「女神の見えざる手」(2016)
- 監督:ジョン・マッデン
- 脚本:ジョナサン・ベラ
- 製作:ベン・ブラウニング、クリス・サイキエル、アリエル・ゼトゥン
- 製作総指揮:パトリック・チュー、ジョナサン・ヴァンガー、クロード・レジャー
- 音楽:マックス・リヒター
- 撮影:セバスチャン・ブレンコー
- 編集:アレクサンダー・バーナー
- 出演:ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ググ・バサ=ロー、アリソン・ピル、マイケル・スタールバーグ 他
「恋に落ちたシェイクスピア」(1998)のジョン・マッデン監督が描く、政治ロビイストの世界。
主演には、「ゼロ・ダーク・サーティ」(2013)や「オデッセイ」(2015)に出演のジェシカ・チャステイン。彼女は本作でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートしています。またマーク・ストロング、ググ・バサ=ローらも出演しています。
個人的にはジェシカ・チャステインが好きなのと、ロビイストと言う仕事が馴染みがなく興味を持ったので見に行きました。
公開初日の夜の回ですが、結構混雑していましたね。
銃規制強化の賛成派として活動しているロビイストのエリザベス・スローン。
彼女は今審問会にかけられ、窮地に立たされていた。彼女が過去に行ってきたロビー活動の中で、違法かつ倫理的にも許されない盗聴や監視行為が疑われるという。
勝つこと。それが全て。
この銃規制強化の法案キャンペーン。ロビー活動。すべての始まりから彼女は敵の先手を打ち、相手を騙し、決して騙されない。
彼女は審問会までの戦いを振り返っていく。
単刀直入に言って、映画全体としては物足りないです。
物足りないというのは、この作品自体が一つの物語と言うよりも、何かの一部のような気がすると感じたからです。
大きなサーガの一部。そう感じるくらいに、ジェシカ・チャステインのエリザベス・スローンがすごいってわけですけど。
ジェシカ・チャステインはマジで好きな女優ですね。
彼女の迫力と言うのは以前から説得力のあるものだと思っていました。なので超仕事のできる女性、危ないくらいくせ者と言うのもしっくりきます。見事に力強く演じています。
しかし、彼女は同時にその毅然たる姿に内面を薄く透けさせることもできるんですよね。「ゼロ・ダーク・サーティ」でも感じましたが、崩壊寸前まで肉体的にも精神的にも疲弊しきっているのに、立ちつづけ戦い続ける姿が最高にカッコよくセクシーに思えます。
また、このエリザベスと言うキャラはまさしくジェシカのためにあるというほどピッタリなハマり役でもあると感じました。
倫理的にもいろいろ問題があって、異性関係はお金で・・・かなりイヤなキャラになりそうですよね。
しかし、観ていて嫌悪感はありません。おそらく芯が強く、そして終始プロであるからでしょう。その徹底さぶりが気高くすら思えて、それは彼女だから出せたのかなと思いました。
ほとんどワンマンショーと言って良いほどに今作の目玉であり、彼女の出るシーンは全て楽しかったです。
また私は「ベル ある伯爵令嬢の恋」(2013)を観て以来ググ・バサ=ローが好きですが、今作も良い演技をしていました。彼女はおそらく一番エモーショナルに動く人物ですが、隠してきた人生ということや、目立つのが苦手と言うことなど、抑えつつも激しく感情をのぞかせる演技が素敵でした。
全編に渡ってジョン・マッデン監督が貫いた、撮影面もおもしろいところです。
画面構成内にほとんど必ずガラスや鏡が置かれていて、見えるけど仕切りがあること、反射によって対象が相手でありまた自分であるような演出も徹底していますね。
またそういったガラス戸で人物たちを隔離して、全てを共有していない感覚も持たせていました。
マーク・ストロングとの会話でもずっとスローンとの間に何か線を入れてましたね。OPで真正面から話しているようなシーンですら、途中でレンズフレアみたいな光が走っていて、やはりエリザベス・スローンを直接見るなど不可能な感覚です。
と、私としては観ていてすごく引き付けられて楽しかったのですけど、やはりジェシカ・チャステイン一人にかなり依存した作品であること。そして彼女の物語としては最終的に小さくまとまった気もしました。
もちろん審問会での大見せ場は痛快ではありますけど、銃規制強化ロビー活動としてどうなったのかは描かれないですし、私は物足りない終わり方に思いました。
ジェシカ・チャステインは確実。彼女目当てで観て良い作品ですので、そこだけでオススメ。また国民の安全に関わる政策審議でありながら、結局はキャリア、議席、自分の給与だけを考える人間たちしかいない点で超皮肉な作品でもあります。
一人純粋に信念で動くググ・バサ=ローの最後の表情はなんとも言えないですね。
そんなところで感想は終わりです。それでは、また。
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