「ニュースの真相」(2015)

  • 監督:ジェームズ・バンダービルト
  • 脚本:ジェームズ・バンダービルト
  • 原作:メアリー・メイプス
  • 製作:ブラッドリー・J・フィッシャー、ウィリアム・シェラック、ジェームズ・バンダービルト、ブレット・ラトナー、ダグ・マンコフ、アンドリュー・スポールディング
  • 製作総指揮:ミケル・ボンドセン、ジェームズ・パッカー、ニール・タバツニック、スティーブン・シルバー
  • 音楽:ブライアン・タイラー
  • 撮影:マンディ・ウォーカー
  • 編集:リチャード・フランシス=ブルース
  • 衣装:アマンダ・ニール
  • 美術:フィオナ・クロンビー
  • 出演:ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォード、エリザベス・モス、トファー・グレイス、デニス・クエイド、ブルース・グリーンウッド、ステイシー・キーチ 他

脚本家として「ゾディアック」(2007)や「アメイジング・スパイダーマン」(2012)を手掛けてきたジェームズ・バンダービルトの初監督作品です。

主演にはケイト・ブランシェット、助演にロバート・レッドフォードその他豪華な俳優陣が出演。

題材となるのは2004年のアメリカ大統領選の頃、CBSがスクープしたブッシュ軍歴詐称疑惑と、そこから広がった大論争。当時のニュースの事は・・覚えてないです。

まあまだガキでしたからね私。

実はこの映画もなかなか反響が起きくて、保守派や有名雑誌、新聞などからもいろいろと批判があったりしています。

まあ大概は映画の出来ではなくて、政治的な理由でのたたきに思えましたが。

公開は8月の初めごろでしたが、下旬でも結構人がいました。若者は観ませんでしたね。

2004年。アメリカでは大統領選を控えており、再選に挑む共和党ジョージ・W・ブッシュと、民主党ジョン・ケリーが激しく争っていた。

アメリカ国内最大のネットワークを誇るCBSでは、番組プロデューサーのメアリーが、ブッシュの軍歴詐称を取り上げるスクープを取り上げており、その記事内容は著名なアンカーマンであるダン・ラザーの務める「60ミニッツ」で報道された。

大スクープを掴み成功の余韻に浸る間もなく、メアリーはじめCBSの報道グループは窮地に立たされることになる。

さて、政治がらみの報道とその大反響を描く本作ですが、率直に言えば「スポットライト 世紀のスクープ」のカウンターに感じました。

あちらは厳しい環境下での調査型ジャーナリズムの勝利を描いていると思いますが、今作はその調査型ジャーナリズムが批評型ジャーナリズムによって叩き潰されていく様が描かれていると感じました。

映画は前半にジャーナリズムの成功劇を描き、後半は一転して大批判の対処にチームが潰されていく様へとシフトしていきますね。

そこで今作の構成、一番最初にメアリーが何やら追い詰められて弁護士に会いに来ているシーンではじめています。それによって前半部の成功劇には常に危機感をはらむようになるわけです。

ケイト・ブランシェットの自信に溢れた表情が、いずれにしろオープニングの決壊寸前というような状態に向かってしまうと分かるので、各裏付けのステップや細やかなところに不安が残されます。この構成がスリリングで個人的には好きでした。

後半部へと入るほどに、各人物関係の描写が強くなります。

バンダービルト監督は今作においてメイプルとラザーらチームの側からこの作品を撮っていますね。周りの批判者というのは画面に登場させていません。

これによって観客からすると具体的にどの人物に責任があるかを置きづらい状況にしています。攻める相手、悪役が明示されていないんですね。

そしてこの映画内ではとにかく観客が寄り添ってきたメアリーが批判の標的になるわけで、心苦しくなります。

ケイト・ブランシェットはここでも見事な演技を見せていて、一生懸命なジャーナリストに夫に支えられながら戦う妻、そして子供を愛する母。

そこにさらに加わってくるのが、虐待する父に耐え、本当の頼れる父としてダン・ラザーを見る娘です。そのどれも力強くそれでいて脆く見せてくれています。

レッドフォードの重鎮感も素敵です。実際にラザー氏の雰囲気と似ているのかまではわからないんですが、安心できる存在でした。

この二人の主役にしっかりと向き合い、監督はこの作品でのメッセージを乗せていると思います。

分かりやすいと言えばそうですが、カメラがぐっと寄っていきケイト・ブランシェットだけを映す中で語られること。

元々はブッシュの軍歴詐称をめぐる記事だったはずが、最終的にはその記事のプロデューサーの政治傾向や家庭事情を巡る追及になっている。

調査つまり「疑問を投げかけること」から、なにかの対象をあれこれと評価する話になっている。そしてそれ自体がジャーナリズムとなっている。

自分の意見を言うだけで、何かに疑問を投げかけ調べるということをしていないんです。同じソースにあたったり、当時の記録を調べたり、元々の議論の的である軍歴についてまったく調べない。

これは今現在のジャーナリズムでも、非常に皮肉なことですが、この批評型ばかりしか目に入らないのが現状。コメンテーターとか専門家とかやたら集めて喋るだけ。見覚えありますね。

原題は”Truth”「真実」ということですが、この意味も深い物なのかも。今作では現実と同じく結局ブッシュ軍歴詐称の真相は明かされません。真実はわからないままなのです。

ケイト・ブランシェットとR・Rの父娘関係を通しながら、この作品でバンダービルト監督はジャーナリズムの在り方の実態を示しているように思えます。

明らかにメアリーらチーム側の視点から描くとともに、すり替わった論点に怒りを覚え、本当には何があったのか知りたくなる。

真実を知りたくなれば、今作は十分に機能していると私は思いました。

内容が内容だけあって、難しいとか、英雄談にしたとかいろいろ感想がありますね。こういう作品こそご自身で観て考えるのが一番いいでしょう。そんなところで終わりです。それでは、また。

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