スポンサーリンク

「トリとロキタ」”Tori et Lokita”(2022)

スポンサーリンク
tori-et-lokita-2022-film 映画レビュー
スポンサーリンク

「トリとロキタ」(2022)

tori-et-lokita-2022-film

作品概要

  • 監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
  • 脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
  • 製作:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ、ドゥニ・フロイド、デルフィーヌ・トムソン
  • 撮影:ブノワ・デルヴォー
  • 美術:イゴール・ガブリエル
  • 衣装:ドロテ・ギロー
  • 編集:マリー=エレーヌ・ドゾ
  • 出演:パブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ、アウバン・ウカイ 他

「サンドラの週末」「その手に触れるまで」のダルデンヌ兄弟の新作。

移民としてベルギー働こうとする姉弟が、就労ビザをとるために奮闘しながらも危険な麻薬取引に巻き込まれていく様を描きます。

主演はパブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ。二人とも今作が初めての演技体験だったそうです。

これまでにも子どもを主軸としながら、彼らを囲む社会と搾取的なシステムを描いてきた監督たちですが、今回も子どもを主役にしています。

作品は監督たちのホームといってもいいカンヌでの上映もありパルムドールを競いました。

やはりダルデンヌ兄弟新作とあっては映画ファンならスルーするわけもなく、公開週末には行けなかったのものの次の週末で観てきました。

「トリとロキタ」公式サイトはこちら

〜あらすじ〜

tori-et-lokita-2022-film

移民としてベルギーの養護施設で暮らしているロキタは就労ビザを得ようと奔走していた。

同じく故郷から逃れてベルギーに来た弟のトリは早くにビザをもらい働こうとしていた。

ロキタのビザ申請における審査では、トリが本当にロキタの弟なのかが問われている。

二人は生活費と移住の仲介人からの取り立てに耐えるため、地元のレストランシェフの麻薬密売の手伝いをする。

ロキタは偽造ビザを発行してもらうため、麻薬の栽培施設で住み込みで働く決心をするが、トリと離れ離れになることは彼女にとって大きな負担だった。

感想/レビュー

tori-et-lokita-2022-film

いつものダルデンヌ兄弟テイストは健在

ダルデンヌ兄弟の監督作品は相変わらずのスタイル。

音楽を排除し使われるのは環境音か、シーンの中で実際にその場で流れる音楽のみ。

非常に長いワンカットで構成され、ありのままの現実を覗き込むような写実性。

演者もまだまだ無名の役者を揃えており、そこにもまた現実の世界のような作り込みを感じます。

スタイルが一貫していてなおかつ、決してそのキャリアの停滞がないというか。

いつも一定の品質を仕上げてしまう類まれな監督たちだと、改めて感じるところです。

ジャンルを変えつつも根底の真実味が結び目となる

さて、全体の構成はおよそ三部に別れていると感じます。

1幕目にはトリとロキタそれぞれの立場やビザを取りたいという説明であり、二幕目には麻薬取引の中で奮闘する姿が、そして最終幕はまるでクライムスリラーのような怖さを持つパートになっています。

そのジャンルの切り替えを持ってしても、センターにはトリとロキタ二人の強い絆と信じられる実在感がある。

だからこそギアチェンジをしたとしてもこの作品は1つの大きなドラマとしてのまとまりを失わないのです。

tori-et-lokita-2022-film

長回しにもカメラの動きにも意味がある

OPではその政治的メッセージ性を炸裂させつつ、この作品が持つどこかおとぎ話のような、ファンタジックな要素を覗かせています。

ロキタが質問を受けている中で、トリは不吉な子だから迫害されたと言いますね。

しかも、その間全く質問者つまりはこのシステム側の人間の顔が映りません。

隔絶をもしっかりとこの短いショットで見せつけています。

そしてその後でレストランでトリとロキタが歌うシーン。

イタリア語の歌の中にも何か含まれている気がしますけれど、何よりもここで彼らの境遇をきれいに見せます。

表は綺麗に、移民を受け入れての就労に見える中で、流れるように裏である厨房へ。

するとそこでは彼らに麻薬密売の運び屋をさせている。

見事すぎる残酷な現実の掲示です。

tori-et-lokita-2022-film

三幕目はその写実性がうまく機能しているおかげで、フィクショナルなスリラーよりももっと緊張感があり恐ろしいものになっていました。

恐ろしいと感じるのはトリとロキタを案じているからで、やはり主軸の二人に絆を感じるからです。

序盤の施設での追いかけっことか、いつでも連絡を取り合う姿。

シンプルな輝き。

実際には家族ではない、血族ではないものが家族のように固く結ばれている。

画面に登場することのないビザの審査員や、麻薬取引以外にも搾取をするレストランシェフ、栽培所の男。

外部からの人間を敵視するシステムの不全と不正が露呈される中心に、トリとロキタという絶対に失われない友情を置く。

二人の個人的なドラマから社会への痛烈な批判を届けていくダルデンヌ兄弟の新作は、決して監督作品の中でトップになるというものではないです。

それでもやはりその力強さと変わらぬスタイルの魅力は十分に楽しめる作品でした。

ロシアのウクライナ侵攻などからいま祖国を逃れている人は本当に多くいる、その中で受け入れていく私たちの社会が問われています。

今回の感想はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました