこそ、紙の上に描かれた絵が生き生きと動き出すような感覚を持っています。
「鬼滅の刃 無限列車編」とか「ドラゴンボール超 ブロリー」などの持っているアクションと見事な作画とはまた一味違ってとても楽しいものでした。
画的な部分ももちろんですが、エフェクトの表現の仕方もおもしろい。どこか非現実的というか、あえてエフェクトを現実らしいリアルよりも、「視認できないものを描くとしたら?」という視点で描いています。
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序盤にカメが手土産として持ってきた味噌大葉おにぎりがありますが、包みを開けるとそこから匂いが出てくる。それは湯気でもなく、華が咲くようなエフェクトで、万華鏡の中の一つの図形みたいなものがはっきりと表れています。
匂いというモノがのちに御水様からくみ上げている井戸の水として出てきますが、その際にはゆっくりと漂う水玉になっていて、色合いが灰色と黒といった変化をします。
もちろん人物が「なんかこの水、生臭くない?」というのですが、においが良いのか悪いのか表現するうえで視覚的に独特で目が楽しい。
雨の描写についても、上空の雲も。怪異のエフェクトもおもしろい。視覚的なフレッシュさや驚きに満ちたアニメーションです。

顔の変化が大奥の組織と個人の関係を示す

そこでアニメーションとしておもしろいのが、女中たちの顔がうずまきに代わっていたりするところ。
ほとんどの女中はこのうずまきの顔で登場していて、最初はこれはモブキャラの描き方なのかな?と思っていました。実際主要な人物はみなしっかりと顔がありますし。
しかし、変化するのです。うずまき顔がしっかり顔を得たり、逆にずっと顔があったアサがあるとき一瞬ですがうずまき顔になったり。
これは大奥と個人の関係を示していると思います。この大奥で組織に貢献するために個人(自分の大切なもの)を捨てることが求められています。
そこで自分を捨てた人、つまり個人や個性を捨てて大奥の一部になった人が、その状態だと顔を失ってうずまきの顔なしになるのです。
この表現は実写ではないアニメならではの表現で媒体を活かした表現とストーリーテリングが融合していて素晴らしかったです。
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アサが一瞬顔を失うのは、わずかでも大切なものを手放しそうになったからです。
ではここで描かれる個人とか大切なものとは?
序盤の御水様の儀式で、カメは彼女の”これまで”を象徴する櫛を捨てることになります。大奥に入る覚悟ではありましたが、カメは物を捨てたところで自分を捨てることは叶いませんでした。
それに対してアサは捨てるものなどないと言います。過去を持たない女性のようにも思えましたが、そうではないのでしょう。
捨てる”物”がないだけで、大事なものはある。
彼女にとってのそれはカメです。彼女との友情や思い慕う心。存在としてのカメがアサにとっては大切なものだと思われます。
幾度となく支え合う描写があり、手を繋ぐのもこの二人です。初めて大奥の敷地内に踏み込む際にも。また後半でモノノ怪の存在を聞いてからも。
時代や舞台として不思議ではないですが、二人には情愛もあるかもしれません。アニメーション表現では恥じらいとして入れ込まれる”頬が赤く染まる”描写が何度もアサにはあります。
嬉しいだけかもしれませんが、あえてこの表現を入れているので、より深い想いがあるかもしれません。

自分を殺し続けた結果生まれたモノノ怪

アサとカメ。どちらも存在してこそのドラマ。
これまでの女中たちは皆個人を捨てて来た。だからこそ組織の足手まといには厳しく。人の心や優しさをも失ったような対応をする。
カメに嫉妬している麦谷。アサに危機感を覚える淡島。個人を捨てた彼女たちにとって、居場所は大奥だけ。ここでの価値がすべてである。だから敵になるカメやアサには厳しく当たる。
パワハラ描写が生々しいですがロジックはある。そしてだからこそモノノ怪に狙われ殺される。
あやかしが人の情念と交わり形を成すのがモノノ怪だと言います。
個人を捨て去ったことや上下関係と迫害。被害者は加害者になり罪悪感を抱えて自害する。北川のように。
いつしか笑顔を忘れ、あの人形のように壊れた表情になった女中たちの情念はあやかしと出会う。
モノノ怪は彼女たちを苦しめた人間を襲う。
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自分を捨てずに、いたいところにいる

そこでカメは結局個人を捨てられなかった。大奥に馴染めなかった。御水様の水もキッパリと断り捨てる。
そしてアサもです。大奥で才覚を示し凄まじい昇進をしていても、彼女は御水様へ大切なものを捧げてはいない。
両面が描かれているのが良い。個人を殺さない方法が、ただ組織から抜けるのではなくて、組織にいながらも個人を捨てない選択肢もあるのです。
多くの亡骸を源泉にした水は生臭い。それを受け継ぐことを拒否してまさに源から断っていく。
結局は出来の悪かった女中を鬱陶しく思い暇を与えてしまった北川。大切だった友達を突き放してしまった罪悪感。
アサも同じ運命を辿りそうになるものの、最後までカメの手を握ってあげた。
最後はカメに暇を出す。しかしこれは追い出しではなくて、彼女を大切に思うからこその解放と後押しになっています。
確かに薬売りの大麻の件の活躍あってこそかもしれませんが、人間側が放置されずに、むしろアサとカメの二人がいてしっかりと因果を断ち切って前へ進んでいるドラマの帰結が見事でした。
ところどころ、カットの割方やセリフを繋げる演出がノイズに感じるところも感じられたのですが、全体にはビジュアルもストーリーもすごく楽しかったです。
今後火鼠編が予定され、その次にはもう1作品あるとのこと。EDでも大きな柱に向かって周囲の3本の柱から3つの綱が結び付けられていて、うち一本が切れています。
なんだか神様の絵みたいなのがそれぞれの柱にもあったので各章を象徴しているのかな。ともあれ次が楽しみです。
今回の感想はここまで。ではまた。

コメント

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