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「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」”Everything Everywhere All at Once”(2022)

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「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022)

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作品概要

  • 監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
  • 脚本:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
  • 製作:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ、マイク・ラロッカ、ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート、ジョナサン・ワン
  • 音楽:サン・ラックス
  • 撮影:ラーキン・サイプル
  • 編集:ポール・ロジャーズ
  • 出演:ミシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クァン、ジェイミー・リー・カーティス、ジェームズ・ホン、ジェニー・スレイト 他

「スイス・アーミー・マン」で奇っ怪な世界観から人生を描き出したダニエルズのコンビが、マルチバースの世界に巻き込まれた平凡な主婦を描くアクションコメディ。

主演は「シャン・チー テン・リングスの伝説」などのミシェル・ヨー。

また同作に出ていたステファニー・スーがマルチバースを破滅に追い込む主人公の娘役で出演。

その他「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」など子役で有名だったキー・ホイ・クァンが主人公の夫を演じています。

その他ジェイミー・リー・カーティス、ジェームズ・ホン、ジェニー・スレイトらが出演。

SXSWのオープニング、絶賛を浴びての北米でのヒット。A24が配給権を得て広げていきますが、日本でも配給のGAGAがかなり頑張ったのか、すごく大きな公開規模になっていますね。

回数はすくなくともIMAX上映もあります。

今回は楽しみにしていたこともあり公開週末に早速行ってきました。IMAXではなくて通常の方でしたが。話題になってはいるのか結構混んでいましたね。

ただ映画好きの年齢層高めって感じで、若い人はあまりいなかったですね。

「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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アメリカでコインランドリーを経営する中国系アメリカ人のエブリン。

大量に溜まった請求書とその経費申請のために国税庁へ行かなくてはいけない彼女には他の問題も山積みだった。

彼女の娘にはガールフレンドがいて、その事実を認めるのがエブリンには難しい上に、より保守的な父が中国から新年を祝うパーティのためやってくるのだ。

さらにエブリンの知らないところで、夫のウェイモンドは離婚申請書を用意していた。

書類を抱えて国税庁へ向かう途中、ウェイモンドが急にエブリンに告げる。

「僕は別の宇宙から来たウェイモンドだ。多言宇宙が危機に陥っている。救えるのは君だけだ。」

意味不明の出来事に困惑するエブリンだったが、ウェイモンドに付けられた装置を通じ、現在の次元とは異なる次元の自分自身に繋がることができたのだった。

感想/レビュー

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珍妙な旅の先に人の生を描く

「スイス・アーミー・マン」を初めて観たのが日本公開の2017年のこと。

そこからもう6年も経っていますが未だにあの奇妙さは他のどの作品にも似ていないおかしさがありますね。

ダニエル・シャイナート単独の「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」はファンタジーな要素があまりなかった(あれは実話なので)ため、やはり今作も「スイス・アーミー・マン」のDNAが強いのではないかと感じました。

奇っ怪なコメディと突飛な設定から、やはり人生の苦さを描く。

マルチバースを展開させるというよりも、誰しもが経験し想像を巡らせる可能性の探求。

そして終着点はそのファンタジーな世界からは予期しない今の人生の讃歌。

はじめはその設定とかシュールな笑いに困惑しつつ乗っていくと、その先に嗚咽を伴う人生の輝きを見せてくれるのです。

人を選びまくるテイストとユーモア

さて、おおよそは感動的な作品であるのですが、しかしコメディ映画としては結構人を選ぶ映画なのかと思います。

これまでの「スイス・アーミー・マン」、「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」もそうだとは思いますが、それらにハマらなかった人は今作もちょっと苦手かもしれません。

好きだというなら今作もいいかも?

観たことのない人にとって、このシュールさともブラックさとも取れないコメディのセンスは、全体に好き嫌いを分ける大きな要素でしょう。

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マルチバースをジャンプするための突飛な行動が必要な点とか、指がソーセージとか言う意味の分からない世界とか。

ふざけ倒しているようにも思えますね。

個人的にはハマる点もあれば微妙に乗り切れないところもあったり。

マルチバース×マトリックス

さて話としては多元宇宙論に基づくもので、やはり昨今なら「スパイダーマン ノーウェイホーム」「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」が思い起こされますが、実際に宇宙を旅してもう一人の自分と出会うタイプではないですね。

むしろ媒介としてそこに行ったり、逆に多元宇宙の自分からスキルをインストールしたりと、ウェイモンドの様子を見ると「マトリックス」に近い世界です。

ネオが人生を生きていく中で、”何かがおかしい。うまくハマっていない。”と感じるように、エブリンも彼女の毎日にぼんやりと雲が立ち込めている。

彼女には少なくとも解決すべき課題がファイナンスでもドメスティック(家庭)でもあるわけで、さらにこの旅で過去にも向き合っていく。

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人生とは選択の連続

誰だってあのときこうしていたら?という選択への後悔や疑問を持ち合わせているはずです。

「ラ・ラ・ランド」でのセブとミアのあの魔法のようなカットがありますが、エブリンもまた夫と共に故郷を去らなかったら?という思いを抱え、それをビジュアルとして体験する。

「あなたと結婚しなければ、私は輝いていた。」率直で厳しくしかし真実味を持ったセリフで強烈でした。

あり得たかもしれない可能性を次々と視覚的に繰り出すことで、ミシェル・ヨーもステファニー・スーも変幻自在になっていますからそれも魅力。

今解決すべきは目の前のツケ

どんどんと多元宇宙論の旅をして、石まで登場した中到達していくのはやはり今現在の自分の人生を見ていくことです。

目の前の人生にどう対処すればいいかわからない。

積まれた税務申告書は複雑でありそこに様々な人生が詰まっている。

娘のガールフレンド認めないのは、どちらかといえば父にもう一度拒絶されるのが怖いから。

そして愛を伝えられず「また太ったわね。」なんて言ってしまう。

スーパーヒーローでもなく偉人でもなく、高度な科学者でもなくて。

本当に一般市民としてのレベルで家族に関わる悩みを描いています。

中国系移民であること、女性としてマイノリティとして、拒絶された者として。

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可能性は無限大だから

突拍子もない設定と笑いが最後は誰もが触れやすい地に足がついた話に着地していく。

若い世代の人生への虚無感を、生活や技術は豊かで満たされているという意味での円と、それでいて精神的に欠落し将来に希望を持てない穴とで、ドーナツで表現しているのが良かったです。

ジョイは母の拒絶からすべてが嫌になり、それゆえにマルチバースを破壊し続ける。

マルチバースとは可能性です。つまりジョイは自分自身の可能性を自らすべて殺戮していっているのです。

エブリンはマルチバースを知り、自分の可能性を知った。人生が無限大であることを。

精一杯で、離婚を考えている崩壊寸前の家族。

英語と中国語という話す言葉の違いで家族の隔絶を示す。

もうだめだ。自分には限界だ。やはりこんなものなのだ。

底辺に落ちたと思ったエブリンに示されるのは、最下層にいるからこそ、あらゆることができるという全肯定です。

やっぱりダニエルズ監督は人生を、小さな人間を全力で肯定しますね。

マルチバースと追う題材から母と娘、そして中年女性などというドラマ系映画のテーマを見事融合させた作品。

脚本的には本当にいいですが、いかんせんクセが強すぎるきらいはあり、正直ギャグに退屈したところもあるのは事実でした。

しかし大きな事件になっている映画だとも思うので、気になる方はぜひ映画館で鑑賞を。

というところで感想は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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