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「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」”Crimes of the Future”(2022)

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「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」(2022)

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作品概要

  • 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
  • 脚本:デヴィッド・クローネンバーグ
  • 製作:ロバート・ラントス、パノス・パパハジス、スティーヴ・ソロモス
  • 音楽:ハワード・ショア
  • 撮影:ダグラス・コッチ
  • 編集:クリストファー・ドナルドソン
  • 出演:ヴィゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワート、スコット・スピードマン、ドン・マッケラー 他

「クラッシュ」や「マップ・トゥ・ザ・スターズ」などのデヴィッド・クローネンバーグ監督が、痛みを失った人間が暮らす近未来で、新種臓器を体内で生み出す男とそれを摘出する手術をアパフォーマンスとして見せるアーティストを描くSFホラー。

新たな臓器を生み出す男を「グリーン・ブック」などのヴィゴ・モーテンセン、また彼の臓器を摘出するアーティストは「007 ノータイム・トゥ・ダイ」などのレア・セドゥが演じています。

その他新規臓器登録所職員を「スペンサー ダイアナの決意」のクリステン・スチュワートが演じます。

同じく「クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立」という作品をクローネンバーグ監督が1970年に作っていますが、何の関係もないようです。

今作はカンヌで上映され、退席者なども出る一方で絶賛もあり、まさに賛否両論であったと。クローネンバーグ作品ならそうでなくては。

日本公開も待っていましたが、お盆時期に公開。公開後すぐに平日で観ましたが、そこそこの入りでした。

「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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近未来。人間は痛覚を失ったことで、互いの身体を気づつけることに新たな快楽を見出していた。

退廃的な世界では、体の中に未確認の臓器を生み出す人間が現れ、ソールもその一人であった。

彼はアーティストであるカプリースが体内の臓器にタトゥーを施し、それを摘出するというショーを行っており、チケットは完売するほどに人気だった。

一方で、政府はこのような人間の現状を異常な真価であり危険なものとみなし、新臓器登録所などを設け、ソールのようなものたちを監視していた。

ソールとカプリースが新たなパフォーマンスを考えていると、ある少年の遺体について聞かされる。

その少年は生前プラスチックを食べていたということで、特殊な臓器を生まれながらに有しているらしい。そして彼は実の母によって殺害されてしまったと。

感想/レビュー

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クローネンバーグ監督というとグロホラー、奇抜すぎる設定でありながらどこか魅了されてしまう世界観を思い起こします。

私自身はそこまでクローネンバーグ監督映画を見尽くしてはいないものの、交通事故で性的快感を得るという常人にはわかりづらい「クラッシュ」なんかはやはり印象深く覚えています。

その「クラッシュ」とは異なって、今作は監督自らが20年くらい前から構想し脚本を作っていた作品だそうです。

設定的にはいつものクローネンバーグ監督の血筋を引いているものですが、結構長い間温めていたもの。

タイミングを計って今映画化したそうです。

完成度の高い世界には引き込まれる

そして率直にどう感じたかといえば、世界観や美術そして音楽に俳優陣というすべての要素が素晴らしい。

しかし、何か突出して刺さってくることはなかったというのが本音です。

作品が始まってすぐに、息子を突き放す母とプラスチックでできたゴミ箱にかぶりつくその少年が映し出され、なにやら無線機で会話しながらも、その母は息子を”それ”と呼ぶ。

なんとも、不穏な空気と、生物的と倫理的な違和感が同時に存在しています。

プラスチックを消化する人体、人をモノ扱いする言葉。ここにカオスが見て取れます。

カオスの中に包まれているのはこの親子だけではないようで、ソールの寝ているベッドはギーガーのデザイン化というような生々しさと機械の融合体。

不気味な音を立てながら咀嚼を手伝う、骨で形成されたような椅子。

この少しの冒頭だけで、かなり作りこまれた世界が覗けました。

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ハワード・ショアによる音楽は最初からすごく良いですね。

超越的で美しいですが、どこか恐ろしげに聞こえます。

抑えきれない人間の性と暴力の衝動

何かと不憫な顔をして可哀そうにも見える、「第七の封印」の死神風のヴィゴ・モーテンセン。

彼とアーティストでありある意味でパートナーであるカプリース(レア・セドゥ)、そして新臓器登録機関の職員で挙動不審だけど可愛いティムリン。

彼らの三角関係は正直、暴力と性衝動が融合したAVみたいな臓器摘出ショーを見て、ファンが興奮して3Pしようとしてるようなもんです(適当)。

根底には性と暴力があると感じます。

この世界では痛覚を失った。それによって痛みというある種の安全装置、ストッパーを人間は失っているのです。

だからこそより過激に、性と暴力の衝動に駆られていく。

それは夜道で互いを切り裂きながらいちゃつく行為になり、臓器にタトゥーを施したり、顔を切り裂いてセックスの代替とする行為に発展していきました。

監視と支配

そこで政府機関は、異常を防ぎ人間を保全するという名目で監視を行い、裏側で暗殺までも行っていく。

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そこに議論が生まれると思います。

確かに過激になっていく人間たちを観ていて、倫理的にぶっ飛び始めているとは思います。

プラスチックをたべる少年の誕生に関しても、その同族たちについても、恐れを抱くことは理解はできます。

それでも、ある意味で人間らしく食、性、暴力をカオスの中で芸術として昇華しようとしているソールたちに対して、単純に殺人を行っている政府側がクリーンかというと難しいと思うのです。

どんな世界でも人は美しいものを作る

何をもって人間らしい、人間であると定義するのかは難しいことと思います。

ただクローネンバーグ監督が言いたいのは、性や暴力などが溢れ、以上であると思われそうな狂気的なカオスの中でも、人間であればそこに美しいものつまりは芸術を生み出せるということかと。

創造をしていくのは、進化していった人だけ。

痛みのない世界、新たな臓器、新たな食べ物。

大きく変わっていく環境といえば今の我々の世界も同じ事。その中で適応し進化し続けていくこと、それ自体が創造であり美しいのかもしれません。

全体にはおもしろい作品ですし、観たことはないし観たら忘れない。あくまで個人的にはものすごく刺さるわけではありませんでした。

刺激が欲しい方はぜひ鑑賞を。あまりアートに傾いた映画は好きではない場合には、興味すら失せるかもしれません。

話題の作品であること自体は確かですので、気になる方は自身の目で確かめてみましょう。

今回の感想は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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