「怒りの荒野」(1967)
- 監督:トニーノ・ヴァレリ
- 脚本:エルネスト・ガスタルディ
- 音楽:リズ・オルトラーニ
- 撮影:エンツォ・セラフィン
- 編集:フランコ・フラティチェリ
- 出演:ジュリアーノ・ジェンマ、リー・ヴァン・クリーフ、ウォルター・リラ 他
セルジオ・レオーネ監督の助監督として活躍していたトニーノ・ヴァレリ監督が送り出すマカロニ・ウエスタン。
ガンマンにあこがれる青年を「荒野の1ドル銀貨」などのジュリアーノ・ジェンマ、悪名高いガンマン役には「夕陽のガンマン」などのリー・ヴァン・クリーフと、マカロニ・ウエスタンのスターが共演しています。
マカロニの中でも人気の作品で、タランティーノ監督のお気に入りでもあり、彼の「ジャンゴ 繋がれざる者」ではジャンゴのトレーニングシーンで音楽が使われていました。
マカロニにはまっていた数年まえにまとめてみた作品になり、最近見直す機会がありましたのでレビューを上げることにしました。
当時は完全にヴァン・クリーフ目当てでしたね。
娼婦の子どもということで、町の人間から蔑まれて生きてきた青年スコット。
唯一彼の味方でいてくれる恩人マーフもいるが、スコットはいつしかガンマンになり、銃の力でみんなを見返してやると誓っていた。
そんなあるとき、酒場でスコットを侮辱した男を、あるガンマンが撃ち殺した。正当防衛で罪を免れたタルビーという凄腕ガンマンにほれ込んだスコットは、彼の弟子になろうとガンマンとしての教訓を教えてもらおうとする。
タルビーの窮地を助けたことが決定的なきっかけになり、スコットはタルビーのパートナーになるのだが、次第にその暴力性を見せていくタルビーに、スコットは疑問を持ち始める。
マカロニ・ウエスタンの娯楽性の強さという意味では今作は軽快で楽しい部類になるかと思います。
ここは全体バランスをうまくとっているためかと。
「殺しが静かにやってくる」のような陰惨さや不気味な感じも、「荒野の用心棒」くらいのカタルシス満載のクールさも今作は持っていません。
むしろ、マカロニ・ウエスタンをジャンルとしては残しながらも、多くの範囲にて楽しんでもらえる試みにも思えます。
リー・ヴァン・クリーフはその容貌や悪役の味わいをここでも発揮していて非常にクールですが、対抗するジュリアーノ・ジェンマは甘いマスクもあり、泥臭いマカロニの世界とはやや異なる雰囲気を出しています。
あまり悲惨な、ドロドロしない軽さは、ジュリアーノ・ジェンマのおかげと思います。スコットに宿るあからさまな善意というのも、マカロニの世界においては非常に珍しいキャラクターです。
ここに陰と陽のバランスがあり、どちらかといえば前向きな終わり方になるラストも、多くのマカロニ・ウエスタンと異なります。
ガンマン10カ条なんてもっともらしい大人の遊びもあります。
それを一つ一つ学びながら、エゴを膨らませると同時にスコットの中での葛藤を大きくしていく。段階が明確でありながら、徐々に終着点に迷いを見せるスコットの成長は、これもまた今までのマカロニと違う。
これまでのマカロニのガンマンたちは、ガンマンとしての腕前は映画開始時に完成されていますからね。
こうしたヒヨッコが主人公となるのも、(ジェンマだからこその説得力もあり)斬新な点です。
またそういう意味ではラストの展開も、去っていくという点では共通しながらも、すごく意外な着地になっています。
先に述べました通り、マカロニ・ウエスタンのジャンルの中ではかなり観やすい作品であり、それでいてやはり悪のガンマンを演じるクリーフのいぶし銀なカッコよさ、ジェンマの軽快さが楽しめます。
股下のアングルショットとか痺れるカットも入れ込まれ、マカロニ・ウエスタンの空気が慣れない方も一度見てみてほしい作品です。
今回は短くあっさりとした紹介になりましたが、以上になります。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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