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「VESPER/ヴェスパー」”Vesper”(2022)

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vesper-2022-movie 映画レビュー
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「VESPER/ヴェスパー」(2022)

vesper-2022-movie

作品概要

  • 監督:クリスティーナ・ブオジーテ、ブルーノ・サンペル
  • 製作:アスタ・リュカイティーテ、ダイバ・バルナイテ=ヨバイシエネ、アレクシス・ぺリン、クリスティーナ・ブオジーテ
  • 製作総指揮:セバスティアン・レボ
  • 原案:ブルーノ・サンペル、クリスティーナ・ブオジーテ
  • 脚本:ブライアン・クラーク、ブルーノ・サンペル、クリスティーナ・ブオジーテ
  • 撮影:フェリクサス・アブルカウスカス
  • 衣装:フロランス・ショルテ、クリストフ・ピドレ
  • 編集:スザンヌ・フェン
  • 音楽:ダン・レビ
  • 出演:ラフィエラ・チャップマン、エディ・マーサン、ロージー・マキュアン、リチャード・ブレイク 他

破壊され分断された地球を舞台にした、絶望的な世界からの脱出を目指す少女の戦いを独創的で壮大な世界観で描いたSFダークファンタジー。

主人公ヴェスパー役を演じるのは、「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」で知られるラフィエラ・チャップマン。

また「人生はシネマティック!」「フェアプレー」などのエディ・マーサンが資源を独占し周囲を支配するhttp://フェア男を演じます。

監督は新鋭のクリスティーナ・ブオジーテ&ブルーノ・サンペルが務め、この作品はブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で最高賞である金鴉賞を受賞しました。

前情報はほとんどなくて、いつもよくいくシネコンでの予告を見て少し興味がわいたというのと、正直予定の間で時間の都合が良かったということで鑑賞してきました。

土曜日夕方の回でしたが、まあまあ人が入っていました。

~あらすじ~

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地球の生態系が崩壊し、富裕層だけが暮らす城塞都市シタデルが存在し、それ以外は取り残された世界。

貧しい人々は外の世界でわずかな資源を奪い合いながら生きていた。

13歳の少女ヴェスパーは、寝たきりの父と共に外の世界で暮らしていたある日、森の中で倒れている女性カメリアを発見する。

彼女はシタデルの権力者の娘であり、墜落した飛行艇に父が乗っていたため、彼の捜索を依頼する。

ヴェスパーは、カメリアの頼みを受け入れ、父を探すことに。

しかし、ヴェスパーの叔父であるヨナスもまた、墜落した飛行艇の行方を追っていた。

彼の支配により、ヴェスパーの旅はさらなる困難に直面することになる。

感想/レビュー

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荒廃した世界を舞台にしたSFはあまりに多すぎて、なかなか斬新さを求めるのは難しいところ。

ディストピア映画では人間の恐ろしさに振ったり、モンスターを出したりいろいろとしますが、今作は結構ユニークでした。

全体の設定としては植物、つまり作物が育たない世界となってしまっているので、「風の谷のナウシカ」を彷彿とさせます。しかしもっと気味悪くて生々しくてグロい。

ちょっとホラー風味を混ぜ込んだナウシカって感じでしょうか。

洋画でいうと、植物と人体の融合的な描写とかはアレックス・ガーランド監督の「アナイアレイション 絶滅領域」に似たものがあります。

こうして考えると、こうした名作に並ぶくらいに世界が作りこまれていたことを再認識します。

ストーリー的な部分は言ってしまえばそんなに目新しくはないですし、なにかすごいアクションをするタイプの作品でもありません。

突出するのは美術やVFXで作られている世界のビジュアルと、設定が程よく練りこまれてこちらも拾いきれる世界設定でした。

OPでは泥だらけの平地で、ヴェスパーが何かを探している。後でわかりますが、数少ない食べ物を漁っていたのです。ただ背景にはタコのようにも見える大きな何かがいくつかみえます。

このショットで安全圏にいる豊かさと、文字通り泥まみれの下層の暮らしが見えます。

ただそれだけではなく、草が生えていると思う場所からなんだかよく分からない口のようなものを持つ植物が伸び、通っていく主人公の足元で動く。

植物自体に生命の捕食機能が備わっているのか、もしくは一体化するのか。なにか養分を吸い取るような、攻撃性が見える。

この植物たちについてはいろいろな種類が出てきて、ピーター・ジャクソン版「キング・コング」で出てきた人食い芋虫みたいなきもい造形のモノが、人間に吸い付いているところなど気味が悪い。

動物たちが全然いない代わりに、観たことのない植物の世界がビジュアルとして楽しめます。

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その他のアイテムについても、ヴェスパーが着ける顔を覆う布のレイヤー感は独特。また日よけみたいにすっぽりと自分を覆い隠す衣装装置も印象に残ります。

家の中の医療器具もなんだか内臓をそのまま取り出したような。。。どれも湿って濡れてて何とも言えない不気味な質感です。

ドローンの機械も含めて何ですが、あまりセリフでの説明がないガジェットが多く、登場人物の行動や流れを追いながら、そのアイテムの意味を理解していくような構造になっていて楽しいです。

植物や一部飛行船はCGですが、その他撮影は基本的にリアルにリトアニアのロケ地で行われたようです。

全体の世界の作り込みに注力した結果、その場、荒廃した世界という設定に真実味が増します。だからグリーンバック撮影でのどうでも良さみたいなものは無く、ヴェスパーの身を案じることができます。

ストーリーについては突飛ではないです。

使役労働用の生物はまさに「ブレードランナー」のレプリカントですし、体制に反抗し革命を起こせるアイテムを巡る戦いとなればこれまでにも多くあります。

軍から派遣されてきた兵士の造形はまた良かったですね。髑髏がガスマスクつけてる。合津の呼吸音が距離を示してスリリングさを上げる演出も良いです。

母の喪失とカメリアに重なる母の像。カメリア自身の苦悩。父のヴェスパーへの究極の愛。

終盤はアクションが増えがちな中で感情の爆発点に持っていったのも好き。

視覚的な楽しさに溢れ、その丁寧さによって、量産されるポスト・アポカリプス映画とは一線を画す良作でした。

今回の感想は以上です。

ではまた。

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