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「ボーンズ アンド オール」”Bones and All”(2022)

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「ボーンズ アンド オール」(2022)

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作品概要

  • 監督:ルカ・グァダニーノ
  • 脚本:デヴィッド・カイガニック
  • 原作:カミール・デアンジェリス『Bones & All』
  • 製作:ルカ・グァダニーノ、デヴィッド・カイガニック、ピーター・スピアーズ、ティモシー・シャラメ
  • 音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
  • 撮影:アルセニ・ハチャトゥラン
  • 編集:マルコ・コスタ
  • 出演:テイラー・ラッセル、ティモシー・シャラメ、マーク・ライランス、マイケル・スタールバーグ、ジェシカ・ハーパー、クロエ・セヴェニー 他

「君の名前で僕を呼んで」「サスペリア」のルカ,グァダニーノ監督が、人を喰う衝動を抑えられない少女と彼女の孤独の旅路を描くホラーロマンス。

主演は「WAVES/ウェイブス」で好演を見せていたテイラー・ラッセル。

また彼女が道中出会う”同族”を「DUNE 砂の惑星」などのティモシー・シャラメが演じています。

その他「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランス、「シェイプ・オブ・ウォーター」のマイケル・スタールバーグ、そしてジェシカ・ハーパーらが出演しています。

原作はカミール・デアンジェリスが2015年に執筆した同名小説となっておりますが設定において大胆な変更も加わっているようです。

今作はヴェネツィア映画祭でのプレミア公開があり、そこで銀獅子賞を獲得。

グァダニーノ監督の新作ですから期待や注目は高い中で、北米での公開などからちょっと遅れての日本公開になりました。

公開週末には見れなかったので平日の夜の回で鑑賞。

そもそも遅いし一応R18指定になっていることもあってかあまり混んではいませんでした。

「ボーンズ アンド オール」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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80年代のアメリカ。マレンは父と一緒に二人で暮らしており、父はマレンの行動を厳格に管理している。

ある夜、マレンはこっそりと部屋を抜け出して友人の家でのお泊り会へ遊びに行った。

そこで惨劇が起きる。

マレンは友人の指を喰い千切ってしまうのだった。

家に戻ると父は急いで街を出るといい出発した。

次の日、父はマレンを残し出ていった。

残されたのは父の声が入ったカセットテープとマレンの出生証明書。

人を喰う衝動を抑えられない性質を持つこと、母が生きていること。

マレンは母が住んでいると思われるミネソタへ向けてたった一人旅に出た。

感想/レビュー

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青春とカニバリズムの掛け合わせ

原作としてはこっちのほうが先ですが、設定を聞くとどうしても思い浮かぶのはジュリア,デュクルノー監督の「RAW 少女のめざめ」でした。

話し込むと長くなりますが、ある個性を持っていてそれがその人を定義づけるような性質でありながら、世界からは禁忌と見られる若者というテーマは根底に繋がっているでしょう。

よりセクシュアルな色合いを強めて脚色

そんな背景を持ちつつ、グァダニーノ監督と脚色を行ったデヴィッド・ガイニックはよりセクシュアルなテーマを持ち込んでいると思います。

原作ではマレンは性的な誘惑から男性を呼び込み、罠にかけて捕食するという設定だそうです。

今作ではマレンの初めての食人シーンからも香りだしますが、同性愛や両性愛などのセクシュアル・マイノリティの要素がとても強く感じられました。

時代背景としても80年代であり、同性愛者たちが潜み隠れて生きていくしかない時代。

この”同族”の要素、匂いで分かるという性質などはかなり強く同性愛と結びついているように感じました。

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孤独な旅を美しく見せる撮影

このマレンとリーの二人の旅路に関して、技術的な面での素晴らしさとして撮影と音楽があります。

撮影についてはやはりその場の空気を吸い込むようなつくり込みとショットが印象的です。

町の道路に車内、森の中や平原。

体にあたる日の光や夜の冷たい空気、吹き抜けていく風までもを感じ取れるような美しい画面が本当に多く観ていて楽しかったです。

愛しくも恐ろしい音楽

今作のスコアに関して。

トレント・レズナー、アッティカス・ロスコンビが組んで作り出した音楽は美しいメロディをたたえながらも、その中に叫びやホラー的な要素が含まれています。

ふとしたところで不穏な音が混じっていたり、ここにはカニバリズムが欲望でありそれはつまり愛情にもなり得たりまた攻撃になりえる2面性を感じます。

加害と本能

この点に関してグァダニーノ監督はまんべんなく描いた気がします。

マレンは初めて食人を見せたシーンのあと、鏡に映る自分にすこしうっとりとしています。

これは欲望を満たしたことからなのか、自分自身のありのままを出せたからなのか。

そこに罪悪感はありません。

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一方でリーは罪悪感と向き合っています。

やるしかないんだというところによりサバイバルの要素を感じさせるのは、彼の過去があるからでしょう。

テイラー・ラッセルの幼さはそのまま純粋さへ、そしてティモシー・シャラメはフィジカルとしても絞り切った身体から飢え、脆さを醸し出します。

底知れぬ孤独感をもって

世界に認められない、それでもどこかに生きる場所があるのではないか。

途方もない孤独に対して、打ちのめされ続けてきたサリー。彼もちょっと切ない気がします。

しかし同族、マイノリティのコミュニティの中では同じ属性の人間にとってかなり有害な存在として登場します。

マレンがある種頼りにした母はその自分の性質ゆえに自傷とそして死へと向かいます。

自分か誰かを傷つける。それを知ってもやはりどうしても居場所を、愛することと愛されることを欲する。

やはり人は繋がりたいのです。

すごく切ない話であり、カニバリズムをメタファーとしてクィアな存在に目を向ける作品でした。

若干長いこととか、やはり「RAW」に比べると外部との接点とかに弱さを感じてはしまいます。

でも青春×カニバリズムとして、すごくたのしんだ作品でした。

今回の感想はここまで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ではまた。

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