「ノーカントリー」(2007)

  • 監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
  • 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
  • 原作:コーマック・マッカーシー 「血と暴力の国」
  • 製作:スコット・ルーディン、ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
  • 製作総指揮:ロバート・グラフ、マーク・ルイバル
  • 音楽:カーター・バーウェル
  • 撮影:ロジャー・ディーキンス
  • 編集:ロデリック・ジェインズ
  • 衣装:メアリー・ゾフレフ
  • 出演:ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、トミー・リー・ジョーンズ 他

マッカーシーの「血と暴力の国」を映画化。コーエン兄弟が描く凄惨な暴力の世界。アカデミー作品賞や監督、助演、脚色を受賞。

兄弟の映画の中でも最も暴力的と思う作品で、悪役を演じたハビエル・バルデムは映画史に残る名演を見せています。

また解釈も人によってさまざまと感じるもので、とにかく何度も見続けたい作品。クライム・スリラー映画として私の生涯ベストに入る素晴らしいものです。

テキサス。保安官ベルは近年の凶悪犯罪を嘆く。

その頃ベトナム帰還兵ルウェリンは狩りの最中に殺人現場を発見した。どうやら麻薬取引のもつれらしい。触れない方がいいと思いつつ、彼は残された取引の金を手に。

それからルウェリンは驚異の殺し屋シガーに追われることになり、そしてまたベルがそのあとを追う。

まず間違いなく脳裏に焼き付くのは殺し屋アントン・シガーです。バルデムの演じる悪と死の権化。

おかっぱで気味悪く、落ち着いた物腰と容赦のなさに心底恐怖します。超自然的にすら感じてしまう存在です。

象徴的なアイテムは悪を魅せますね。彼の使う武器は印象的で、音楽のほとんどない映画の中、その音が恐ろしいです。

理不尽とも思える彼のルールで、殺人を犯す。彼にとって目の前の人間は、殺すか殺さないかの2択でしかないように思えます。

追いかけるものをまた追いかける劇ですが、それ自体も楽しめます。戦う術を知るルウェリンは工夫してシガーから逃げ回り、後追いのベルはその凄惨な戦いにただため息を漏らします。

しかしこの追跡がメインではないですから、その外の部分が本質なのかもしれません。

世界の変容。それをベルを通して追っていくことです。金を渡せば動く人々、あっさりと命を奪うシガー。そして人はあっさりと死を迎える。

ベルにはもはやこの世の中の暴力が理解できないのです。

追走劇の末ただ人が死んでいき、死そのものと思えたシガーですら運命からは逃れられません。

この件を通し、そしてモーテルでの恐怖と対峙し、ベルは疲れ引退を考えます。

この世界は彼にはもう厳しすぎるのかもしれません。

そして彼は同じく保安官であった亡き父の夢を見、語ります。それは受け継いだ正義を失ってしまった話。

モーテルで悪と直面できなかったことに感じました。冒頭で自身が言った、「その時が来たらYESと言うしかない」、そうできなかったのだと思うのです。

もう一つの夢は、正義を取り戻すのか、それとも父の場所へ行くのか・・・

私たちはみな知らずに賭け続け、時が来たら受け入れ、世界の一部になっていく。

映画に出ている人物全て、そして私たち全員。

行き過ぎた理不尽な暴力が蔓延する今を描き、同時にそれでも変わらない世界の理を描いているように思いました。

すっごくおススメ(残虐な描写が苦手でなければ)なので是非鑑賞してみてください。

バルデムさんのシガーがもう離れません笑

おしまいです。ではまた。

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