「一人っ子の国」(2019)

  • 監督:ナンフー・ワン、ジリアン・チャン
  • 製作:ナンフー・ワン、ジアリン・チャン、クリストフ・ヨルク、ジュリー・ゴールドマン、クリストファー・クレメンツ、キャロリン・ヘプバーン
  • 製作総指揮:サリー・ジョー・ファイファー、ケン・ペルティエ、ロイス・フォッセン
  • 音楽:ネイサン・ハルパーン、クリス・ルギエロ
  • 撮影:ナンフー・ワン、ユアンチェン・リュウ
  • 編集:ナンフー・ワン

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中華人民共和国における人口の抑制政策であった一人っ子政策を主題にしたドキュメンタリー映画。

政策下に生まれそして自分自身も子をもうけたナンフー・ワン本人が、故郷に帰り肉親や当時政策を遂行した委員であった人々にインタビューをし撮影されたものです。

作品はサンダンス映画祭で上映され、審査員大賞を獲得、批評家から非常に高く評価されています。

私も義務教育課程で中国の一人っ子政策は習いましたし、2015年に終了したのは記憶にまだ新しいです。

ただ、子ども二人目以降はお金がかかるらしいとかそんな話を学校で友達と話したくらいで、具体的な事項や政策の遂行の仕方などは全く知りませんでした。

配給はAmazonということで、Amazonプライムビデオで配信されていました。

ここ最近はゆっくりドキュメンタリー映画観るのにハマったこともあり、また評価の高さからもかなり楽しみにして観賞しました。

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ナンフー・ワンは1985年に中国に生まれる。その後渡米してアメリカ人となり、ドキュメンタリー映画の監督として活躍する。

彼女は自分の生まれ故郷に単身帰ることにした。それは彼女が幼い頃、住んでいた村に溢れていた政策の取材をするためだ。

中華人民共和国政府が、中国の人口爆発に対して、将来的な資源の枯渇を防ぐために打ち出した政策”一人っ子政策”。

ナンフーは自分自身には弟がいて、それが恥ずかしかった幼少気から振り返り、家族そして村の助産婦や元政策遂行委員など政策に影響を受けた様々な人にインタビューをしていく。

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なんとなく気軽な感じで、政策、プロパガンダの批判などが入る映画だろうと思っていた身としては、想像をはるかに越えて非情で過酷、人の業の残酷さにうちひしがれる作品でした。

正直いうとある程度の覚悟を持って観賞した方が良い作品です。

(どおりで説明タグに暴力だの不穏なタグが付いているわけですね)

まずナンフー・ワン監督ですが、デビュー作として撮った中国における児童への性的暴行を扱うショート”Hooligan Sparrow”がそのままアカデミー賞のショートリストに入る腕前です。

もともと結構暗部に切り込んでいくような、作品を撮っていたんですね。

そこで今作、ナンフー・ワン監督が描き出すのは、人々の目から見た一人っ子政策です。国民それぞれの人生から見た政策。

だからこそ、そこには美化も脚色もありません。

それぞれが体験したことと、その想いが、本人から語られる。

実際、始まりこそ政策の目的などが外部視点(ここでは海外メディアによる報道)で語られましたが、最後まで政策がどうだったなどとは出てきません。

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ナンフー・ワン監督自身が非常にミニマムなホームビデオのような形式で重ねるインタビュー。

それは政策の実態と人々の人生への影響を剥き出しで見せていき、非常に知識として豊富で上質です。

しかし、インタビューにおいて相手を単なる取材対象とするような、リソースと見るような冷たさはなく、もっと個人的な関わりと熱意があります。

もちろん監督自身の家族や村、国のことですし、思い入れは強いと思いますが、視点に共感とか同情が強く出ていると思います。

政策の遂行委員も何にもの強制不妊手術をした助産師も、そして赤ちゃんたちを拾って施設へと売っていた人々も、悪人として映していません。

むしろ当時仕方なく政策に関わった、自分なりにやれることをやった人々として見ています。

で、その断罪するわけではない姿勢がまた痛烈になります。

出てくるのが政策の実行者たちであって、立案企画した連中じゃないんですよ。

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それぞれが色々な形で傷つきそれを背負っていまなお生きている。

インタビューの中での質問から、途中で閉口してしまう彼らを見ていると、決して責め立てたいわけではないことがうかがえますよね。

むしろ様々な人を追い込み、一生抱えてしまう罪悪感や苦しさを植え付けた政策の恐ろしさが際立ちますけど

国を豊かにするという空約束。気味の悪いユートピアを打ち出すプロパガンダの裏で、豊かどころか多くの人々が傷ついています。

中国国内だけではなく、海を越えてその苦痛は続く。

ゴミの山に紛れる黄色い袋。診察台に縛り付けられる妊婦。数を記録している元助産師。

覚えておかなければいけないのはこれらの光景です。

目を向けるのに勇気がいる歴史の暗部かもしれませんが、プロパガンダの歌や劇を残してはいけません。

同じ事を繰り返さないためにも。

政策で堕ろされなければ、殺されなければ、今同い年くらいの人がいた。

ナンフー・ワン監督の個人として関わる姿勢、決してそらさない目線が深い観察と知識をくれながら、人々を引き裂く政策への警鐘を鳴らす作品でした。

辛いけれど見なくては行けない事実。是非一度観賞をオススメします。

今回の感想は以上。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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