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「マルセル 靴をはいた小さな貝」”Marcel the Shell with Shoes On”(2021)

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「マルセル 靴をはいた小さな貝」(2021)

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作品概要

  • 監督:ディーン・フライシャー・キャンプ
  • 原案:ディーン・フライシャー・キャンプ、ジェニー・スレイト
  • 脚本:ディーン・フライシャー・キャンプ、ジェニー・スレイト、ニック・ペイリー
  • 撮影:ビアンカ・クライン
  • 美術:リズ・トゥーンケル
  • 編集:ディーン・フライシャー=キャンプ、ニック・ペイリー
  • 音楽:ディザスターピース
  • 出演:ジェニー・スレイト、ディーン・フライシャー・キャンプ、ローサ・サラザール、イザベラ・ロッセリーニ 他

映像作家のディーン・フライシャー・キャンプがYouTubeに公開していた短編シリーズが長編映画化した作品。

仲間とはぐれておばあちゃんと二人きりで暮らしている貝のマルセルが、若手アニメーターに出会い一緒にドキュメンタリーを撮影しながら、離れ離れになってしまった家族を探すというストーリー。

声の出演は「gifted ギフテッド」などのコメディエンヌ、ジェニー・スレイト。

また名優イザベラ・ロッセリーニが主人公のおばあちゃん役で声の出演をしています。

配給はいまやかなり有名なA24。作品の質も相まってアニメにとってのアカデミー賞であるアニー賞で数々のノミネート・受賞をし、またアカデミー賞でも長編アニメーション賞にノミネートを果たしました。

突飛な設定で惹かれていましたが、アカデミー賞ノミネートもありまして観たいなと感じ、公開週末に早速観てきました。

うーん、小さな箱でしっぽりだったのでそこまで混んでなかったです。これは夏休みに親子で観てほしいタイプなのでロングランして有名になってると良いのですが。

「マルセル 靴をはいた小さな貝」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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Airbnbにおばあちゃんと住んでいる貝殻のマルセル。

幼い彼は数年前のある日から、それまで一緒に暮らしていた家族とはぐれてしまっていた。

毎日を自給自足で暮らすマルセルは、新たに家主となってやってきたディーンに誘われ、ドキュメンタリーを撮影することになる。

この撮影記録、インタビューを動画投稿していると、独特なキャラクターが人気になって大きなバズが起きた。

マルセルとディーンは離れ離れになった家族を探すいいきっかけだと思い、いろいろな手掛かりについて発信をする。

しかし世間はマルセルの家のまでセルフィを撮ったりするだけで何の役にも立たなかった。

おばあちゃんは押しかけてきたファンの騒動で具合を悪くしてしまい、マルセルは落ち込む。

なににもやる気の起きなくなってしまったマルセルをみたおばあちゃんは、生きることを諭していく。

感想/レビュー

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背景にある夫婦の別れ

もともとのアニメーションシリーズは完全に未見ではありました。

そのうえで概要を調べてみると、実は製作者たちの関係性が今作の成り立ちやストーリー自体にも結構深くかかわっているのでした。

今回マルセルの声優を務めているジェニー・スレイトですが、監督であり映画の中でディーンを演じるディーン・フライシャー・キャンプとは結婚していました。

この作品の制作を始めて実際の完成までは数年かかっているとのことですが、結婚していた二人が途中で別れ離婚することになり、それでもプロジェクトは止めずに進行。

しっかりと完成までこぎつけたとのこと。

別れることになった点についてジェニー・スレイトは「時にすべて投げ出したくなるけれど、お互いに何は捨てて何は残していけるか常に話し合っていた。」と建設的でプロジェクトには大きく影響しなかったとインタビューで語っています。

参考:The Guardian:
Jenny Slate on making a film with her ex-husband:
‘I wouldn’t suggest it!’

こんな背景を聞くと、作中に出てくる、マルセルが仲間とはぐれることになったカップルのこととか、おばあちゃんの「両者合意の離婚なんてないわよ」が結構キレ味出てきておもしろいですね。

人生の深みをとても触れやすいアニメーションに

で、そんな割と真剣な大人の、というか人の人生の紆余曲折が背景ある今作。描かれているのもすごく実直で重いんですよ。

家族との別離、一人で生きていくこと、自分の人生や道を選ぶこと、そして大切な人との死別・・・

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普通に見ててあまりに人生が詰め込まれていて、普通に涙が出ました。

でもなによりも素晴らしいと思ったのは、そこに直接的描写や暗さをあまり出さずして、非常に親しみやすいアニメーションというメディアに織り込んで見せたことです。

これはとにかくアクセスがしやすい。幅広い世代が一緒に楽しめるものなのです。

だから難しいだわいに関して、それこそ小さな子どもに理解してもらう、触れさせるにも適している。

アニメが子どもとって触れやすいメディアだとすれば(デルトロ監督がなんていうか分かりませんが・・・)、語りづらいけど体験する前に教えておきたい人生の苦み、悲しみを、こんなに暖かな方法で伝えられる素晴らしいメディアなのでしょう。

ふとした世界を覗いて

今作で出てくるマルセル。そしておばあちゃん。

彼らは貝殻です。そこになんてことない一つの目をつけて、CGで口をつけて喋らせる。それぞれにすごく素朴な質感を感じます。

ものすごく特別な感じではない。それが良いのかと。

声の部分正直ジェニー・スレイトだと全く気づきませんでした。本当に幼い子どもがやってるのかと。

だとするとあまりにも演技がうますぎて天才オブ天才だと思ってましたが、なるほどそう思わせる程の演技という意味で、ジェニー・スレイトは天才オブ天才オブ天才だったのですね。

家の中の隅々。あまり目も向けない細やかな部分にマルセルの世界がある。

今作は私達を取り囲む何気ない部分に目を向けていく試みと思います。

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想像力の豊かさが詰まっている。

ピタゴラスイッチ的なミキサーの使い方に、テニスボールという移動ツール。

こぼしたジャムは壁を歩くための粘着剤。

ホコリの溜まったガラステーブルがスケートリンクになって、滑って遊ぶ姿が可愛らしい。

互いを支えあうコミュニティの大切さ

想像というのは推し量る部分でも。

おばあちゃんの下りが卑怯なレベルで素晴らしかった。

マルセルへの思いやりと、前に進むことを説く姿勢。

待ち受ける運命を悟らせず、マルセルを鼓舞する。

こもらずに外の世界を見る。勇気を出して人前に出る。

すごく大事なこと。

動画のバズり方が、そしてファンたちの行動が、一部サタイアのようなシニカルなユーモアになっているのも鋭い。

それが対比的に、マルセルのいう“コミュニティ”に繋がるわけです。

離れてしまうことはある、別離も認める。ただ一緒にいたいならいるべき。

喪失や悲しみを抱えること、生きていくこと。

真の意味で互いに支え合う事のできるコミュニティと素晴らしさ。

今いろいろなところですぐにコミュニティが形成されますが、果たしてそれは共助になりうるのか。ただ動画を見て騒ぐマルセルのファンたちのようなものではないか?

知らない環境にて支えあう移民のコミュニティ、社会的弱者やマイノリティのコミュニティ。集まることをに慣れているのに、意味のあるコミュニティ形成を忘れがちな私たちに、マルセルが大事なことを教えてくれています。

奇妙な設定の暖かで見逃せないアニメーション映画。

これはすごくオススメの作品でした。

こんなところで感想は終わりです。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございます。

ではまた。

コメント

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