「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」(2012)
- 監督:デレク・シアンフランス
- 脚本:デレク・シアンフランス、ベン・コッチオ、ダリウス・マーダー
- 製作:リエット・ハウエル、シドニー・キンメル、アレックス・オルロフスキー、ジェイミー・パトリコフ
- 製作総指揮:マット・ベレンソン、ジム・タウバー
- 音楽:マイク・パットン
- 撮影:ショーン・ボビット
- 編集:ジム・ヘルトン、ロイ・パテイン
- 出演:ライアン・ゴズリング、エヴァ・メンデス、ブラッドリー・クーパー、デイン・デハーン 他
「ブルーバレンタイン」(2010)で多くの人の心をへし折り、恋愛トラウマを植え付けた鬼才、デレク・シアンフランス監督によるクライムドラマ。
今回も主演にライアン・ゴズリングを迎え、さらにもう一人ホットなブラッドリー・クーパーも共演。そして注目のライジングスター、デイン・デハーンも出演しています。
日本公開は小規模でしたが、今度廉価版ブルーレイなども出るのでキャンペーンとしてはそこそこの待遇です。空気が好きで2回ほど観に行きました。
バイクスタントのルーク・グラントン。久しぶりに恋人と会うと、彼女との間に子供が生まれていたことを知る。
赤ちゃんのために稼ごうとするが、できることは少ない。
そして、知り合った男に誘われ銀行強盗を始める。バイクの腕前は一級の彼は難なく逃亡し成功を続ける。
その件に関わったのは、最近子供をもうけた新人警官のエイヴリー。彼とルーク、そしてそれぞれの子供たちまで、話は続いていく。
話としては3つ。
ルーク、エイヴリー、そしてルークの子ジェイソンの順に流れます。人生を追う話ですので、上映時間は140分と長くなり、そしてドラマ的には派手に盛り上がるわけではないのです。
だからでしょうが、だるく感じてしまう人もいると思います。
ドラマ部分に感動があるかというと私もないと思います。そこはリアリズムを感じるからこそなんですが、誇張や美化は無いように思えます。
3人の人生の記録のように感じますから。
私が感じるのはその実在感。ルークのあのイレズミだらけの体でシャツを裏返してきている感じ。やることやりたいけどやはりワルで方法がダメなところ。
エイヴリーはすっごく人間臭いです。正義感を持っていてもある種汚い。でもその汚れ方が至極リアルな人に思えます。
もちろんジェイソンのストーリーでは抱え込む感じや十代の不安定さもリアルでした。
デイン・デハーン。やはり注目の若手俳優です。かっこいいですが、その目にどことない闇を見せられる俳優で、純真よりも少し影のある若者が似合います。
彼のストーリーに入ると、やはり今までの集約点となるので感慨深いものは多いです。
そこは私がこの映画で好きなもう一つの要素、画の呼応や繰り返しにありますが。
ルークに付いていく、近いバックショットはジェイソンにも使われ、何かに進んでいくことを表していますし。二人がバイクと自転車で道を進むショットは完全に呼応しています。
また3人ともある物事に直面していると、ガラス越しや金網越しの画になり現状に囚われた感じが。
顔にあたるライトや長回しでの撮影など、画面構成とカメラワークだけで、物語と人物の変化や呼応が伝わってきます。
印象的なのは画面だけでなく、音も。一時の幸せに流れる音楽。次のシーンに食い気味に入る音。音の運びと使い方でリードしたり繰り返したり。すごく好きな作りでした。
最後の最後、ジェイソンが走り去ってくバイク音。画面が暗くなってパトカーのサイレン音がかすかに聞こえると父の道を感じて切なかったです。
ただ、ここの最後の部分がとんでもなく好きではありますね。
それまでの喰い気味で引っ張る編集がこのラストシーンだけなく、人物がなすすべもなく引き込まれるような流れから、ここだけはジェイソン自ら道を選んでいく。そうして物語が閉じる見事さでした。
確かな実在感の人物、画面構成やシーン。音楽。
Mike Pattonによるサントラは良いですよ。人物の人生と同じ時間は、私の中でも流れている、そんな気持ちにさせてくれる映画でした。
というところで感想おしまい。
感動のドラマを期待するとおススメはできないですが、ある人間たちの人生が繋がっているその感覚は観ている方にもつながりを感じさせるようです。感じてみたい方にはおススメ。
それではまた~
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