「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」(2019)
- 監督:アンディ・ムスキエティ
- 脚本:ゲイリー・ドーベルマン
- 原作:スティーヴン・キング『IT/イット』
- 製作: ロイ・リー、ダン・リン、セス・グレアム=スミス、デビッド・カッツェンバーグ
- 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
- 撮影:チェコ・バレス
- 編集:ジェイソン・バランタイン
- 出演:ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・ヘイダー、イザイア・ムスタファ、ジェイ・ライアン、ジェームズ・ランソン、アンディ・ビーン、ビル・スカルスガルド、グザヴィエ・ドラン 他
スティーブン・キングによるホラー小説を原作とした、「IT」。
1990年のTV映画は2017年にリメイクされ、「IT/イット ”それ”が見えたら終わり。」として公開されました。
そして今回はその物語の終結となる続編。
監督は前作に引き続きアンディ・ムスキエティ。
今回はかつて”それ”と対峙したルーザーズが大人になっており、ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・ヘイダーなどが出演、再び悪魔のピエロと向き合うことに。
殺人ピエロのペニーワイズは引き続きビル・スカルスガルドが演じています。
前作に関してはけっこう上手くいっていて好きなので、続編も楽しみにしていました。
公開週はTIFFで忙しく、次の週はターミネーター優先でしたので結構遅れての鑑賞。
公開からは3週目でしたけれど、かなり人は入っていて、前作と同様に若い客層、学生のグループも多かったです。
殺人ピエロペニーワイズを退けたルーザーズ・クラブ。彼らは成長し、それぞれの道を歩んだ。
それから27年の月日が流れ、デリーの町で再び子供の失踪が多発し、バラバラ惨殺死体が発見される。
他の友人たちと違い、一人デリーに残っていたマイクは、誓いを立てたとおりにルーザーズ・クラブを終結させるべく全員に連絡を取るのだった。
「”それ”が戻ってきたら、僕らも戻る。」
それぞれの恐怖、悪夢を形作るペニーワイズを今度こそ永遠に葬り去るために、彼らは自分たちの”忘れたい過去、恐怖”に挑むことになる。
私には「IT」の大人パートというと苦笑いが浮かびます。
TVシリーズ版の最後の最後、ITとの決戦を子供の頃に観たとき、前編のペニーワイズにトラウマを植え付けられた人間としては失意が残りました。
最後がこれかと。
そしてそもそもキングのITを映像化する(特に後半)のが難しいのかなと感じました。
実は今作も、非常によくまとまってはいるものの、最終的にはまあ無難に終わらせたというのが感想となります。
時代が進み、前作もそうですがCG表現によってスケールも造形も、シェイプシフターとしてのびのびとペニーワイズが暴れまわるようになり。
また、レーティングをクリアして残酷描写も強く出せます。
その点は前作から引き続いていて楽しめる部分ではあります。(進化していないのが残念ですが)
しかし何よりも前作を輝かしいものにした要素は、ルーザーズの友情と青春の物語であったと思うんです。
そこにはかつて子どもだった人間のノスタルジーや、抱えた不安、楽しさがありました。
登場人物全員に自分を見いだし繋がることができたのです。
今作は時間を経過させ、大人になったそれぞれを描きます。
再開と想い出めぐり、それは暗黒の記憶、トラウマとの対峙でもあるのですが、実はそこにあまり繋がれませんでした。
各エピソードが展開し、おかげで個別のホラー展開が順番に襲ってくるライドになっていますが、その構成も含めて、どれもがきれいにまとまっているに留まります。
枝分かれした人間の人生の、根っこに立ち返るとしても、どこか全く別の者の人生であり、自分に訴えるところが弱く感じました。
それは結局はこの作品が過去への旅でしかなく、今現在における恐怖を描くものではないからかと考えられます。
あくまで過去にトラウマを抱えたそれぞれの追体験。
それは不完全だから普遍的な怖さや楽しさではなく、各個人に大きく依存した物語におもえました。
もちろん、3時間近い上映時間にたいする全体バランスや、各ストーリーのまとまり具合は素晴らしいです。
しかしそれらの流れを大きなひとまとまりにする以上には到達していないと思います。
綺麗にまとまっているけど、ルーザーズがいうような、団結したからこその強さは持ち合わせていないというか。
バランスの良さは実はホラーのトーンにも悪影響を及ぼしたと感じます。
今作はホラーとしては失敗かと思うんです。
多種多様なクリーチャー、時間おきにビックリさせるなど要素はサービスされています。
中華料理店のモンスター祭りとか、物体Xっぽいスタンリーヘッドとか、なんかデカイ老婆ゾンビなど、バラエティー豊かで楽しいです。
しかし、一つホラーがくれば必ずといっていいほど一つギャグが入るんです。
ノイズにはならないですが、やはりホラー映画としてずいぶん優しくなります。
総合的にはペニーワイズの暴れっぷりとしても、ルーザーズの物語としても綺麗にまとまっている。
ただそれだけに思えました。
輝かしいのはヘイトクライムが横行するデリーに戻ったゲイのリッチーを演じたビル・ヘイダー。
コメディとしてもやはり表現力豊かで、そしてOPシーンから意識される同姓愛者の感じる恐怖を代表しています。彼は本当に素晴らしいです。
やはり前編が良かった分期待したのか、どうにもこのペニーワイズとルーザーズの話を分散しないようにとにかく綺麗に終わるように設計することに終始し、作品としての個性を出すに至らなかった印象でした。
感想としてはこのくらいになります。前作が好きなだけにちょっと厳しめ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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