「消えない罪」(2021)
作品概要
- 監督:ノラ・フィングシャイト
- 脚本:ピーター・クレイグ、ヒラリー・サイツ、コートネイ・マイルズ
- 原作:サリー・ウェインライト
- 製作:サンドラ・ブロック、ヴェロニカ・フェレ、グレアム・キング
- 製作総指揮:ナン・モラレス、ニコラ・シンドラー、コリン・ベインズ、サリー・ウェインライト
- 音楽:ハンス・ジマー
- 撮影:ギレルモ・ナヴァロ
- 編集:ジョー・ウォーカー、ステファン・ベヒャンガー
- 出演:サンドラ・ブロック、ヴィンセント・ドノフリオ、ジョン・バーンサル、ヴィオラ・デイヴィス、リチャード・トーマス、ウィル・プーレン 他
「オーシャンズ8」などのサンドラ・ブロックが、過去に殺人事件を起こし服役していた元囚人と彼女に待ち受ける社会からの迫害を描いたドラマ映画。
監督は「システム・クラッシャー 家に帰りたい」のノラ・フィングシャイト。
その他の出演は、「ジュラシック・ワールド」のヴィンセント・ドノフリオ、「マ・レイニーのブラックボトム」のヴィオラ・デイヴィス、そして「モンタナの目撃者」のジョン・バーンサルら。
今作はサリー・ウェインライトによるイギリスのTVドラマシリーズ「アンフォーギヴン 記憶の扉」を原作としているとのことです。
そちらは英国アカデミー賞でのノミネートなど結構評価の高いものだそうですね。観たことないので申し訳ないのですが。
今回はサンドラ・ブロックが製作にも参加しています。制作会社はNETFLIX。
作品についてはサンドラ・ブロックのノーメイクかつやつれたビジュアルで印象に残っていて、年末年始の休みにまとめて鑑賞するリストに入れておきました。
お休み期間に観たのですが、感想をまとめるのはちょっと空けてになりました。
~あらすじ~
ルース・スレイターは警官殺しの罪で服役し、20年の時を経て出所した。
新しい人生を始める準備を整え、保護観察官とともに地元で職探しを始めるものの、ルースの過去は簡単に彼女を離さなかった。
元服役囚というだけでも世間の風当たりは強く、大きく変わった社会についていくのも難しい。
ただ逆境でもうーすはある目的のために強く生きようともがく。それは彼女が逮捕されてから一度もあっていない妹の存在。
職場で少なくも友人もでき、妹の現在の里親たちにも接触をはじめ、生きる糧を取り戻そうとしていくルース。
しかし、ルースの出所と彼女の人生のやり直しを快く思わない人間もいた。
感想/レビュー
良い着眼点が複数あり、フォーカスはぼやけ気味
もともとのドラマシリーズがどのように展開していったのかは若菜らにのですが、少なくとも今作においてノラ監督は複数のプロットをうまくコントロールできず、主題というものが読み取りにくい状況に陥ったと思います。
あれもこれもと手を伸ばしており、決してジャンル違いにまで散漫にはなっていないある程度の統制は見せているのですが、結局一番の円の中心には何を置きたかったのかが見えにくく感じました。
ネタバレというか基本的な展開で、挙げられているのは以下のポイント。
- 元服役囚に対する社会の厳しさ
- 本当は何があったのかという真実の追求
- ルースが妹に再会できるかのドラマ
- 被害者遺族の心情、復讐
ただしこれらが並列して存在するだけで、相互に作用していない気がするのです。
社会のあまりに厳しい目というのは、上記の全体における障害になりえるのですが、そうした元服役囚が人生をやり直すための制度が機能不全を起こしているという話にするには、他があまりに個別、個人的なドラマなためトーンが合いません。
盛り上げるほどに実直さは薄れていったと思います。
そしてその社会的な研究要素を排除しきれないゆえに、徐々に燃えていくようなスリラーとしての強さは緩慢にならざるを得なかったようです。
この点、もとのドラマシリーズは3部構成だったようで、そのメディアとしての特性上無理があったと考えられるのですがどうでしょうか。
サンドラ・ブロックの演技の幅を見るだけ
サンドラ・ブロックって、2010年代は「ゼロ・グラビティ」とか印象強いのですが、実は10年間に7本ほどしか出てないんですね。
そんな彼女が製作にもかかわって主演したわけで、彼女の力の入り方は良かったと思います。
サンドラのファンならば彼女の演技の幅としての一面を楽しめると思います。
今作ではあの人当たりのいい感じやキュートさは完全に封印されています。とことんハードでドライ。
もちろん20年もの間刑務所を経験してきたルースを演じるのですから、常に警戒している動物的な感じはあります。
ただサバイバーとして生きた故の爆発力も見せていて、全体に色彩を奪いグレートーンに統一されたシアトルで、顔面の傷をそのままに生きる強さが演じられています。
ただその見どころの一つですら、彼女の演技力を知るにとどまります。
彼女が優れた俳優であることはすでに知ってますし、幅があるなあとは思いますが、だからと言ってこの作品自体に感情を強く突き動かされるほど、ルースに繋がることってできないんですよ。
社会派と劇画のジレンマ
被害者遺族のドラマを入れ込んだのも良いのかとは思いますが、設定が劇画過ぎるのではないでしょうか。
兄弟の描かれ方もプロット進行に便利すぎます。
暴力の連鎖としても微妙ですし、ルース彼女自身が遺族に対して向き合う真っすぐさがありません。
単純に恨みから新たな事件を展開しているにすぎないのですよ。
総じてどのプロットに踏み込むにも互いが邪魔をしており、最終的にはありがちな贖罪ものに。
サンドラ・ブロックの力が作品を押し上げようとしても、零れ落ちていくものが多すぎたようでした。
今回は短めなのですが、感想はこのくらいになります。
NETFLIXでみれますので、興味のある方はご鑑賞を。
ということで最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ではまた。
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