「午後8時の訪問者」(2016)

  • 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
  • 脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
  • 製作:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ、ドゥニ・フロイド
  • 製作総指揮:デルフィーヌ・トムソン
  • 撮影:アラン・マルクーン
  • 編集:マリー=エレーヌ・ドゾ
  • 衣装:マイラ・ラメダン・レビ
  • 美術:イゴール・ガブリエル
  • 出演:アデル・エネル、オリビエ・ボノー、ジェレミー・レニエ、オリビエ・グルメ 他

「サンドラの週末」(2014)のダルデンヌ兄弟の最新作。

昨年のカンヌでも上映されていたようですね。上記作は私の大好きな一本ですから、今回も楽しみにしていました。

公開日にさっそく行きはしたものの、感想はけっこう遅めに。前日にはチケットを買ったのですけど、当日はかなり混んでいて満席に近かったですね。

外科医のジェニーは、研修医と共に診療所で代診をしていた。

ある夜、診療時間を過ぎた8時ころに、玄関の呼び出しブザーが鳴った。時間も遅く、ジェニーは応答しなくていいと研修医を止める。

次の日、警察が診療所を訪ねてきた。女性の遺体が工事現場で発見され、手がかりを探しているという。診療所の監視カメラを確認すると、そこには助けを求めて呼び出し音を鳴らす若い女性の姿があった。

あの時ドアを開けていたら・・・ジェニーは身元も分からず埋葬された女性が誰だったのか、一人調べ始める。

ダルデンヌ兄弟の作風は相変わらずというところで、長回しに自然音に絞っている音回り、現実味を持って描かれる人物たちなど一定レベルの完成度を誇っています。

中盤で出るドライブシーンのワンカットとか、すごいハラハラしましたね。この作品は事件の後ジェニーが周囲に聞き込みを始めるころから、スリラー映画のような緊張をはらんでいきますから、カットが長いことで生まれる怖さは巧いものです。

ミステリアスな事件を前に、主人公ジェニーはサンドラよろしく拠り所ではない、敵地と言っていい場所を巡り歩いていくのですが、そこでは完全に彼女が探究者であり、またまるで聖職者のように会う人が彼女に告白していくのです。

アデル・エネルは終始無表情もしくは少しむすっとした顔でいますが、彼女が医師である点をこの道のりでは活かしていましたね。

人でありながら、職業上秘密を守る義務がある。だからこそ神父の前でのように、告白をしていきます。それ故にアデルも様々なリアクションに対し少し冷たいような感じがあったのでしょうか。

自身は研修医に言ったように、患者と関わりすぎないことを目指してきたジェニー。

彼女は無関心から関心へと変化し、社会に渦巻いている問題にぶつかりつつも、亡くなった女性の身元を突き止めようとする。

医師という仕事柄、治し生かすことを目指すジェニーにとって、責任があるとは言えずとも、やはり若い女性の死は衝撃だったのでしょうか。透けて見えるところには、人の無関心があり、死すら軽んじられてしまう中で、そのギリギリの尊厳だけは守りたいように思えました。

広げてみると、移民や貧困など社会性もあります。そして描かれている人たちはやはり手触りとしてはかなり現実的です。

荒涼とした中でそれでも腑に落ちなかったのは、主人公ジェニーの心情。というかジェニーは役割を持って、さながら裁きはしないものの、真実を洗い出す使者としてしか見えませんでした。彼女という人間のドラマは、研修医とのものを含めても物足りなく感じます。

役割であって、人物ではないように思え、なにより役割として動き出す、関心への転換すら、動機が見えませんでした。

という事で、ある程度の質感はやっぱりすごいと思うのですけども、

今作ではどうにも、描くもののために役として置かれた人物を動かした作品に思えて、個人的にはそこまでハマらなかった印象です。

「サンドラの週末」の方が私は好きだったかな。ともあれ、ダルデンヌ兄弟新作ですし、是非見てほしいものではありますね。

そんなところで感想はおしまいです。それでは、また~

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