「ジョジョ・ラビット」(2019)

  • 監督:タイカ・ワイティティ
  • 脚本:タイカ・ワイティティ
  • 原作:クリステン・ルーネンズ『Caging Skies』
  • 製作:カーシュー・ニール、タイカ・ワイティティ、チェルシー・ウィンスタンリー
  • 製作総指揮:ケヴァン・ヴァン・トンプソン
  • 音楽:マイケル・ジアッチーノ
  • 撮影:ミハイ・マライメア・Jr
  • 編集:トム・イーグルス
  • 出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス、スカーレット・ヨハンソン、トーマサイン・マッケンジー、サム・ロックウェル、アルフィー・アレン、スティーブン・マーチャント、タイカ・ワイティティ 他

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「マイティ・ソー/バトルロイヤル」などのタイカ・ワイティティ監督が、ナチス政権下のドイツで空想上の友人アドルフと共にナチスにあこがれる少年を描くコメディドラマ。

主演はローマン・グリフィン・デイヴィス。イギリスの子役で今作にてゴールデングローブノミネートなどの大躍進。

また母親役にはスカーレット・ヨハンソン、そして彼女が保護する少女は「足跡はかき消して」で大注目のトーマサイン・マッケンジーが演じます。

その他サム・ロックウェルやスティーブン・マーチャントが出ているほか、主人公ジョジョの心の親友たるアドルフ役は、監督タイカ・ワイティティ自身が演じます。

ちなみにこちらの記事を書いている時点ではアカデミー賞に6部門ノミネートとなっております。

題材がどうってわけではなく、タイカ監督の新作ということで楽しみにしていました。始まったばかりではあるものの、意外にちいさなスクリーンでした。そのためかサービスでいでもないのに満席でしたね。

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第二次世界大戦の終盤。

ナチスにあこがれるドイツ人少年のジョジョは、新兵育成のための少年隊キャンプに参加するも、先輩の度胸試しに失敗し、臆病な”うさぎのジョジョ(ジョジョ・ラビット)”とからかわれてしまう。

ジョジョの唯一の支えは、彼だけの心の友達アドルフ・ヒトラー。

立派なナチスになるために奮闘するジョジョであったが、なんと彼の家の屋根裏にユダヤ人少女がいるのを発見してしまう。

母が匿っていたその少女と関わるうちに、ジョジョの心が変わっていく。

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タイカ・ワイティティ監督は「マイティ・ソー/バトルロイヤル」にてビッグバジェット作品を扱い、ハリウッド注目の監督になりましたが、再びこのシニカルかつ笑えてそしてとてつもなく愛情のこもった家族の物語に戻ります。

非常に不謹慎かつしかし鋭く、どこか心温まる作品ではありますが、個人的には総合で観ると「Boy」「ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル」には及ばない印象。

決して悪い作品というわけではないですが、響く部分と上手くいっていない部分が両方あったと思います。

子どもの視点からカラフルな色彩で描かれる戦争とナチズム。

その中で繰り広げられていくのは、確かに歴史の事実に基づく非常に過酷で残虐な行為です。

ユダヤ人の迫害やそれを助長する教育、ナチスの敬礼や秘密警察の捜査、反ナチスに対する処刑。

これらすべて含めてコメディに落とし込むために、人を選ぶのは間違いないと思います。不謹慎であるゆえに、これは笑いの対象にしてはいけないとの見方もあるでしょう。

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個人的にはヒトラーやナチズムを徹底してバカにし、そこから恐怖や暴力といった力を奪い去った点で非常に意義のあることだと思います。

彼らを絶大的な何かとして見せず、滑稽で間抜けな存在として終始描くことで、少なくとも作品内では怖くない。

ただその怖くなさと、トーマサイン・マッケンジー演じる屋根裏のユダヤ人少女エルサとの関係を考えると、ハッキリしてきませんでした。

現実問題としてはやはり「帰ってきたヒトラー」のように決して侮ってはいけない相手がナチスです。笑っていた結果恐ろしいのはKKKもですね。

今作ではジョジョの視点から戦時中のドイツを見るわけで、しかしそこでコメディとスリラーがぶつかってしまように感じます。

笑うべきか恐れるべきか。どちらに振っても、どちらかが上手くいかない気がします。

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間違った方向へ進まないジョジョは、最初に示されるウサギすら殺せない精神で明確です。

エルサとの交流そして母からの愛情をもって、次第にジョジョの心が揺れ動きます。アイドルと愛の間で葛藤したジョジョが愛を選ぶ。

話としては非常に心地よいもので、アイテムの機能のさせ方もスマートかつ役者もみんな素晴らしい。

スカーレット・ヨハンソン演じる母、そして何よりトーマサイン・マッケンジーの素晴らしさ。あの丸い目で、繊細な感情も全て伝えてしまう類まれな俳優ですね。

しかしだからこそ各人物をもっと掘り下げても欲しかったかな。

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誰しもが何かを失っていく戦争の中で、それでも誰かのために行動する。大きなことは変えられないのかもしれないけど、優しい愛撫で慰めることならできる。

そして誰かを愛するということは、それだけでナショナリズムも差別も戦争も超える。

次第に色彩は薄れていくけれど、ジョジョが愛に生きると誓う時、戦争も終わります。人が他者を愛することを選べば、戦争はなくなるんですね。

タイカ・ワイティティ監督は疑似家族と愛情をもって再び心温まる作品を、不謹慎な笑いと共に描きました。

そこには意義があり、確かな演技力の終結もあり素敵で心地よい気分になります。

しかし、一方で、本当にこの題材に関して恐れや警鐘ぬきに、ただ良い気持ちに浸って良いのかと不安にもなる作品でした。

合う部分合わない部分がありましたが、とにかくトーマサイン・マッケンジーがさらに知られていくことを願います。

感想としては以上です。

心温まる作品ですし、発表前に観れるオスカーノミニ―でもありますので、是非劇場へ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ではまた次の記事で。

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