「IT/イット “それ”が見えたら、終わり」(2017)

  • 監督:アンディ・ムスキエティ
  • 原作:スティーブン・キング
  • 脚本:チェイス・パーマー、キャリー・フクナガ、ゲイリー・ドーベルマン
  • 製作:ロン・リー、ダン・リン、セス・グラハム=スミス、デビッド・カッツェンバーグ、バルバラ・ムスキエティ
  • 製作総指揮:デイブ・ノイスタッター、ウォルター・ハマダ、リチャード・ブレナー、トビー・エメリッヒ、マーティ・P・ユーイング、ダグ・デビイソン、ジョン・シルク、ニーハ・カイケンダール
  • 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
  • 撮影:チョン・ジョンフン
  • 編集:ジェイソン・バランタイン
  • 美術:クロード・パレ
  • 出演:ジェイデン・リーベラー、ジェレミー・レイ・テイラー、ソフィア・リリス、フィン・ウォルフハード、ジャック・ディラン・グレイザー、ワイアット・オレフ、チョーズン・ジェイコブス、ニコラス・ハミルトン、ビル・スカルスガルド 他

スティーブン・キング原作小説の実写映画化。

過去にもトミー・リー・ウォーレス監督によって1990年に実写映画化されていますね。

同作でペニーワイズを演じたティム・カリーは、映画史に残る名演を見せ、私含めて多くの子供たちにピエロ恐怖症を植え付けたことになりました。

それから30年近く経ってのリメイクですが、監督にはジェシカ・チャステインを主演にしたホラー映画「MAMA」(2013)のアンディ・ムスキエティ。

また今回ペニーワイズを演じるのは、ビル・スカルスガルド。スカルスガルド一家は色々出ていますね。ホントに最近では「アトミック・ブロンド」にも出ていました。

公開からすぐに北米で大ヒットを飛ばし、R指定映画、またホラー映画としての記録を樹立。私もNYCで観る機会はあったのですが、日本公開を待ちました。

R15指定ということで、残念ながら子供たちにトラウマを植え付けることはできませんが、多くの方が楽しんで観ていて、満員になっていました。

そういえば、ペニーワイズは27年置きに現れるという設定ですが、TV版が90年で、今年が17年と、ちょうど27年なんですねぇ。

1989年の夏こと。アメリカのとある田舎町ベリーでは子供の失踪が相次いでいた。

この町に住むビリーの弟ジョージーも、雨のなか遊びに出てから戻っていない。

ビリーはジョージーの失踪に責任を感じながら、彼を探し出そうと調査をしていた。

同じ頃、ビリーは恐ろしい悪夢を観るようになる。現実のようにリアルなその幻覚はビリーの友人たちも見ていた。それぞれの恐れているものに姿を変えながらも、その悪夢には共通して恐ろしいピエロが出てくる。

ビリーたちはいなくなった子供たちを探すため、そして自らの恐怖と対峙するため、”それ”の棲みかと思われる井戸のある家へと赴く。

元々以前のTVドラマシリーズバージョンに強烈な印象を受けた身としては、期待をしながらも不安であった本作。果たして今ペニーワイズを恐ろしく描き直せるだろうか?

心配を胸に観ていると、開始5分で安心しました。これはネタバレなので言いませんが、ペニーワイズ登場のシーンで、今作はしっかりとその意気込みとベースラインを提示して見せています。

「今回はここまで徹底的にやる。」

あの描写には驚きましたが、同時にやはり制作側の気合いに、何か高揚感を覚えました。今回のペニーワイズは期待以上に暴れまわってくれそうだと。

ということでまずはホラーとしての部分から話していきます。

ペニーワイズというアイコンは、ビル・スカルスガルドによってしっかりとティム・カリーの気味の悪さを受け継ぎつつ、また違った造形にもなっていました。

俳優が27歳くらいと若いこともありますが、容姿が少し幼くも見えます。特に頭と髪の毛の感じは、禿げ上がった男というよりも、赤ん坊のようで、通常時に見せる歯もウサギのような感じですね。

私としてはイットの特徴である変容をより際立たせる意味でも、こうしたルックの未熟さは良かったかと思います。

その変容ですが、さすがに現代版アップデートですので、視覚効果が盛りだくさんになっています。おかげで自在なシェイプシフターと、無限地獄的な感覚は増していますが、肌触りは少し物足りなかった気もしました。

先程いったように、少し幼げで、ある程度キレイでもあるので、ティム・カリーの持っていた卑しさのいうな下劣な感覚は薄かったかと。

まあそれは好みですから、しっかり恐ろしいピエロであることに間違いはないですし、容赦のない描写も相まって強烈ですから、ペニーワイズ目当ての鑑賞もオススメですね。

さて、ホラーテイストは実際の本質の一部でありまして、それを除けば今作は、スティーブン・キングの他著「スタンド・バイ・ミー」、また他の映画作品「グーニーズ」や最近観た中だと「キングス・オブ・サマー」(2013)に近い青春映画でもあります。

というか、今作はホラー要素を通して見せる、胸の熱くなる友情映画と言って良いと思います。

なにしろ、ペニーワイズと同じかそれ以上に子供たちそれぞれが素晴らしい。

みんな好きになりますよ。

個性がそれぞれつけられつつ、根幹の部分では共通点をもってひとつチームになる。”Loser””負け犬たち”は最高のチーム。

あのギプスにV(勝利)が上書きされて、”Lover””愛するもの”になる演出も好きでした。

皆で掃除、並んで走る自転車のショットに、湖でのジャンプと水遊び、河原での石投げ戦争など、ホント青春映画ど真ん中な描写があって、キラキラしています。

そうした一方で、それぞれが抱える問題を、真正面からではなく、イットを通して描く。体現されるそれぞれにとっての”恐怖”を乗り越えていくわけです。

現実を直視するほうが、もしかするとペニーワイズと戦うよりも怖いことかもしれませんね。

過剰な愛がもたらす檻、虐待、吃音、孤独、差別・・・この子たちが乗りこえる、つまりは成長するために戦うべきものを殺人ピエロに投影し、恐れないことを成し遂げる。

女性らしさを排除しようと髪を切るビバリーは本当に切なく、ついにつかえずに想いをぶちまけるビリーがカッコいい。

一人じゃ怖い”それ”を仲間と文字通りに叩き潰すシーンは、普通に感動して泣けました。

呪われた町の物語り。

しかしその呪いはペニーワイズという要素ではないのかもしれません。

私は脈々と継承されてきた歪み、無関心の方がよほど恐ろしかった。

ベンが刻印を入れられそうな時、通りすぎた車。人の痛みと恐れに無関心なのです。

そして今作では悪役ポジションであった、ニコラス・ハミルトン演じるヘンリー。最低な奴ですが、彼もまた父に非道な扱いを受けているのです。暴力が受け継がれて、別の対象へ吐き出される。

ある意味で27年おきのペニーワイズより質が悪い。その負の輪廻を打ち砕くのが、負け組たちでした。

ムスキエティ監督は目を引くであろう道化にそのまま道化の役割だけを持たせ、真っ当な青春映画を根底でしっかり描いていると思います。

しっかりペニーワイズを恐がって、子供たちの友情に感動する。とても楽しんだ作品でした。

今作は子供時代。原作には大人の時代がありますから、次作のチャプター2に期待です。

テレビシリーズ版はイットの最終形態にガッカリした覚えがあるので、次はどんな風に来るか楽しみです。

そんなところで、久しぶりに現れたペニーワイズ ダンシング・クラウンの映画でした。ホラーは絶対映画館で、止められず逃げられない状況で見ましょうね!では~

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です