「我等の生涯の最良の年」(1946)

  • 監督:ウィリアム・ワイラー
  • 脚本:ロバート・E・シャーウッド
  • 原作:マッキンレー・カンター 「Glory for Me」
  • 製作:サミュエル・ゴールドウィン
  • 音楽:ヒューゴー・フリードホーファー
  • 撮影:グレッグ・トーランド
  • 編集:ダニエル・マンデル
  • 出演:フレドリック・マーチ、ダナ・アンドリュース、マーナ・ロイ、テレサ・ライト 他

ワイラー監督による、戦争帰還兵とその家族を描いた作品。

アカデミー賞では作品賞、監督、主演男優、助演男優など多くを獲得し、興行的にも批評的にも成功しました。

長くも厚いドラマに、問題へ直面する姿勢や熱意、演者たちと監督の力がこれでもかと感じられるものです。

第二次世界大戦が終了。戦争からは多くの帰還兵がやってくる。

輸送機には3人のアメリカ人が乗り合わせた。多くの勲章を受けたフレッド、年配のアル、そして負傷し義手になったホーマー。3人はこれから故郷へ帰れる喜びで打ち解けあう。

しかし彼らを待っていたのは、簡単には帰られなくなった故郷と家であった。

いまでなお多くの作品では避けられるような題材を、戦後すぐにスクリーンで描いたことはそれだけで価値があると思えます。体が帰っても心がもはや離れてしまう。

3人の復員兵それぞれに描かれるドラマは、戦争の終結が単に終わりではなく、そこには帰ってこれた喜びだけでは覆えない現実があることを伝えています。

子供の成長期に立ち会えなかったアルにとっては、切り離しの辛さを感じる場面。命がけで戦った彼にとって、息子の原爆や日本人に対する理解と配慮は、まるで戦いが無意味であったかのように聞こえますね。

それ以上に、殺戮者のような感覚さえ覚えてしまうのです。

国のためそれが良いと戦った人間が、帰還すればその国が変わっており、苦しい思いをするというのは、ベトナムでも繰り返されました。

フレッドはどの国でも多く見られた男性の失墜例で、帰国すると愛した女性がすでに去っていたり、より経済力ある男に乗り換えていたりというもの。

ホーマーは負傷者として、人の目は変わり、何かと疑われたり気を使わせてしまう。ホーマーは出兵前のホーマーではなく、何か半人前のように扱われます。

家族だけでなく、社会的にも浮いた存在になってしまう復員兵たち。

理由はぼやけ、存在意義は揺らぐ。そのうえ助けようとしない社会は、彼らを憐みの的として利用しようとまでします。

ウィルマへの愛と自分の情けなさで激しく葛藤しふさぎ込むホーマーは、ハロルド・ラッセルが事実両腕のない人であるからなのか、飛びぬけて切ないです。演技指導をせずそのままを引き出したワイラーに拍手です。

帰還兵への差別ともいうのは、ベトナムでも今のイラクでも繰り返されると思えますね。

フレッドは悪夢やフラッシュバック、戦友の死を引きづっており、まさしく名前こそ出てこないものの、PTSDに苦しんでいます。そしてそこに寄り添ってくれた人がいました。それが救いでしょう。

3人それぞれに、その変化を受け止めて愛してくれる人がいてくれた。

ここでそういう人がいない、身寄りのない復員兵を想像すれば、それがどれだけ過酷な生となるか胸が痛いですね。

戦争はある意味永遠に終わりません。死ぬまでそれを背負って生きていくことを、現実的に厳しく、そしてまた暖かく描く作品。

避けずにまっすぐ向かい合ってほんのりと希望をくれる、戦後の人々の心を癒した作品でしょう。

そんなわけで今回は時代的に勇気ある、そしていつの時も今のお話に感じられる映画をレビューでした。それでは、また。

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