「MAMA」(2013)
- 監督:アンディ・ムスキエティ
- 脚本:ニール・クロス、アンディ・ムスキエティ、バルバラ・ムスキエティ
- 原案:アンディ・ムスキエティ、バルバラ・ムスキエティ
- 原作:アンディ・ムスキエティ『Mama』
- 製作:バルバラ・ムスキエティ、J・マイルズ・デイル
- 製作総指揮:ギレルモ・デル・トロ
- 音楽:フェルナンド・ベラスケス
- 撮影:アントニオ・リエストラ
- 編集:ミシェル・コンロイ
- 出演:ジェシカ・チャステイン、ミーガン・シャルパンティエ、イザベル・ネリッセ、ニコライ・コスター=ワルドー、ダニエル・カッシュ 他
「IT/イット それが見えたら、終わり」のアンディ・ムスキエティ監督が2013年に初監督したホラー映画。
何かに育てられてた幼い姉妹を引き取ることになった女性と少女たちが”ママ”と呼ぶ存在の謎を追うミステリーの入ったホラー映画になります。
主演はのちに監督と「IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり」で再度タッグを組むジェシカ・チャステイン。
ちなみに今作でお姉ちゃんの方を演じた、ミーガン・シャルパンティエも、ITの前編にて薬局のお姉ちゃんを演じていました。
ムスキエティ監督の作品はあまり見たことがなかったのですが、遡る意味もあり、またジェシカ・チャステインは好きなので鑑賞。
妻を殺害し、幼い娘二人を連れ逃亡した男は、途中で事故を起こし、山小屋に身をひそめる。
しかしその中にいた何がか、男をひねり殺し、娘二人は森の中の小屋で孤立してしまった。
ただし、何かが二人を守り、世話をしたおかげで5年後に発見されるまで二人は生き延びた。
男の弟は姪の二人をずっと探しており、社会性が欠如した二人を引き取り、交際しているアナベル含めて4人で暮らし始める。
だが姉妹は”ママ”と呼ばれる存在と話したり遊んだりしているようで、怪奇現象が次第に起き始める。
いわゆるジャンプスケアタイプのホラー映画では全くなく、「マローボーン家の掟」「怪物はささやく」「永遠の子どもたち」などのドラマ性が強いタイプのホラー映画でした。
もちろん作品のホラーテイストは怖さがしっかりあり、不気味さや古くからの幽霊伝説のような設定など非常に巧く世界が構築されています。
色彩の青白い感じでの統一や闇、前後配置での心霊ショットとか、ムードが調和的にまとめられていて、不気味ですが美しくも感じます。
ママに関しては、浮遊する、水中にいるような状態から床や壁を這いつくばる様まで、異形の怖さや気味の悪さがあり、どことなくJホラー的にも思えますね。
長身ながらも痩せている難病を活かしたハビエル・ボテットのママの造形もここには貢献しています。
姉妹の使い方としても、まあ言ってしまえば観たことはあるものではあるのですが、見えない何かとの会話や示唆的な画など煽りは十分だったかと。
そして何にしてもこの作品において一つ軸となるのが、ジェシカ・チャステイン演じるアナベルの成長、変化でした。
ホラーではモンスターとその謎を追うだけで、あとは怖がらせて終わることもあるかと思いますが、アナベルの話があるおかげで私は楽しめました。
ジェシカ・チャステインの変貌も見事でした。
ブラックの服にブラックヘア、これまた濃いブラックのアイシャドウに肩から腕全体のタトゥー。非常にパンク。
その風貌や序盤の態度は、完全に姉妹と上手く距離もとれず、できれば離れたいと示しています。
それが次第と家に3人だけになり、心配したりちょっと打ち解けたりと距離が近づいていく。
「ママじゃない。アナベルって呼んで。」なんて突き放していたのに、彼女自身が柔らかくなり、あの大おばさんを追い払うくらい姉妹を守ろうとしだすのは良かった。
ここには一人の女性が、母になっていくような物語があったと思います。
そのうえで、まあ執着してしまうモンスターペアレントであるママとの対決へと進むわけですが、最後の方は怖くないです。
幽霊の全体像が結構出てしまうと、最初の衝撃後は恐怖は激減するのは仕方のないことではありますが。
ただ哀しいですね。
この”ママ”の子どもへの執着というのにもまあ理由がるわけで、そして父を奪ったということはあるにせよ、二人を5年間生きながらえらせた事実もあります。
ムスキエティ監督は複数のプロットをうまく統一していると思いました。
女性の心の変化や家族の形成と、死の世界へと連れられるおとぎ話、また幽霊伝説。
全体の作品トーンがしっかりしているところが、ジャンプスケア頼りでアイディアだけのホラーとは異なると思います。
今回の感想はこのくらいになります。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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