「アトランティス」(2019)

  • 監督:ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ
  • 脚本:ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ
  • 撮影:ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ
  • 編集:ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ
  • 出演:アンドリー・リマルーク、リュドミラ.・ビレカ 他

atlantis movie 2019 ukraine

第32回東京国際映画祭のコンペティション部門で上映されたウクライナからの近未来映画。

ロシアとの戦争を経たウクライナに生きる元兵士と、彼がであうボランティア団体の女性の交流を描いています。

監督はこれまでにドキュメンタリー作品を撮り、今作では撮影や編集も自ら行っているヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ。

今作の上映では、監督と主演俳優のアンドリー・リマルークによるQ&Aセッションがありました。土曜夜の遅い回ながら人も多くいましたね。

あらすじ

2025年のウクライナ。

ロシアとの戦争終結後、兵士はPTSDに苦しんでいた。

故郷は経済的にも打撃を受け、産業は停滞し、平原には大量の地雷が残る。

廃墟となった町と同じく、人々の心も荒みきっている。

兵士はある時、戦場に残された遺体を回収し、検死を行い埋葬しているボランティア団体の女性と出会う。

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本作は上映時間は1時間40分ほどと長くはないのですが、それにしてもカットが非常に少ない作品です。

しかもカメラも定点的で、まるで舞台かのように動きません。

まずその撮影手法に関して、これが近未来を舞台にした作品だと忘れるほどのこの映画世界への没入感を強めていると感じました。

また、カメラが動かないという点に関しては、監督の質疑で聞くことができましたが、背景への目線の確保だったということです。

確かに主人公はいるのですが、今作の本当の主役というのはすさんでしまったウクライナ自体に思えます。

人物は奥行きある画面内にて動きはするのですが、それはあくまでも画面範囲内です。

小さな四角い箱には限界があり、その中ですら、死や荒廃、戦争の残す爪痕があります。

大きなスクリーンに映し出される”上の人”により職を失い、画面内の人々は争いを始める。人は本当に小さく映されます。

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背景に何があるのか、この国に何がおきているのか。

そこに注視させる意味で、映画としては危険な構成や撮り方であっても、必然であるんですね。

それを踏まえると、死に囲まれながらも愛し合う二人が、将来を示すかのように奥行きとなる扉を開けることに大きな意味があるように思えました。

戦後のウクライナ。

劇中に登場するようなボランティア団体は実在し、戦争の犠牲となった方たちを帰すべき場所へと送ります。

劇中で主人公が助けた女性が「一緒に国を出て、欧州で暮らそう」と持ちかけますが、主人公は即答できません。

寒さだけがあり、興業も下火で、しかも主人公の場合にはヘイトも受けるこの地になぜ残るのか。

それは先ほどの、この国を守るために亡くなった者に報いるためなのかもしれません。

彼らが掘り起こされ、個人を判別され、故郷の土に眠る。

その安息を守るために、この冷たい土地を捨てられないんですね。

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サーモグラフィーが呼応する、作品の始まりと終わり。

冷徹さが最後は暖かさになります。

いかに過酷で凍りつくような大地であっても、人々が寄り添えば。

人の心は暖かいのです。

QAでは、目的のはっきりした姿勢が目立ちました。

ウクライナの現在を知ってもらいたいと。

私はウクライナ情勢を知りません。今なおロシアの侵攻が続いているらしいという認識しかありませんでしたが、今作は事態を知る以上に、人に何ができるのか語ったように思えます。

映画としてというとどうなのか分かりませんが、目的をハッキリと持ちブレずにそれに必要な語り方を知る作品として、やはりストレートに響いてくる作品でした。

感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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