「スナップショット」(2018)
- 監督:メラニー・メイロン
- 脚本:ジャン・ミラー・コラン、キャサリン・コルテス
- 原案:ジャン・ミラー・コラン
- 製作:ジャン・ミラー・コラン、リー・アン・マトゥセック
- 音楽:デヴィッド・マイケル・フランク
- 撮影:ミハエル・ネグリン
- 編集:ミハエル・ネグリン
- 出演:パイパー・ローリー、ブルック・アダムス、エミリー・バルドーニ、エミリー・ゴス、シャノン・コーリス 他
女優であり数々のTVシリーズの監督を経験するメラニー・メイロン監督が描く、親子3代で過ごす週末と、祖母の過去の愛の物語。
主人公のローズを演じるのは「ハスラー」などのパイパー・ローリー。すごい久しぶりに観た。
他にも娘役にブルック・アダムス、孫にはエミリー・バルドーニ。そして若き日のローズ役にシャノン・コーリス、また最愛の人となるルイーズ役はエミリー・ゴスが演じています。
インディ・フィルム系の記事の中でふと見つけて気になった作品ですが、日本公開や配信は特にないようなので、海外版ブルーレイを購入して鑑賞。
川の近くにあるローズの家に、週末の間娘と孫が訪れる。
娘のパッティは最近夫を亡くし、しかも死の直前に夫の浮気を知ってしまい荒れている。
孫娘アリソンは自分の仕事がやっと軌道に乗ったが、彼氏の再就職先が離れているせいで引っ越すかどうかの決断を迫られていた。
抱えごとの多い親子に比べ、祖母のローズは常に落ち着いて二人にアドバイスを与えるが、彼女にも胸の奥に秘めたことがあった。
家族にも打ち明けていない秘密、それは古いスナップショットを見つけたことで鮮やかに思い出されていく。
インディフィルムらしいちょっと完成されていない荒い手触りがあり、まただからこそ、この作品に描かれる愛のように、小さくともきらりと輝く大切なピース。
叙事詩的な愛の物語ではないですが、切なくそして本物であると感じる作品でした。
構成としては祖母の過去の愛が挿入されていく中に、娘の現在の愛の喪失、そして孫娘の未来と3時間軸それぞれを示すように親子が並んでいます。
それがそのまま各時代の女性それぞれの代表のように展開され、しかしいずれも否定的には描かれず、私としては全時代のあらゆる女性を肯定する作品に思えます。
祖母ローズは男性によりその人生を決められ、自分で動くこと自体の発想がない時代の女性。
そして娘は夫との死別により、一番大きい経済的な破綻を経験します。あまりに男性に依存しており、自立が難しい。しかしローズと違うのは、浮気に対しては声を上げる点ですね。
最後の孫アリソンですが、現代の女性でしょう。自身のキャリアを追い、中絶の選択を持ち、そしてまた秘める思いもある。より自立した女性です。
それぞれの人物にもドラマが広がり、とにかく言えるのは、全員が自分の生を生きていない、または生きてこれなかったことが共通します。
そこでたびたび挿入されている過去のルイーズがすごく輝いて見えました。
ルイーズはとにかく自由で、知性に溢れ好奇心旺盛で活発で。”Bold”(大胆)なんですよね。どちらかといえばシャイで保守的なローズが惚れるのも頷けます。
ルイーズのおかげで世界は晴れ渡り、そして可能性や自分の力、生きることについて学んだのです。
自分の生に正直に生きることが、現在の時間軸の親子と対比され、ひときわ美しく映ります。シャノン・コーリスとエミリー・ゴスのケミストリーもすごくよくて、キラキラしていました。
しかし同時に、彼女たちの過去のパートでは、現在と違って決して許される関係ではないという背景の残酷さも浮き彫りになっていきます。
極めつけはやはりルイーズとローズの関係の終わりでしょうか。
女性同士であるがゆえに(あくまで生殖として)子どもをもうけることができない事実。序盤にルイーズはズィーとは子どもを持たないと決めてると言いますが、ローズは別でした。
もしあそこでルイーズと駆け落ちしていたとして、当時の社会的にも生きていくのは大変だったでしょうし、何よりそうなればパッティもアリソンも生まれてこない。
全てを抱え運んできながら、最後にそれがこぼれだすようなパイパー・ローリーの演技にはとても強く胸を打たれます。
実は、今作のお話は実話であるとのこと。
LAのローカルTVに監督が出演したクリップを観たのですが、今作の製作を務めるジャン・ミラー・コランのおばあさんが、急に誰にも話したことの無い女性について語り、映画の通り、”The Love of My Life”(人生最愛の人)と言ったのだとか。
時代のせいで、最愛の人をただ思うだけにとどまった人がどれだけいるか考えると、切なく苦しくなりますね。
男性側の描写がかなり少なく掘り下げが不足に思えたり、全体にはテクスチャーが薄めに感じる部分もあります。
しかしタイトルの通りに、ある女性のその一瞬を切り取って大切にしまっているような小さな宝物感が素敵な作品でした。
かなり小さなインディフィルムで、日本公開や配信は明確ではないですが、もし興味があれば輸入盤での鑑賞をお勧めします。
今回はこのくらいになります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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